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未来の航空を支えるのは“データ”に

いま世界の産業を変えつつあるIoT技術。この大きな変化は、今この瞬間、3万5千フィートの上空でも起きています。

それは、今年の国際航空ショーでも明らかでした。世界の航空各社は、フライトを重ねるごとに蓄積されるデータを分析し、そこから得るインサイトを活用して定時運航と収益向上を実現しよう、と自社のフライトをインダストリアル・インターネットへ接続し始めていました。

この変化の核になっているのは、GEが提供するインダストリアル・インターネット用のOSである「Predix」。今回は、GEアビエーションでデジタル関連事業をリードするジム・デイリーに、航空業界におけるデジタル革命とその意味について話を聞きました。

2016年のファンボロー国際航空ショーでGEアビエーションが開設した「コラボレーション・センター」
ソフトウェアがいかにして飛行機の効率運行を実現するかを詳しく紹介した
(写真:GE Reports)

最上部の写真:GEアビエーション バイスプレジデント 兼 チーフ・デジタル・オフィサー
「20、30年前と同じやり方では飛行機も航空産業も立ちゆきませんよ」
(写真:アダム・セナトリ)


――航空産業は活況で、これまでになく多くの人が飛行機を利用しているのに、なぜジェット機をインターネットにつなぐ必要があるのでしょう?

ジム・デイリー(以下、JD):20、30年前と同じやり方では飛行機も航空産業も立ちゆきません。飛躍を遂げるためには、フライトデータや天候など航空にまつわる膨大なデータを活用することが一番です。データを集め、使うことで、産業全体の効率を上げていく、これだけのことです。ソフトウェア解析技術を使うことで以前は得られなかったようなインサイトが得られるんです。

――どのようにしてインサイトを得るのでしょう?

JD:データを読み解いて、フライトの遅延や欠航の原因となる異常を問題になる前に特定します。まずそれが一つ。また、データを活用して最も効率的な運行を実現したり、目的地までの最速かつ最も燃料消費の少ないルートを選択できるよう、パイロットをサポートしたりすることもできます。

――具体例を挙げてもらえますか?

JD:ジェットエンジンについてみてみましょう。これまでジェットエンジンは、他の同機種のエンジンが時間の経過と共にどのようなパフォーマンスを示してきたかという実績の統計から平均値を出すなどして、推定に基づいて最適化されてきました。しかし今では個々のエンジンに取り付ける大量のセンサーからデータが得られ、エンジン1台ごとのエンジンのデジタル・モデルを作ることができます。仮想空間上に双子がいるようなものなので、GEではこれを「デジタル・ツイン」と呼んでいます。これを使えば、エンジンが今どのようなコンディションにあるか、個々の実際の特徴をリアルタイムに把握できます。これは革命的なことです。

デジタルコラボレーションセンターの外に展示されたGEnxジェットエンジン
GEは、データとソフトウェアを活用することで、エンジンの働きを効率化している
(写真:アダム・セナトリ、GE Reports)

――パーソナライズ化された処方薬みたいなものを出せると?

JD:そういうことです。対象となるエンジンの稼働状態と特徴を知ることができれば、何が起こるか予測することができます。問題を予見でき、先回りできるようになり、手遅れになる前に予防的な対策をとることができます。以前はできないことでした。

――データの中には、驚かされる内容や、これまでには分からなかった疑問の答えがあったりします?

JC:ええ、ありますね。送られてくる信号の中には、トラブルを解決して故障モードを解除されたものも入っていました。「デジタル・ツイン」を使ってこうした小さなトラブルのパターンを知ることで、別の飛行機のケースでも、実際に物理的なインパクトをきたす10日も前に予兆として発見し、手を打つことができる。正直なところ、これは期待以上の成果でした。

――これこそ求めていたものだったと?

