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ジェットエンジンだけじゃない!3Dプリンター製パーツを搭載する次世代ビジネス機

日本ではなじみの薄いプライベート・ジェットですが、その歴史が大きく塗り替えられようとしています。最先端のテクノロジーを活用し、快適な居住空間を確保しながら、プライベート・ジェットを初めて導入する層のための価格帯を実現したプロペラエンジン搭載のビジネス機が登場しました。

「セスナ・デナリ」と呼ばれるこのビジネス機は定員8名、キャビンの広さはクラス最大級で、ロサンゼルス~シカゴ間、あるいはニューヨーク~マイアミ間を航行するのに十分なエンジンパワーと効率を備えています。この新型機を手掛けたテキストロン・アビエーション社とともに、GEアビエーションはエンジン開発を担当。今年の夏には、このビジネス機の原寸大キャビンとエンジンをウィスコンシン州オシュコシュで開催されたエアショー、EAA(米試作機協会)エア・ベンチャーでも出展しご紹介しました。

最上部と上の画像:テキストロン・アビエーション社が今夏、
米ウィスコンシン州オシュコシュのエアショーでお披露目した「セスナ・デナリ」
(画像提供:テキストロン・アビエーション社)

「セスナ・デナリ」の設計は、機体、エンジンとも一から行われました。例えばエンジンには、従来のように数百個におよぶ部品を組み立てるのでなく、3Dプリンターを使って、チタン製やスチール製の複雑なパーツを「印刷」します。また、ターボプロップ式のエンジンでありながらも、GEが持つジェットエンジンのテクノロジーを活用して、コンプレッサーやタービン内の圧力と温度を上昇させ、より性能を高めています。さらに、パイロットはジェット機を操縦するように、1つのレバーでエンジンとプロペラをコントロールすることが可能です。

エレガントな「セスナ・デナリ」の内装。定員は8名
(画像提供:テキストロン・アビエーション社)

この新型エンジンの開発がスタートしたのは2008年、チェコの小さなターボプロップ・エンジンメーカー、ウォルター・エアクラフト・エンジンズ社をGE傘下に収めた時にさかのぼります。その当時までの数十年、アメリカでは新たなプロペラエンジンの開発は行われていませんでした。GEもビジネスジェットや民間ジェット、軍用機、ヘリコプターなどのエンジンをメインに製造しており、プロペラエンジンの市場はプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社がリードしていました。

そこから7年間にわたり、プラハと米国のエンジニアたちは新型エンジンの設計に取り組み、ついには出力数が1,650軸馬力に達するエンジンを開発。2015年の秋には世界最大のビジネスプロペラ機メーカーであるテキストロン・アビエーション社が、この先進ターボプロップエンジン(ATP)を開発中の最新機「セスナ・デナリ」に採用すると発表したのでした。

3Dプリンター製部品が複数使用されるGEの先進ターボプロップエンジン
このエンジンは、最大20%の燃料消費削減を実現しつつ
同クラスのエンジンに比べて10%の出力アップを達成可能
(画像:GEアビエーション)

新型エンジンの開発にあたっては、ウォルター・エアクラフト・エンジンズ社とGEはターボプロップエンジンを共同開発し、30種の異なる機体で2,000万時間近くの飛行時間を費やしてきました。その課程で、GEは10億時間以上の飛行実績があり、ターボプロップエンジンではこれまで利用されていなかったジェットエンジンのテクノロジーを組み合わせました。GEはこうしたノウハウの融合を「GEストア」と呼んでいます。

例えば、今回採用された可変静翼の技術はもともと、GEの伝説的な航空エンジニア、ゲルハルト・ニューマンが超音速ジェットエンジン向けに開発したもので、現在ではガスタービンの効率向上にも活用されているものです。このほかにも、新型エンジンには3Dプリンター製部品(ジェットエンジン「LEAP」で初採用)に加え、空冷タービンブレード、推進統合制御といったテクノロジーが採用される予定。推進統合制御はエンジンとプロペラをひとつのシステムで管理するので、パイロットの作業負荷を軽減できます。

ウォルター・エアクラフト・エンジンズ社の買収を指揮し、新型ターボプロップエンジンの開発を主導してきたGEアビエーションのブラッド・モティアーは、こうした最新テクノロジーが最大20%の燃料消費削減と、同クラスのエンジンに比べて10%の出力アップを実現するだけでなく、オーバーホールまでの期間を30%以上も延ばせる可能性があると指摘。GE会長兼CEOのジェフ・イメルトは、この新しいターボプロップエンジンは今後25年以内に約400億ドルの利益をもたらすだろうと話しています。

テキストロン・アビエーション社のエンジニアリング担当上級副社長マイケル・サッカー氏によれば、「セスナ・デナリ」の初飛行は2018年の予定。通常、新型機のテストにはそれから1年程度かかるものですが、すでに「予約注文は開始している」そうです。ちなみに価格は480万ドル(約5億円)とのこと。近い将来、新たなテクノロジーによってまたひとつ、空の旅の選択肢が広がりそうです。

航空機産業の歴史が幕を開けた100年前から
チェコで航空機エンジンを手掛けるウォルター・エアクラフト・モーターズ社
(画像:GEアビエーション)