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エジソンの電球の決め手「炭化素材」が世界最強のジェットエンジンにも

トーマス・エジソンのひらめきから誕生し“世の中を変えた“発明品。電球だけではないんです。

1879年、エジソンが電球の商用化に必死に取り組んでいたときのこと。ニュージャージー州メンロパークの研究室で、エジソンが竹の薄片を灼熱にさらしてみたところ、竹内部のセルロースがたちまち炭化し、その竹は超強度の炭素繊維へと姿を変えました。「これはいける!」と思ったエジソンは弟子を世界中に派遣し、電球に最も適した竹の探求調査を行いました。そうして選ばれたのが、京都・石清水八幡宮の竹でした。

電気を通すうえ高熱にも耐えるこの竹は、それから長いこと日本から輸出され、エジソンの初期の電球にフィラメントとして使用されました。しかしやがてそれはタングステンに代わることとなります。

それから80年後、NASAのエンジニアたちが、改めて、炭素繊維は宇宙船にうってつけの素材であることを改めて発見しました。強度があるうえ軽量の炭素繊維は、ソ連との宇宙開発競争のただ中にあった米国に優位をもたらしました。

NASAの設計担当者たちは、あらかじめ樹脂を浸して含ませた炭素繊維マットの層で造られた複合部品の製作を開始しました。スチールやアルミ合金より強靭で軽いため、たちまち炭素繊維は飛行機の機体やロケットやミサイルの胴体、またその他の構造部品に使われていた金属に取って代わるようになりました。

1980年代、GEはNASAのE3プログラムの支援を受け、実験的にGE36オープンローターエンジンを開発。
炭素繊維複合材ブレードと、ターボファンとターボプロップエンジンを組み合わせた
ハイブリッドエンジンを使用したものです。従来のファンシステムを用いたほぼ同サイズの
ジェットエンジンと比較して、30%以上もの燃料節減に成功しました。

初期の炭素複合材は、1ポンド(約454グラム)あたり400ドルと法外に高価なものでしたが、生産技術の進歩により価格が下がるとたちまち普及し、現在では、炭素繊維を用いた車体や機体、ゴルフクラブやテニスのラケットまでも市場に出回っています。

ニューヨーク近代美術館のアーキテクチャー&デザインコレクションにも
展示されている炭素繊維複合材のGE90ブレード

GEは数十年かけて炭素繊維複合材の開発に取り組んできました。ジェットエンジン前部のファンブレードに、金属ではなく炭素複合材を使用できるようになれば、エンジンの軽量化と効率化につながるからです。「巨大な規模でコストも巨額、そのうえ高リスクのプロジェクトでした」GEグローバル・リサーチで複合材の研究室を率いるシュリダー・ナスは振り返ります。「チタニウムを、実質的にプラスチック素材に置き換えるというような計画なのですから。もう、ゼロからのスタートです。炭素繊維のブレードが雨、雹、雪、砂、またエンジン内部の強い圧力にどう反応するのかも分かりませんでした」

ボーイングの787(ドリームライナー)の機体の一部にも炭素繊維複合材が使用されている

しかし、困難を乗り越えてプロジェクトは大成功。GEが使用する炭素繊維複合材は、既に第四世代に入っています。「炭素繊維複合材は様々に使われるようになりましたが、一貫して大量生産を続けるのは非常に困難です。しかし、当社は大量生産の秘訣をつかんでおり、それがGEの強みです」とGEアビエーションの広報担当、リック・ケネディは言います。

炭素繊維複合材によってファンを何百ポンド分も軽くすることができるため、GEは世界最大かつ最強のジェットエンジン「GE90」を製造することができています。GEの最新の大型ジェットエンジンで最高の燃費効率を誇る「GEnx」のファンブレードとファンケースにも、炭素繊維複合材が用いられています。

元祖は炭素フィラメント。電球の内部が黒くなってしまうため、
エジソンはタングステン線に変更した。

GEは現在、風力タービンブレード、石油ガス業界向けのライザーパイプ、またレントゲンやCT撮影の際に使われる放射線を通し画質を向上させることを可能にする診療台にも炭素繊維を用いる実験に取り組んでいます。

「今後15年の間に、炭素繊維はこれまで使われたことのない分野でもあっという間に普及していくでしょう」とシュリダーは言います。「誰もが重量を減らし強度を上げる方法を知りたがっているのです。その答えが、炭素繊維複合材なのですから。」

世界最強のジェットエンジン、GE90-115Bの炭素繊維ファンブレード。

GEが開発を進めている小型機用の最新鋭の航空機エンジン「LEAP」には、日本カーボンが開発した炭化ケイ素連続繊維「ニカロン(R)」を用います。需要が爆発的に膨らむであろうこの新素材の安定供給を実現するために、GEは日本カーボン、サフラン(フランスの航空機エンジンメーカー)と3社で合弁会社を設立し、共同でハイテク無機繊維事業を行っています。