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3Dプリンティングの時代:マーク・トウェインの発言を覆す、GEの未来的なオハイオ工場

マーク・トウェインは、世界の終わりが来るときはシンシナティにいたいと主張したそうです。『シンシナティは常に時代から20年遅れているから』というのがその理由でした。 諧謔味のある面白い言葉ですが、シンシナティでハルマゲドンを乗り切ろうとするトウェインの戦略は、現在では裏目に出そうです。その証拠の一つに、ウェスト・チェスター・タウンシップ北部の郊外を二つに分ける州間高速道路75号線に沿って位置する、GEのアディティブ・テクノロジー・センターがあります。センターの外観は、この工業地域に数多く建ち並ぶグレーの箱型低層ビルと変わりません。しかし大きなガラス張りのドアから一歩足を踏み入れれば、そこに待っているのは世界最大級かつ最先端と呼んでよいほどの3Dプリンティング設備と開発センターです。GEアビエーションのアディティブ・マニュファクチャリング専任ゼネラル・マネージャーのエリック・ガトリンは次のように述べています。「毎朝この建物にやってきて業務に取り組むことになんら難しい点はありません。ここでの私たちの仕事には、これまでになかった、初めての試みが多く含まれます。そのことが一種の高揚感やエネルギーを生み出しており、ある種の文化が求められる状況となっているのだと思います」

アディティブ・マニュファクチャリング、すなわち3Dプリンティングは、エンジニアや設計者が複雑な金属部品をコンピューターファイルから直接プリント(造形)することを可能にします。センターのプリンターを用いて生産される部品には、世界最大のジェットエンジンであるGE9X用の複雑な形状をした燃料ノズルや、GEアビエーションの新しいターボプロップエンジンGE Catalyst用のリブ付きギアボックスカバー、管状の流路が蜂の巣状に配置された燃料ヒーター、その他数多くの部品があります。こうした部品は、レーザーや電子ビームを用いて微細な金属粉末の極薄層を溶融して重ねることにより、少しずつ作られます。GE Catalystの場合、この技術によって855個の部品をわずか12個へと集約し、軽量化、サプライチェーンやメンテナンスの簡素化、さらにエンジン性能の改善を実現しました。

2015年の段階では、以前コンピューター企業デル社の配送センターであったこのセンター(略称ATC)の中は空っぽでした。当時GEはアメリカのアディティブ・マニュファクチャリングのパイオニア企業で、シンシナティに拠点を置くモリス・テクノロジーズ社をすでに買収しており、新型ジェットエンジンLEAPの燃料ノズル用の、複雑な形をした先端部の開発のために3Dプリンティングを活用していました。続いて2016年には、ドイツの3Dプリンターメーカーであるコンセプト・レーザー社、そしてプリンターだけでなくプリント用の特殊金属粉末のメーカーでもあるアーカム社の株式の過半数をそれぞれ取得しました。この2社は現在、GEアディティブの中核的な役割を果たしています。

ATCは現時点で、世界最大の金属プリンター6台を含む約90台の3Dプリンターを保有し、300名の設計者、機械技術者、エンジニアを雇用しています。ATCはGEアビエーションに所属しますが、3Dプリンターならびにプリンティング用材料の製造を担当するGEの新事業、GEアディティブからの従業員が約半数を占めます。

最上部画像:ATCは、世界最大の金属プリンター、X Line 2000R 6台を含む、約90台の3Dプリンターを保有している。上図:ATCのシニア・プラント・マネージャー兼スタッフ・マネージャーのスティーブ・グリム(写真左)は、3Dプリンティングは「魔法ではない」とし、次のように述べている。「より複雑なことを可能にする技術ではありますが、その背後で多くの下準備や作業が必要です。そしてこのセンターのチームの日々の仕事は、まさにそうした作業に他なりません」 GEのエリック・ガトリンは、「毎朝この建物にやってきて業務に取り組むことにはなんら難しい点はありません。ここでの私たちの仕事には、これまでになかった、初めての試みが多く含まれます」と述べている。 画像提供:いずれもトマス・ケルナー(GE Reports)

