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NASA職員が語る、イノベーションのアイデア

インダストリアル・インターネットを巡る課題のうち最も難しいのは、宇宙データに関するもの。
しかし同時に宇宙は、その困難な課題のブレイクスルーを生み出す可能性も秘めています 。

医療用画像からジェットエンジンまで、あらゆる機器が生成するデータの爆発的な増加を受けて、ビッグデータの強力な分析ツールへのニーズは高まり続けています。インダストリアル・インターネットを巡る課題のうち最も困難なのは、宇宙データに関するもの。しかし同時に、宇宙はデータ活用やM2M(マシンツーマシン)通信技術のブレイクスルーを生み出す可能性も秘めています。

宇宙探査機から地球へ情報や画像を送り、それを返すというプロセスはそれほどに過酷な試練なのだ、とNASAジェット推進研究所のフェローのアダム・ステルツナー氏は明かしてくれました。先日GEがサンフランシスコで開催したイベント「GE Minds+Machines」にも登壇した彼は、米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「キュリオシティ」計画で着陸ミッションの主任技術者を務める人物。人々の心を掴んだあの「キュリオシティ」の火星着陸の写真は、1億4,000マイルという距離を数日にわたり旅して地球にたどり着いたと言います。宇宙探査は、M2M通信に特殊な制約が生じる、非常に困難なチャレンジであると同時に、そこにはデータ共有や分析の新たな方法、さらには新技術を開発する大きな機会が存在すると説明しました。

NASAジェット推進研究所のアダム・ステルツナー氏

アダム・ステルツナー氏
NASAジェット推進研究所 フェロー
火星探査計画「マーズ2020」の主任技術者

以下:アダム・ステルツナー氏(談)

宇宙探査の世界におけるデータ通信は、その物理的距離や転送時間のために、M2M通信でも独特の制約下で行うことになります。通信の信頼性が低くなったり、中断されたり、何日もの転送ラグが生じたりする場合を想定して、システムは通信できなくても機能するよう設計されているんですよ。一方で、「コンスタレーション」と呼ばれる、宇宙探査機の大群が通信を利用して一斉に行う科学測定にはM2M通信が欠かせません。こうしたミッションでは、専用に開発された通信技術を用いて、特殊なM2M通信で測定しています。

宇宙空間から地球へ刻々と送られてくるデータ量は膨大で、処理能力の限界をいかに高めるかが鍵になります。惑星探査機「キュリオシティ」の例で言えば、データは3カ所の特殊無線アンテナ基地――いわゆるディープスペース・ネットワークを使って受信しています。それでも転送能力は限られており、すべてのデータを受け取るのに何日もかかることがあります。そのため「キュリオシティ」をはじめとする探査機ミッションでは、サムネイルを活用し、処理労力を費やす価値がありそうな画像だけを転送するようにしています。

今後、大規模な火星探査を計画するにあたっては、デジタル標高データやアルベドマップなど、圧縮した情報に変換して、転送データをコンパクトにする方法がますます重要になっていきます。

宇宙で生まれるブレークスルー、3Dプリンターで人間を印刷?!

地球科学のデータは今、圧倒的なスピードで蓄積されています。これらのデータを統合すれば、地球をより深く理解することができるでしょう。たとえば天気や気候、水のシーケストレーション(隔離)、帯水層の涵養(かんよう:水が浸み込むこと)等に関する疑問を解消するには、幅広く、多様な種類のデータ統合が必要になります。個人的には、多様なデータセット、例えば地上の分散計測データと衛星データなどを融合する可能性に期待を寄せています。

いま、新規市場参入にせよ、はるか遠い惑星を目指すにせよ、モノ作りのための新技術の活用が重要ですね。幸い今は、アディティブ・マニュファクチュアリング(3Dプリンティング)によって、これまでの工法では不可能だったエンジニアリング機器も作り出せるようになってきていることは、素晴らしいことです。

たとえば、ちょっと大胆ですが、3Dプリンティング技術で人間をプリントするというコンセプト。
銀河系のほとんどの領域は、人が宇宙空間を通って旅行する――少なくとも現時点で私たちが考えるような形での旅を想像するには距離が遠すぎますよね。そこで、遺伝学者のジョージ・チャーチ氏とそのスタッフたちが思いついたのが、より抽象的な旅の形で人類を宇宙の局所領域から外に出すというアイデア。人間の情報を0と1のコードにして、あるいは他のシンプルな生命体の遺伝子にエンコードして、光速あるいはそれに近い速度で転送するんです。どちらの方法でも、目的地ではアディティブ・マニュファクチャリングのような技術、もしくは遺伝子工学の進化が可能にする、これから解明されるプロセスによって、人間を再度組み立てることが必要になります。

もちろん、現実離れした構想ですし、現在の技術では生物要素のアディティブ・マニュファクチャリングは難しい課題ですよね。でも、DNAはそれを見事にやってのけるほどのパワーがあります。将来、3Dプリンターで人間の魂までプリントできるようになるだろうか・・・?大胆な想像をする力も、イノベーションには必要ですよね。

※トップのGIF画像:NASA提供