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日本はイノベーション力を成長エンジンにできるか。

アベノミクスの上昇気流に乗って一定の成長を見せた日本。「第三の矢」がいかに的を射るかに世界が注目しており、企業も意図して変化を引き起こすべき時がきています。

BRICSなど急成長を果たす国々に圧倒され、自信を失いつつあった日本。いつのまにか、世界における自国のポジションや強みと弱みに対してさえ、興味が低下していてしまっていた、なんてことはないだろうか?・・・ということで、ここでは幾つかのデータとともに日本の現状を客観視してみます。

World Economic Forum(世界経済フォーラム)が昨年発表した「The Global Competitiveness Report 2013–2014」によれば、日本の国際競争力は148カ国中第9位。2006-2007年には5位にランクされていたものの、その後順位を落としてしまいました。次の調査発表でこの折れ線をどのように上げて見せられるか。傍観者ではなく「自分ごと」として、責任を感じながら注視すべきところです。

戦略的に成長を果たそうというとき、「強み」と「弱み」の的確な把握は欠かせないので、次は日本の強みと弱みが一目瞭然の下のチャートをご覧あれ。日・米・英のレーダー形状は、ほとんど同じです。Factor(成長の基盤要素)Efficiency(効率性)Innovation(イノベーション)の3分類で評価されたこの調査結果をみると、日本の深刻課題であったマクロ経済環境はアベノミクス効果によって幾分かは改善されているものの、やはり成長の基礎にもなる「Factor」が弱いという実情があります。逆に強みとして、日本は「Innovation」が突出して秀でており、技術革新やビジネスの洗練度の合計点は148か国のなかでもトップにあります。

戦略的な成長のためには、深刻度が高い「弱み」あるいは克服しやすい「弱み」に優先順位をつけて取り組むと同時に、「強み」をフルに活かし成長のけん引役にすることも大事。政府の成長戦略でも「イノベーション」は注力事項のひとつとして挙げられています。

では、イノベーションのけん引役である企業の経営層の意識はどうでしょうか。
GEが昨年発表した「GEグローバル・イノベーション・バロメーター:2013年 世界の経営層の意識調査」では、イノベーションが企業戦略上重要だと考えている経営層は、日本の場合、諸外国に比べかなり少ないことが判りました。

そのためか、実際にイノベーション投資している企業も少なく、「わが社はイノベーションにこれまで以上に取り組んでいる」とした日本の回答率は、25か国中ダントツの最下位という残念な結果に。

この結果について、一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授は「日本の経営者たちは、イノベーションの意味をかなり狭義にとらえている可能性がある」と指摘します。「iPhoneのようなものでなければイノベーションと呼べないわけではない。例えば、日本のコンビニは在庫データやPOSデータを活用したリアルタイムな購買分析による利益率向上を実現した。”データの勝利”による、世界に誇るべきイノベーションだ」(米倉教授談)。『イノベーション=技術革新』とされがちな日本。一方で世界は、革新的な取り組みによって企業と社会に対して新しい価値を提供するものすべてをイノベーションと捉えています。

前出の調査「GEイノベーション・バロメーター」の解説のなかで、米倉教授は「イノベーションは社会経済の成長のためにどうしても必要な行為。企業は、予算配分、環境、文化などを整備して戦略的かつシステマティックに投資する必要がある」と訴えています。

GEのCEOジェフ・イメルトもイノベーションを実現するための条件として、「組織をつくりかえる」、「どの領域でイノベーションが起き得るかを知る」、「財務的影響を明確にする」、「スケール・メリットを活用する」の4つをあげ、これらは企業のトップが取り組むべき責務であると言います。

イノベーションは偶然生まれるものではなく、企業経営力によって生み出すもの。企業が意志をもってイノベーションに取り組むことで、先進国は引き続き世界をリードし、成熟市場でありながらもさらに新たな成長を得ていけるはずです。日本がイノベーションを成長エンジンにできるかどうか――それは国の問題であると同時に、個々の企業の問題でもあります。