当初よりGEは、アメフト競技場3つ分のこの広大なスペースを多様な職種が集う一種の「るつぼ」、いわば製造担当エンジニアやサプライチェーンエンジニアが、自分たちの設計のプリンティングを担当する技術者やプリンター本体の製造責任者、さらにプリンティング用粉末の開発者と容易に話をすることができるような場とすることを目指していました。「材料科学、機械科学、そして製品知識が出会うとき、これまで業界に存在しなかったものが誕生します」とガトリンは述べています。

GEは、まるで熟練した仲人のように、こうした職種間の交流ができるだけ自然に、かつ簡単に行えるようにATCを設計したのです。例えば施設の中心には、従業員用の広い八角形のオフィスエリアを配置しており、従業員はオフィスを囲むように配置された機械やワークステーションまで、まるで巣から出入りするミツバチのように素早く行き来できます。「これは新しい産業なのです」とガトリンは述べています。「アディティブ・マニュファクチャリング分野で20年の経験を持ち、終身雇用を保証されているエンジニアなどいません。ここで働く人々は、多様な経歴の持ち主であり、それゆえに思考を再構成し、新たなエンジニアリング手法を学ぶ必要がありました。いわば脚本も一切存在しない状態であり、私たちは学びを円滑にする環境を構築したいと考えたのです」

ATCのシニア・プラント・マネージャー兼スタッフ・マネージャーのスティーブ・グリムは、相互交流や異分野間でのアイディアの融合を最大化できるよう、エンジニアが開発センターのど真ん中に座る配置にしたかったと述べています。「作業の過程で彼らは互いに協力する必要があります。単に部品を作るだけでなく、工程を作り出す仕事ですから。いわば、今後その部品の製造にあたって繰り返される手法を定義するわけです」

グリムによると、最終的に完成した生産工程は、GEアビエーションがカーメリ(イタリア)やアラバマ州のオーバーンで運営する3Dプリンティング工場への移転が容易に可能なのだそうです。グリムは、「90%完了したプロジェクトを工場に引き継いでもらい、残りの作業を任せることを目指しています」と述べています。

3Dプリンティングによって、エンジニアは他の手法では製造が困難または不可能であった部品も作れるようになった。写真は、3Dプリンターで造形した熱交換器の例。画像提供:トマス・ケルナー(GE Reports)

最近の例として、多くのボーイング787ドリームライナー航空機の動力源として採用されている、GEnxジェットエンジン用に3Dプリンティングで造形したブラケットがあります。このプロジェクトは、グリムとガトリンにとっては特に自慢の結果を出したものと言えます。なぜなら、新しい部品を最初から開発するのではなく、アディティブ・マニュファクチャリング技術を用いた既存部品の再設計を伴う初の仕事だったからです。「このブラケットは、アディティブ技術の力の象徴です」とガトリンは述べています。「いくつもの部品を組み合わせてシステムにすることができなければ、3Dプリンティングは無意味だと考える人もいます。多くの場合、たしかに3Dプリンティングの最大の利点を活かせるのはそうした活用法ですが、一方、逆にシンプルさが重要な意味を持つ場合もあります。このブラケットもそうしたケースの一つです」

GEnxエンジンは、整備時に開けたエンジンカバーを支える機能を果たすこのブラケットを、1台につき2個備えます。従来の方式では、サプライヤーは材料となるアルミニウムの塊を削り出すしかありませんでした。このやり方でもうまく作れますが、多くの無駄が生じます。ガトリンによると、「こうした部品に対し多額の請求を受けていた」状況でした。

そこで昨年の10月、ガトリンとグリムは、ATCのチームにブラケットの再設計、コンセプト・レーザー社の機械を使ったプリンティング、そして1年以内の生産への移行の可能性を探るように要請しました。「実は当初、私たちもこの件を拒んでいたのです。あまりにも単純な話に思えたためです。しかしさらに検討するにつれ、どれほど価値あることなのかがわかってきたのです」とガトリンは述べています。

