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ジェットスキードクター 離島をゆく

ほんのりと明るくなった空が東シナ海に新たな一日の始まりを告げる頃、医師の泰川恵吾(やすかわ・けいご)さんのジェットスキーは大海原を疾走していきます。「こうして海に出ると、気持ちが解放されて、とても自由な気分になります」と語る泰川さんは「ドクターゴン」の愛称で多くの患者さんから慕われる医師。沖縄県宮古島で在宅医療を展開し、橋がかかっていない周辺の離島への往診には、趣味でもあるジェットスキーを活用します。その腕前は、レースに出場するほど。

宮古島は、日本の最南端、沖縄本島の南西約300㎞に位置する人口54,000人ほどの島。東京の大学病院救急救命センターのチーフドクターを務めたのち、生まれ故郷である宮古島に戻った泰川医師は、2000年に「ドクターゴン診療所」を開設し、高齢化が進む島のお年寄りの家などを訪問し、在宅医療を展開しています。

ある日、乗ってきたジェットスキーを埠頭に着けると、低い崖を越えて町に入り、ある高齢者のお宅を訪ねました。「おじい」の健康状態を確かめ、問診をする間も、とても気分の良い「おばあ」は、大好きな民謡を歌って先生をもてなします。「じゃあねー」…その言葉に、在宅で待つ高齢者と医師の信頼が表れています。泰川医師の訪問診療を受けるようになった患者の一人は「病院へ行くには服を着替えて、手助けしてくれる人を呼ばなければなりません。結局、いつも1日がかりになっていました」と話します。

泰川医師がジェットスキーで離島を訪れるようになったのは、宮古島で医療を求めている人々を目の当たりにしたことがきっかけです。「お宅を訪ねるうちに、周りの小さな島々にも患者さんは当然いるだろうと思い至り、そうした島々も訪問するようになりました」。

訪問診療の際、泰川医師は携帯型の医療機器を持ち歩いています。内臓器官や心臓弁機能、妊婦さんの胎児の画像を確認することができる超音波診断装置は、その場で患者さんにも診断画像を見せることのできる便利なもの。数年前に登場したこの装置は、重さ約400グラム、まさにポケットに入れて簡単に持ち歩くことを可能としました。「独自のシステムや最新のテクノロジーを活用して、あらゆる地域の高齢者に幸せな医療環境を与えたい」という、泰川医師の在宅医療を陰で支えています。