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バッテリー内蔵:ハイブリッド発電所でカリフォルニアの空気をきれいに

ハリウッドの映画賞シーズンに入り、映画製作会社各社がオスカー受賞を目指してしのぎを削っている頃、米エンターテイメント企業 ワーナーブラザーズを嫉妬させるほどの数の賞を獲得したロサンゼルスの企業があります。サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE社)という、1,500万戸の住民に電力を供給する電力会社です。この電力会社は、イノベーションに対する賞2つ、環境規制当局からの大気汚染防止に対する賞1つ、さらにはパワー・エンジニアリング誌の最優秀総合プロジェクト(Best Overall Project)賞を含む、6つの賞を受賞しました。これらはすべて、世界初のハイブリッド発電所の稼働を昨年春にロサンゼルスで開始したことによりもたらされたものです。

専門用語では、この技術は「ハイブリッド電力ガスタービン(ハイブリッドEGT)」と呼ばれます。ハイブリッドEGTは、先日パリで開催された国際大電力システム会議(CIGRE)で活発に議論されたテーマの1つであり、再生可能エネルギー産業の黎明期からの大きな課題であった天候に左右されるという問題を、これによってSCE社が解決することにつながりました。曇りや風のない午後は、数時間ほとんど発電できないことがあります。これは再生可能エネルギーを熱心に支持する人々ですら受け入れられないことです。

そのため、電力会社は10年ほど前から、悪天候のときに備えて風力発電所や太陽光発電所のそばに小型の天然ガスタービンを設置し始めました。このような「ピーク電源用」ガスタービン発電所は太陽光発電や風力発電の普及に貢献しましたが、それでもタービンが立ち上がるまでに10分かかります。サッカーの試合を観ている人や締め切りに追われて原稿を執筆する人が電気なしで過ごすには長すぎる時間です。電力会社にとって安定した電力供給への信頼に応えるのは非常に重要であり、たとえ短時間でも予期せぬ停電を避けるため、自社のピーク電源用発電所を稼働させたままにすることがあり、これによって需要の低い時間帯であっても化石燃料を燃やし続けることになります。SCE社や同業者は環境問題に対してこのような部分的な解決しか見いだせず、状況は膠着していました。

それが、SCE社がバッテリーを組み入れ始めた2015年ごろから変わり始めました。SCE社は、GEパワーのグリッドソリューションとパワーサービス事業部と協業し、リチウムイオン電池で構成される10MWのGEバッテリーシステム(電力網へ最大30分間電力を供給可能)を、約5分で50MWの出力に達するGEのLM6000ピーク電源用ガスタービンと組み合わせたのです(このタービンはまさにジェットエンジンを発電用に改良したものです)。 これにより、風が止んだ時や曇りになった時に、瞬時にバッテリーが引き継ぎ、ピーク電源用発電が稼働するまでの時間が確保できます。風がまた吹けば、バッテリーの役目は終了し、次に風がない日や曇りの日に備えて充電を開始します。

これは、ハイブリッド車と同様のシステムです。ハイブリッド車ではガソリンエンジンからバッテリーが充電され、この2つの動力が滑らかに切り替わり、走行中どちらの動力で走っているか、ドライバーには全くわかりません。



上図:これはハイブリッド車と同様のシステム。ハイブリッド車ではガソリンエンジン(中央の青色)からバッテリー(後方)が充電され、この2つの動力が滑らかに切り替わり、走行中どちらの動力で走っているか、ドライバーには全くわからない。画像提供:GEパワー。最上部画像:SCE社はカリフォルニアで1,500万戸の住民に電力を供給している。画像提供:Getty Images

GEの技術者は、ハイブリッドEGTが風力からバッテリーに、バッテリーから天然ガスに、よりスムーズに移行するための高度な電力管理ソフトウェアも導入しました。このソフトウェアは、電力網の需要と供給を常に監視します。「非稼働時には電圧や周波数を監視し、異常が発生した際にはまるでタービンがネットワークに接続しているかのように対応します。そしてエネルギーが必要な際には、すぐにバッテリーの放電を開始し、ガスタービンを起動して必要な電力を供給します」とGEのパワーサービス事業部バッテリーハイブリッド電力ガスタービン担当シニア・プロダクト・マネージャーのジョー・ハインズマンは話します。緊急の需要が解消されれば、速やかにガスタービンを停止し、その間バッテリーシステムは給電中で稼働したままになります。その結果、ハイブリッドシステムに接続されたピーク電源用発電所の稼働は以前の半分となり、排ガスと摩耗が低減します。

この効率的なシステムは、カリフォルニアの環境保全に貢献しています。各発電所の運用に使用する水は200万ガロン(約750万リットル)減少し、ピーク電源用発電所のライフサイクルにおいて発生する温室ガスも60パーセント削減されるとSCE社は見積もっています。さらに、SCE社にも十分な利益がもたらされます。水と天然ガスの使用を減らすことで運用コストが低減されるだけでなく、ハイブリッドEGTが発電する電力にも大きな需要があります。10分以内に利用できる「運転予備力」は1メガワット時(MWh)当たり現在5~7ドルの価値があるのです。一方、もっと時間のかかる「非運転予備力」はMWh当たりわずか10セントで取引されています。新しく導入したこのバッテリーのおかげで、SCE社は簡単に、かつ低コストで、電力網に対して運転予備力を提供できます。

LM6000ガスタービンはGEのCF6ジェットエンジン技術を使用。画像提供:GEアビエーション向け、ロブ・バットラー

SCE社のグリッド・テクノロジー&モダニゼーション担当ディレクターであるヴィブー・カウシック氏は、「再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵の完璧な組み合わせによって、効率的に再生可能エネルギーを利用し、電力網上の需要に供給を合わせることができます」と話しています。これは2030年までに電力の半分を再生可能エネルギーで供給するというカリフォルニアの目標の達成に寄与するでしょう。現在、カリフォルニアの電力総使用量の28パーセントが再生可能エネルギーでまかなわれており、2020年には優に30パーセントに達すると見込まれます。

業界の専門家がSCE社を高く評価し、称賛するのも当然です。しかし、ロサンゼルスの多くの映画賞を受賞したスターとは違い、ハイブリッドEGTは姿を見せることがありません。電力というものは、そこにあると感じさせないことこそが最もよい状態なのです。

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