JD:その通りです。問題を早期に把握できていなければ、修理はずっと広範囲に及ぶでしょう。このソフトウェアは、航空会社のみならずGEにとっても、事態をシンプルなものにし、負担を軽減してくれるものです。繰り返しになりますが、航空業界における最終的な目標は、飛行機のダウンタイムを最小限にして運行し続け、A地点からB地点まで時間通りに飛ばすことです。飛行機は、飛ばなければ航空会社にお金は入ってきませんからね。

――分析のためには、飛行機からデータをとる必要があるのでしょうか?

JD:フライト中にデータを収集する能力には限界があります。基本的にとても費用がかかるためです。私たちは、限られたアクセス時間のなかでフライト中のデータをより多く収集できるよう、圧縮方法とアルゴリズムを研究しています。またフライト後には、記録された全データが確実に収集できるよう航空会社に協力してもらっています。手動でもできる作業ですが、飛行機の着陸後にワイヤレスでも全データを集められるよう、いま航空機メーカーと調整しているところです。

――飛行機のフライト中に、データをクラウド上に上げることなく、分析することもできるんですか?

JD:できますよ。私たちはそれを「Predixエッジ・コンピューティング」と呼んでいます。実際には、飛行機上で行う作業と、飛行機の外で処理する方が効率よく効果的な作業のバランスをとろうとしています。飛行機上で動かすソフトウェアには、FAA(アメリカ連邦航空局)の膨大な精査が入ります。サイバーセキュリティの脅威から守るためのプロテクションも固める必要がありますからね。想定外の事態にも備えなくてはなりません。つまり、「Predixエッジ・コンピューティング」は、運行中のメンテナンス・システムという点で、これまでよりも大幅に進歩した道具と能力もたらしてくれたということろでしょうか。

――パーソナライズされた処方薬の例で言えば、FAAは飛行機にとってのアメリカ食品医薬品局、規制当局ということですね。

JD:その通り。飛行中にコンピュータを再設定するなんてことはありえません。そんなことがあってはならないんです。飛行機のためのソフトウェアは、機上で使われるという意味でも、重要なシステムを管理するという意味でも、非常に高い基準をもっていなくてはならず、同時に潜在的なサイバー攻撃に対して防御可能でなくてはならないんです。

――地上でデータをダウンロードしたあと、何を行うんですか?

JD:データはPredixクラウドに送られます。GEデジタルと密接に連携して、他の顧客がそのデータに接することのないよう、確実なインフラを作り上げてきました。ご想像の通り、きわめてデリケードな問題がたくさんある作業です。私たちがデータ解析を行うとはいえ、大前提として、データは航空会社のものですからね。

――今後5年で、航空業界はどうなっていくのでしょうか?

JD:今のデジタル化の流れが一過性のものではないことが分かるはずです。私たちは大いなる成果をもたらすことができると実証してきました。この事業を進めていけば、ソフトウェアは飛躍的に成長を続けます。5年後には、飛行機の機体のなかを歩いてデータを集める必要はなくなるでしょう。データは自動でダウンロードされ、ワイヤレスで「Predix」へと送信。これまで以上にリアルタイムのコンピューティングが可能となり、フライト中に飛行機の最適化が図れるようになるでしょう。現時点ではまだ多くの手作業が残っていますが、5年もすれば、すべての操作は自動化されると想定しますね。

――「Predix」ができることを航空各社にどう説明しますか?

JD:実際にソフトウェアに触っていただけるよう、世界中に顧客向けのコラボレーション・センターを開設しています。現在はドバイとパリの二カ所ですが、近々、上海、アメリカのオースチン、東南アジアにも開設予定です。顧客企業の皆さんはそこでリアルタイムでデータを扱い、可視化することができます。こうした環境があることで、当社がご提供できる能力をお客様に示すことができると思います。私たちにとってデジタルシステムを提供する最初の機会と言えるでしょうね。

風力発電でもデジタル・ツインを使ったデータ解析技術が大活躍
仮想空間上のデジタルプラントの活用で発電量アップに大きな成果を出している
(画像:GEリニューアブル・エナジー)