それから10ヵ月後、オーバーンの3Dプリンティング工場への生産工程の引き渡しが行われました。グリムによると、プリンターで製造したブラケットは以前よりも低価格であり、現在注文を受けている2,200基のGEnxエンジンに対しても値下げが適用できます。無駄を大幅に減らすこの工程は、航空業界においては重要要素であるブラケットの軽量化にも貢献しています。「従来のようなサブトラクティブ・マニュファクチャリング(材料除去型の製造)では不可能であった部分についても、すでに材料を減らせる箇所を特定しています」とグリムは述べており、併せて、ブラケットの軽量化が航空会社に燃料節約のメリットももたらすことを指摘しています。

The Additive Technology Center

The is no place in the world like GE Aviation’s Additive Technology Center in Cincinnati, Ohio. The 150,000-square facility, which employs 300 engineers and technicians, opened just a few years ago but it already feels like a factory from the future. Filled with 3D printers, including the largest additive manufacturing machines in the world, it’s in equal parts a design shop, a rapid prototyping lab, and a real 3D printing factory making parts for GE engines like the GE9X, the world’s largest jet engine, and the GE Catalyst. Tomas Kellner, editor of GE Reports, talked to GE Aviation’s Eric Gatlin about the place.

GEさんの投稿 2018年3月12日月曜日

既存部品での生産工程のトラブルシューティングに加え、ATCの従業員は新規部品の開発や新型機械の検査、プリンティング用の新たな粉末のテストに関しても設計者を手助けしています。「設計者が試験台でテストし、設計の際に反復できるような試作品を、数多く作っています。3Dプリンターによって、この作業も大幅にスピードアップしています」とグリムは言います。

ATCには、エンジニアがコンセプト・レーザー社やアーカム社のプリンターの新機能やアプリケーションをテストできる研究開発スペースも設けられています。一例として、ATCは世界最大のコンセプト・レーザー社製Xラインのユニット群を保有しています。Xラインは産業用金属プリンターとしては現在世界最大ですが、GEアディティブはすでにそれを超えるための取り組みとしてプロジェクトA.T.L.A.S.を実行しており、3軸いずれの方向でも1メートル規模の部品のプリントが可能なマシンの開発を進めています。

自動車業界からGEに入社したガトリンは、3Dプリンターの進化を見ていると、ムーアの法則を思い出すと語ります。「いま起きているのは、きわめて急激な進化です。ATCのエンジニアは、プリンターのメーカーが元々望んでいた性能を超えてしまうまでに機械の限界に挑んでいたと思います。おそらく、それこそが買収の目的だったのではないでしょうか」

より優れたプリンターを生み出すためのコンセプト・レーザー社との協働は、相互的なものでもあります。「以前は、機械を改良したい場合は、常に上流の機械ベンダーにアプローチし、提携を図っていました」とグリムは述べています。「現在はやり方を変え、より価値ある機械を作り出し、その結果としてより高価値な製品を生み出すことに力を入れています」

ATCチームが3Dプリンティングに使用する粉末についても、同じロジックが適用されます。ATCのエンジニアは現在、アーカムの子会社で世界有数の金属プリンター用粉末のサプライヤーであるAP&Cの新材料開発を支援しています。ガトリンは、「私たちは同社の次世代の機械に目を向けており、この活動によって、将来に向けての大きな柔軟性を得られます。材料に関しても、同じことが起こるのです」と述べています。

ガトリンとグリムの仕事は、今後さらに忙しくなると予想されます。2人によると、ATCチームが特定したプリント可能な部品はすでに100を越えており、その3分の1は新たな部品で、残り3分の2には、ブラケットなどの既存部品の再設計が含まれます。「ある意味アディティブ・マニュファクチャリングは、他の製造技術と大きな違いはありません」とグリムは述べています。「この技術は、魔法ではありません。より複雑なことを可能にする技術ではありますが、その背後で多くの下準備や作業が必要なのです。このセンターでのチームの日々の仕事は、まさにそうした作業に他なりません」

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