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途方もない力:フォークリフト並みの力をより繊細なタッチで発揮できるパワードスーツ

映画やテレビの世界では一般的に、自動化は人間が職を失うことと同義だと考えられています。しかし、実際に自動化が可能にするのはその逆、すなわち、すでに存在する仕事の実効性を高めることになるのです。その好例が、サーコス・ロボティックス(Sarcos Robotics)社で現在開発中の外骨格型パワードスーツ(全身用エクソスケルトン)であり、同社では2020年の早い段階での商品化を予定しています。

『ガーディアンXO』と名付けられたこのマシンは、人体を包み込み、着用者にフォークリフトのような力で物体を持ち上げ、人間の手のような器用さで物を扱うことができます。ソルトレークシティーに本社を置き、GEベンチャーズなどから投資を受けているサーコス社は、このパワードスーツを工場や鉱山、建設現場での作業など、幅広い商業用途向けとして開発しています。

全身型の電動式パワードスーツの開発は数十年前から進められてきましたが、初期の試作品は電源につなぐタイプが一般的でした。重労働を行うのに必要な電力を供給可能なバッテリーがなかったことがこれまで商業化の妨げとなっていました。しかし近年になり、バッテリーの大幅な改善が実現しました。サーコス社のエンジニアチームは、パワードスーツに組み込まれるアクチュエーター、センサー、コンピューターを丹念に設計し、消費電力の少ないマシンを設計することに成功しました。サーコス社のチーフマーケティングオフィサー、クリスティ・マーティンデールによると、ガーディアンXOの現在の消費電力は、初期の試作品の10%未満まで減らせています。「10年前に作った最初の試作品は油圧駆動式で、6,000ワットの電力が必要でした。現在このパワードスーツの消費電力は、全体で400ワット以下です」

こうした開発活動の結果、コンセントにつながなくても8時間のシフトで作業ができるパワードスーツの設計が可能になり、商用製品としての展開が現実のものとなったのです。同社のCEO ベン・ウォルフは、IEEE Spectrum誌に、次のように語っています。「研究室で非常に高価なロボットを作ることとは別種の作業です。当社はついに、パワードスーツとしての能力と経済性とを融合し、製品として実現できる段階に至ったのです」

上の画像:1960年代にGEが開発したハーディマン(Hardiman は、1,500ポンド(約680kg)の重量物を持ち上げることができた。画像提供:スケネクタディ科学博物館。 トップ画像:サーコス社のスタイリッシュなパワードスーツ「ガーディアンXO」は、電源につながない状態で8時間シフトでの作業が可能だ。画像提供:サーコス社。

サーコス社が提供するのは、35キロを持ち上げられる「XOS」と、90キロを持ち上げられる「XO」の2つのモデルです。いずれのモデルも、多様な業界での活用が期待されます。サーコス社への出資者の1つである油田サービス企業シュルンベルジェ社にとって、このパワードスーツを油田掘削リグの建設や修理の際の作業者の補助として活用することを考えています。また、重量物の運搬・揚重用のクレーンその他の機械を製造するキャタピラー社は、自社の流通チャネルでの販売を検討しています。さらに複数の自動車メーカーが、自社工場でのパワードスーツの活用に関心を示しています。

屋外現場で従業員が働く事業を多数展開するGEも、この製品の潜在顧客です。GEベンチャーズのマネージングディレクターであるラルフ・テイラー=スミスは、「この種のパワードスーツがあれば、工場の構造を左右する天井クレーンやフォークリフトをなくすことができます」と述べています。「そうしたクレーンなどが、工場の柔軟性を制限しているのです。XOの良さは、重量物を持ち上げる能力と同時に、人間並みの柔軟性が得られる点にあります。ですから、より人間的なワークフローの工場作りが可能になるのです」

これまで自動化が難しかった多くの建設用途においても、柔軟性は大きな意味を持ちます。マーティンデールによると、あるドライウォール(乾式壁材)メーカーは、パワードスーツを用いた建物でのドライウォールシートの取り付けに関心を示していました。このシートは重さが最大で200ポンド(約90kg)にもなるため、人間が扱うのは難しく、しかも取り付け作業はロボットだけで完了するには複雑過ぎるのです。そしてこの仕事は肉体的に負担が大きいこともあり、労働市場は逼迫しています。「繰り返しの作業なので、体が疲労し始めるまでに働ける1日あたりの時間も、働ける年数も限られたものとなります」とマーティンデールは述べています。

サーコス社は来年にかけて、人間のオペレーターが身体を痛めたり疲れたりせずに安全に作業できるかどうかを確かめるための実証試験を行う予定です。また同社のエンジニアは、内部センサーの微調整を予定しており、このセンサーがオペレーターの腕の動きを予想することで、腕の筋肉への負担を減らせるようになります。さらにサーコス社では、潜在顧客も含めた諮問グループと協力し、市場が求める能力を確実に備えるパワードスーツの実現にも取り組みます。一例として、空港で荷物を運ぶロボットと油田の掘削リグのパイプを扱ったり、ドライウォールを固定したりするロボットでは異なる「エンドエフェクタ」(基本的にロボットの手となる部分)が必要だからです。

 

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