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サプライチェーンを変革する新技術「ブロックチェーン」とは?

フィンテックにご関心がおありの方なら、「ブロックチェーン・テクノロジー」という言葉に聞き覚えがあるかもしれません。ブロックチェーンとは、データを一カ所にまとめて集中管理するのではなく、複数箇所に置いて同期させながら管理していく分散型の記録管理技術のこと。これによって、透明性、不変性、数学的な検証可能性に長じた記録同期が可能となることから、今後、金融機関をはじめ各方面での応用が期待されています。

金融業界を例にとれば、ブロックチェーンから派生した暗号アプリケーションやプロトコルを金融市場の効率化に活かす目的で組成された「R3コンソーシアム」が昨年から活動を進めており、JPモルガンやUBSをはじめ三菱UFJフィナンシャル・グループなど世界トップクラスのメガバンク30行以上が参加しています。

活用が見込まれるのは、金融業界ばかりではありません。
ブロックチェーンの活用先のひとつとして期待されるのが、サプライチェーン。グローバル化が進んだ今、ビジネスに関わる人々は必ずしも互いが知り合いというわけではなく、信頼が築かれているとも限りません。巨額が動くサプライチェーンでひとたび問題が発生すれば、和解のための明確な手段が存在しないために、国を跨いだ複雑な係争へと発展してしまいがちです。

ブロックチェーンが生み出す新しいサプライチェーンの形

世界最大のブロックチェーン計画を進めるイーサリアム(Ethereum)のリリース・コーディネーター、ヴィネイ・グプタ氏は、次のように話しています。「生産者、輸送業者、通関業者など、サプライチェーンに関係する人たちが使っている会計台帳は、それぞれが完全に連携しているとは言いがたい実態があります。そのため、結局は信頼関係に頼るしかないんです。ブロックチェーン技術を輸送業者のシステムに活用できれば、大量のペーパーワークをブロックチェーンに移すこともでき、作業効率も大幅向上されるはずですよ」。

また、ブロックチェーンを使えば事前に設定した条件に従った自動取引が実行される「スマート契約」が可能になったり、インダストリアル・インターネットを組み合わせてリアルタイムなデータの流れを作り出せば、産業にさらに破壊的なインパクトをもたらすことも可能になると見込まれます。IBMグローバル・ビジネス・サービスのシニア・マネージング・コンサルタント、アルジェ・ヴァン・オイジェン氏は言います。「私は、ブロックチェーンがサプライチェーンを管理していくだろうと考えています。実際の契約内容と連動したブロックチェーン上の取引に基づいて、スマート契約がサプライチェーンの次のアクションを決定していくようになるでしょう」

リアルタイム・データとスマート契約が組み合わさることで、サプライチェーンに対する保険のかけ方も変わるかもしれません。サプライチェーンの世界では、いつ抱え込むかわからない“最大の在庫リスク”を念頭に保険をかけるため、どうしても過剰になる傾向が。しかし、ブロックチェーンを活用すれば、変動する在庫量をリアルタイムにトラッキングし、最大量ではなく、実際の在庫量に基づいた保険料の算出が可能になるはずです。

ブロックチェーンは人間を正しい道に導いてくれる?!

ブロックチェーンには、プロセス全体のトラッキングがしやすいだけでなく、改ざんが難しいメリットも。ブロックを1つでも変更すると、既存のチェーンとの互換性は完全に失われてしまいます。そのため製造者や監督機関は、仕入れ先が環境や健康、安全、労働に関する適切な基準を順守しているかどうかを容易に確認できることになります。

しかし、課題がないわけではありません。理想的なブロックチェーン・システムでは、ネットワークの参加者全員が全ての取引や計算について遅延なく追随する能力が求められるため、処理できる取引量が制限されてしまいます。ゆえにこれまでのソリューションは、分散化かネットワークのオープン性のいずれか、あるいはその両方で、一定の妥協を受け入れざるを得ないものでした。その結果、システムに「信頼」という要素が入り込まざるを得なかったのです。

現状では、ブロックチェーンを活用したからと言って、信用性をプロセスから排除できる訳ではありません。これはデータの透明性、不変性および数学的検証性を確保するものであり、データ自体が正しいことを保証するものではありません。このテクノロジーが“人間と物品とで成り立つ現実の経済”と関わる限り、残念ながら不正は起きえてしまいます。

それでもなおグプタ氏は「ブロックチェーンは信頼性と透明性をもたらすものであり、それにより人間は正直であることができるのです」と主張します。つまり、不正行為を完全に排除できなくても、ブロックチェーンは不正行為の実行を難しくする。それこそが重要なのです。

今後、ブロックチェーンがどのような形で実際のビジネスに組み込まれていくか。その動向が注目されるところです。