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「Shazam」にも負けない? GEのアプリは深海に流れる楽曲を分析

これは北海の海底深くで石油を掘る、とある掘削設備。バルブや変圧器、ポンプなど、様々なパーツたちがオーケストラとなって、海底のシンフォニーをアドリブ演奏しています。それをナマで聴いているのは、GEが開発した「電子的な耳」をもつ重さ500ポンド(約230キログラム)の物体。その設計は企業秘密です。

この耳がとらえるサウンドは、1本のケーブルを通じて海上に浮かぶ制御室へと伝えられます。サウンドが伝わると、サーバーやエンジニアがその音を解析。まるで音楽評論家のように、奇妙なハーモニーや振動、亀裂音といったトラブルのサインを聴き分けます。「掘削機が発する独特の音は、人間の指紋みたいなものなんですよ」と話すのは計測機器などを扱うGE Magerment & Controlのファビアン・ドーソン。「このシステムでは、海洋生物が発する音などは除去し、求める音だけを聴くことができます。何かが漏れる音やポンプの音は一つとして同じものがありません」

それはいわば、深海用のShazam(その場に流れる音楽の波長などを分析し、曲名を即座に特定する人気アプリ)。

このチームは既存の海底設備のデータを集め、さまざまな音を記録した巨大データライブラリを構築しています。音のデータが増えるほど、システムの予測機能が向上します。このシステムは他のインダストリアル・インターネット技術と同じように、手に負えなくなる前に問題を検知し、予想外のダウンタイムを低減してくれます。このようにインダストリアル・インターネットの活用によって石油・ガス業界の生産性がわずか1%向上するだけで、世界全体ではおよそ900億ドル(約9兆円)のコスト削減になるとGEは試算しています。

ドーソン曰く、チームが特に注意するのは「変わった音」。「我々が注目するのは、電気信号と音響信号を発する機器間の相関関係。なかには解明できない信号もあるんです」と言います。GEのデータ・サイエンティストやエンジニア達は、こうした音を突き止めライブラリに加えるアルゴリズムを作っています。

ドーソンによると、この音解析アプリは従来の「釣り合い錘(おもり)」型の“石油・ガス漏れ検知”テクノロジー、すなわちパイプを通る石油やガスの流量差から漏れを検知する手法と比べ、最大1万倍もの精度を発揮します。

この深海の耳、正式名称を「Subsea Condition Monitoring System」といいますが形状はまるで大きな鳥かご(上の写真)。ゆえに、ケージという愛称で知られています。このシステムには、音波振動に反応してそれを電気に変える特殊なクリスタルが使われており(エンジニアたちはこれを「圧電効果」と呼んでいます)、1つの耳で半径1,600フィート(約490メートル)以内の音を捉えます。

もっとも、機能はそれだけではありません。機器に装着された多数の炭素棒が電気ケーブルやポンプ、モーター等の電気設備によって生じる電磁場の変化も検知します。そうしたデータもGEのデータ・サイエンティストによるアルゴリズムでライブラリに加えられます。その他、接地障害や絶縁不良も検知。ドーソンは「音響信号からコンプレッサーのrpm(毎分回転数)を割り出し、電気信号をもとに稼働状況を見極めます。これらを総合すれば、設備の効率性が把握できるんですよ」と言います。

ケージは船の横からクレーンで下ろされ、配置されます。そして遠隔操作無人探査機(ROV)を使って海中設備または海底に固定します。「海底に×の目印をつけるみたいなもの。簡単な手順なんですよ」(ドーソン談)

このシステムはすでにスタトイル、エニ、シェルが北海で操業する約130カ所の海底掘削現場、そしてアフリカ沖でも稼働中。GEは2013年にこれを米国の顧客にも導入しました。