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コラボレーション・ロボットが、オートメーションの定義を変える。

オートメーションの定義を見直すところから生まれた、
人と一緒に働くコラボレーション・ロボット(コボット)「バクスター(Baxter)」。
この産業用ロボットによりごく一部であった製造工程のオートメーション化がさらに進んでいきます 。

産業用ロボットと仲良くするなんて、考えたこともないですよね。パワフルな鋼鉄製の二の腕を駆使して、ロボットが巨大な機械部品を軽々と持ち上げたり、溶接したり、成形したりする・・・私たちは、そんな姿を、ちょっと離れた安全なケージの中から、「すごいすごい」と言いながら見ているだけ。ケガをしたくなければ近づかないのが一番だと思っているはずです。

ロボットの可能性をあれこれ想像しているのに、実際には製造プロセスのほんのごく一部しかオートメーション化することができていない理由はここにあります。「もっと進歩させようと思うのなら、オートメーションの定義を見直すところから始める必要があります」 リシンク・ロボティクス社のチーフ・マーケティング・オフィサー、ジム・ロートン氏はこう言います。ボストンを拠点とする同社が編み出した、この問題に対する解決策は“バクスター(Baxter)”と名付けられた、人と一緒に働くコラボレーション・ロボット(コボット)。ロートン氏は「私たちはロボットをケージから解放して、自由にしてあげる必要があったんです」と言います。

アメリカの工場で稼働しているのバクスター(Baxter)

Baxterはすでに何カ所ものアメリカの工場で稼働している
画像:RethinkRobotics

このメッセージに大きな魅力を感じたひとり、ウィスコンシン州にあるGEヘルスケアの製造拠点、オートメ―ション・センター・オブ・エクセレンスのリーダーとして働くグレッグ・ハインツはこう言います。「これは、これまで莫大な費用がかかった従来型の“固定式”のオートメーション設備に取って代わる、低コストなオートメーション技術です。製造現場における新たなるパラダイムですよ」

昨年の夏、ハインツは「コボット・チャレンジ」を企画しました。それは、バクスターのようなコラボレーション・ロボット(コボット)にお願いしたい「4D」、すなわちdirty(汚い)、difficult(難しい)、dangerous(危険な)、dull(退屈な)な作業のためのアプリケーションを発掘することを目的にしたものでした。「製造工程のオートメーション化を進めて、バクスターに作業を肩代わりしてもらおうと考えたんです。オペレーター達はストレスの多い単調な作業から解放されて、もっと高度な業務に従事できるようになりますからね」

グレッグ・ハインツとバクスター

グレッグ・ハインツとバクスター(ウィスコンシン州のGEヘルスケアのアドバンスト・
マニュファクチャリング・センターにて) 画像:グレッグ・ハインツ

ハインツは、世界20カ所以上にあるGEヘルスケアの事業所から寄せられた30を超えるアイデアの中から、スウェーデン、中国、アメリカの2工場という4つの拠点を選びました。そのひとつ、上海にほど近い無錫にあるGEの工場のケースでは、それまで超音波プローブを作る生産ラインの中で、膨大な量の“繰り返し作業”が行われていたのです。「オペレーターは煙霧から身を守るために、個室の中でマスクをつけて立ち作業をしていました。部品を取り上げ、化学薬品の下地溶液につけ、エアスプレーで乾かし、でき上がったパーツをトレイに並べる。こうした作業は、”コボット”にうってつけ」

バクスターの生みの親、リシンク・ロボティクス社のロートン氏も、「まさにこの手の作業のためにバクスターを作ったんだ」と同意します。バクスターが通常の産業用ロボットと異なるのは、簡単な動作ベースの学習に加えて、人間の「弾力性」を取り入れたマシンのアームを組み合わせることが可能だということ。この二つの特性によって、バクスターは自分の位置を認識し、必要に応じてアームのグリップを調整することができます。「周囲のモノを壊したりしないよう、このロボットは周囲で働く者と協調するんです」とロートン氏は言います。例えばすぐ近くで作業している人間の手など、スイングアームが予期せぬ障害物を発見すれば、ロボットは即座に動きを止めます。

稼働中のコボットバクスター

この動作を司るのが、バクスターが搭載している3つのカメラ。1つは頭、残り2つはそれぞれのアームにあり、常に自らのアームの位置、周辺の物体の位置を確認しています。「このカメラがあることで、バクスターは人間と同様に仕事をこなすことができています。我々人間は、作業に何か不正確なものを見つけても、それに対応して仕事を続けられますよね。バクスターも同様に、たとえば流れてくるモノが毎回ぴったり同じ場所に置かれていなかったとしても、そのパーツをきちんと取り上げることができるんです」とロートン氏は言います。

昨年の秋、中国の無錫工場に到着したバクスターは、3Dプリンター製の超音波プローブにフィットするグリップを取り付けてテスト稼働を開始しました。そのおかげで、工場内ではオペレーターの配置替えが進み、生産プロセスの品質向上とスピードアップを実現することができました。

人と一緒に働いているバクスター

スウェーデンの工場では、コンピュータ化されたフライス盤からコンベヤベルトに落ちてくる金属製のポンプヘッドの処理改善にバクスターが活躍する予定です。ポンプは生体分子の有無を測定するクロマトグラフという機器の中で動作するもので、高い品質基準を満たすことが求められます。

この工場では、バクスターの導入によって生産ラインを5段階から2段階に短縮して効率化する計画です。ラインを止めることなく規定の製品管理を100%達成するが可能になり、さらにオペレーターの健康被害の可能性も解消することができるようになる見込みです。さらに、これまでの生産工程では、オペレーターは作業中に年間約50キロ近く歩く必要がありましたが、バクスターを導入すれば、約18キロと3分の1近くにまで減らすことが可能に。

テスト運用での好結果を受け、GEのベンチャー投資事業であるGE Venturesは、この1月にリシンク・ロボティクス社に対して出資を行いました。ウィスコンシン州のGEヘルスケアのアドバンスト・マニュファクチャリング・センターでバクスターと一緒に仕事をしているハインツは、早速、ロボットのための新しい職場を探し始めています。たとえば、GEの新製品であるレボリューションCTスキャナー内部にあるワイヤーの長期的なねじれや摩耗の度合いを調査するために、3Dプリンターで作成した特製グリップをつけたバクスターが検査してくれています。ハインツは、バクスターの可能性に大きな期待を寄せています。「グリップはすでに何種類か作成してきましたし、プログラミングだけなら5分程度しかかかりません。これほど簡単な方法は他にはありませんよ」