ロゴ

世界が評価する日本・東京の国際競争力は?

世界は日本をどう評価しているか?世界経済フォーラム(World Economic Forum)が毎年発表する「世界競争力ランキング」から見る今の日本の国際競争力、これからの課題を探ります 。

「アベノミクス」効果による経済の復調を伝える政府や官公庁の発表と、その実感を得られないままでいる市民の反応。毎日、様々なニュースが飛び交う中、今の日本の競争力をどうとらえるべきかを考える上で、ひとつの指標となりうるデータが今月初めに世界経済フォーラム(World Economic Forum、以下WEF)から公表されました。これは1979年から毎年発表されている世界競争力ランキング(「Global Competitiveness Reports 2014-2015」)です。世界148ヶ国の1万4,000人を超えるビジネス・リーダーたちを対象に行った調査を集計したこのランキングで、日本は前年の9位から3つ順位を上げて144ヶ国中6位に位置づけました。

具体的な評価の中には大きな変化はありませんでした。WEFのエコノミストであるティエリー・ガイガー氏が、競争力やビジネス環境にとって安倍政権の安定が「非常に重要」と述べているように、具体的な変化よりも、長いこと猫の目のように変わり続けて不安定を極めた日本の政治環境の「安定」がランクアップを下支えする一要素になっていると考えられます。もちろん、全部で12分野144項目におよぶ評価項目をひもといていくと、「イノベーション」、「ビジネスの洗練度」といった分野で日本は世界トップクラス。特に「国内サプライヤーの質・数」、「生産プロセスの洗練度」をはじめとした「ビジネスの洗練度」は6年連続で第1位、「イノベーション」でも「企業のR&D投資」や「PCT特許申請数」でそれぞれ2位に着けるなど、日本のものづくりやイノベーションに対する信頼の高さをうかがわせています。これらの優位性をいかに発揮し、さらに強固なモノとしていくか、が、これからの日本の戦い方のキーポイントとなることは間違いないでしょう。

これに対し、弱点とも言える「マクロ経済的環境」や「労働市場の効率性」といった分野では、日本はかなり厳しい評価を受けています。マクロ経済という観点でみると、「GDPに対する政府予算のバランス」では136位、「GDPに対する政府債務」では143位と、今回のランキングでも最底辺に位置する低い結果に終わっています。また、労働市場環境においては、「雇用、解雇の実行」は133位、「労働力における女性の比率」は88位、「人材を惹きつける国の潜在能力」は79位と、いずれも中位以下。今年6月、安倍政権が「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」で改善すべきと掲げていた項目は、現状ではまだ世界の評価を得られていません。

他方、英国の週刊誌エコノミストとその調査部門であるEconomist Intelligence Unitが2012年に発表した2025年段階での世界120都市の競争力比較「Global Talent Hotspots in 2025」を見ると、東京は120都市の中で5位にランクインしています。このランキングは、経済や財政,インフラ、教育といった経済的な側面だけでなく、人材や文化的な要素までを含めて世界中の街を番付したもの。『エコノミスト』では、競争力を持つ魅力的な街が世界の人材を惹きつける、としてこのランキングを紹介しています。ちなみにこの調査でも、東京はインフラストラクチャー、資金力などでは世界トップクラス。しかしながら、高齢化や労働力不足といった項目に足を引っ張られています。

エコノミスト誌の調査レポート(Global Talent Hotspots in 2025)より抜粋:
東京の最大の強みはその金融システムと完全とも言える物的インフラである。
経済成長力においては、勢いあるアジアの新興国によって東京は17位に退かされた。高齢化しつつある労働力と限定的な政策実効性もまた、東京の競争力の足をひっぱる要因である。しかし自然災害や環境問題の分野においては、世界に突出した対応・管理力を示したことで後半グループから36位にまで順位を上げた。これがなければ、このベンチマークにおける東京の競争力維持は厳しいものになったであろう。

日本では今、高齢化、人口減少の進行にともなって労働力市場にゆがみが生じ始めていることを、誰もが感じているのではないでしょうか。たとえば、高齢者の再雇用を義務化していけば、今後は年下の上司が年上の部下を持つなんてことも当たり前の光景になり、日本固有の「年功序列」という慣習そのものを変えざるを得ません。女性活用にしても、現状の労働環境のままでは女性が働くうえでの困難が多く、もちろん、もう一方で掲げている少子化対策との整合性もとりづらくなります。外国人登用については根本的な法整備が必要ですし、島国特有の感情的な障壁もクリアしていかなくてはなりません。また、移民問題など海外の事例を見ると、長期的な影響も懸念されるところです。まさにWEFのレポートが指摘する「雇用、解雇の実行」、「労働力における女性の比率」「人材を惹きつける国の潜在能力」といった側面をひとつずつ真の意味で改善を図っていけば、ひいては日本の競争力がさらに強いものになっていくわけです。

エコノミストによる調査結果の通りなら、10年後、日本はまだ一定の競争優位を保っているかも知れません。でも、20年後、30年後にどうなっているかは、今の日本の取り組み次第。この先も日本が世界の経済において競争力のある国、世界中から人や資金を惹きつける国であり続けるには、トップクラスに位置する今のうちに自分たちの強み、弱みを認識し、この先の戦い方を考えておかなくてはいけないでしょう。それは、国任せではなく、私たち一人一人、そして企業それぞれが考えていくべき課題でもあります。