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日本人建築家と、未来をつくるGEの「デジタル・ファウンドリー」

卓球台やテーブルサッカー・ゲームが置いてあるオフィス・・・といえば、IT系スタートアップなどが思い起こされて、設立から124年の発電用タービンや航空機エンジンを作る企業とは縁遠いイメージかもかもしれません。でも、これが、今年の夏、パリのオペラ座から歩いてすぐのところにGEが開設した「デジタル・ファウンドリー」。“鋳物工場”という意味をもつ“ファウンドリー”という名を冠したこの施設のメディア・マネージャー、エイドリエン・リヴィエールは、「長年にわたり蓄積してきた物理の専門知識と、未来を描き出そうという熱い思い。新旧のコントラストに取り囲まれたこの場所は、勤務地としても街一番の魅力的な場所なんですよ」と新しい施設を紹介します。

GEはこの数年間、機器と産業用IoTの連携を推進し、自らを「デジタル・インダストリアル・カンパニー」へと変革することを目指してきました。そんなGEにとって、このデジタル・ファウンドリーは、マシンの生み出すデータを解析するためのソフトウェア開発や、スタートアップ企業を育むための斬新なアイディアを生み出すための場所という位置づけ。たとえば、あるデータ・サイエンティストはGEヘルスケア製の磁気共鳴断層撮影装置(MRI)の何千枚もの画像をソート・分類できるアルゴリズムの構築に取り組んでいます。これが完成すれば技術者の作業時間を削減することが可能になります。

大半のアプリはGEがインダストリアル・インターネット向けに開発したクラウドベースのプラットフォーム、Predix上で機能します。IoTのネットワークはすでに134億台のデバイスと繋がっており、この数は2020年までに385億台に跳ね上がると予想されています。

パリに新オープンしたGEのデジタル・ファウンドリーに在籍するソフトウェアエンジニアたち
風力タービンやジェットエンジン、その他のマシンをIoTに繋いでいる
(写真:GEデジタル)

最上部の写真:デジタル・ファウンドリーから見えるパリの街並み。オペラ座も一望できる
(写真:Getty Images)

ここで働いているのはGE社員だけではありません。「顧客や学生、そしてGEのエンジニアが集まってコラボレーションし、新たなソリューションを見いだすことが目的なんです」だとリヴィエールは説明します。「技術分野でも産業分野でも、最高のアイディアが偶然の会話の中のひらめきから生まれることが増えてきました。まさに偶然の賜物。イノベーションを生み出すには、時にはテーブルサッカーで遊ぶことだって必要なんです」

実際、このオフィスには想像力を刺激するものがいたるところに用意されています。デジタル・ファウンドリーが位置するのは、キャトル・セプタンブル通りに面した「ル・セントリアル(Le Centorial)」という築140年の建物内の2つのフロア。ここには、かのギュスターヴ・エッフェルが設計したガラスと鋼でできた素晴らしいドームが今も残ります。でも一歩オフィスの中に入れば、オフィスポッドがマトリックス状に絶妙に配置され、エンジニアやデータ・サイエンティスト達がコラボレートしながら、テラバイト単位のデータを解析するための優れたアルゴリズムを構築するための環境が整えられているのです。

ここでは現在、データサイエンス、設計、ソフトウェア開発を専門とする70名のスタッフが
石油・ガス、電力、医療などの産業向け研究に取り組んでいる
(写真:GEデジタル)

デジタル・ファウンドリーの内装を考える上で最も重視したのはチームワークを育む環境を作ることでした。設計したのは日本の建築家、森谷英和氏。そのアイディアはミツバチの巣のようなハニカム構造がベースになっています。長方形の部屋に足を踏み入れると閉塞感を感じがち。そこで森谷氏は部屋を六角形にするアイディアを取り入れ、壁に触れる機会を増やすことで、より活動的な気分になれるという狙いからデザインを進めました。

また、すべての壁がホワイトボードでできているので、アイディアがひらめいたら、その瞬間に書き留めることができます。壁までの数歩の間さえ覚えていれば頭の中に生まれたインサイトを失わずに済む、というわけです。

実際、この記事用の写真撮影の際にも、多くの壁が上から下までアルゴリズムでびっしりと埋まっていました。そして、その下にあるテーブルで、エンジニアがソフトウェアコードを使って風力タービンのモデルの操作を、別のエンジニアはドローンのプログラミングを行っていました(GEではすでに、「デジタル・ツイン」と呼ばれる風力発電施設全体のバーチャルな3Dモデルを構築して、設計や発電量を最適化しています。さらに、遠隔地の現地調査を行うためのドローン活用法も模索しています)。「何かをイチから始めるチャンスほどドキドキ・ワクワクするものはありません。GEではそれもなおさら!文字どおりモチベーションを感じられています」と、ここで働くソフトウェア設計者、ブノワ・ローラン。でも、時にそのモチベーションの高さが、施設の中での「ドローン飛行コンテスト」なんて言う、違う意味でドキドキさせるものが企画されているようですが…。

森谷氏のデザインには、GEがこれまで築き上げてきた産業分野での伝統も加味されています。たとえば、部屋の吊天井を取り外して、建物の内部にある金属製の梁や照明支柱、パイプなどをむき出しに。反射作用のある金属樹脂、木の床、粗織の布など、工場や発電所で目にするような素材を敢えて用いて、それらを柔らかな素材や建物設備と組み合わせました。

また、「行き止まりの場所」を作らないよう、まっすぐな廊下を減らし、オフィスポッドの周りを歩き回れるよう通路が設計されています。11年前に日本からパリに移住したという森谷氏は次のように話します。「使う人にくつろぎを提供したいと考えました。オフィスでアイディアがひらめいた時、わざわざ会議室に行ってパソコンを起動する必要はありません。その瞬間、壁に書き始めればいいんです」

2フロアにわたってデジタル・ファウンドリーの居となったのは、ギュスターヴ・エッフェルが設計した
ガラスと鋼でできた素晴らしいドームが今も残る築140年の建造物「ル・セントリアル(Le Centorial)」
(写真:GEデジタル)

パリに開設したデジタル・ファウンドリーは、GEが世界中に構築しようとしている施設の第1号。すでに上海にも同様の施設がオープンしています。パリでは現在、データサイエンス、設計、ソフトウェア開発を専門とする70人のスタッフが、石油・ガス、電力、医療をはじめとした産業部門向けの研究に取り組んでいます。今後2018年までに、GEは欧州のデジタル・ファウンドリーのスタッフを250人まで増員する計画です。

・・・きっとデジタル・ファウンドリーの壁を埋めるメモの中には、産業分野の“次なる大発明”につながる予言が書きこまれていくことに!

すべての壁は書き込み可能。アイディアはひらめいた瞬間にすぐ書き留めることができる
(写真:GEデジタル)