ロゴ

チャージ完了:GEのエネルギー事業の成長に向けたシナリオ

GEのCFO、ジェフ・ボーンスタインは、GEパワーとGEリニューアブルエナジーが3月にニューヨークで開催したカンファレンスにおいて、重電大手アルストムのエネルギー資産買収に伴う2016年のシナジー効果が2016年には15億ドルに達し、GEが当初掲げていた5年間の目標を3億ドル上回ったことを報告しました。アルストムがGEの競争力をいっそう高め、サービス基盤の拡大と長期的な企業価値の向上をもたらしています。

同様に、いまGEオイル&ガスは現在、石油・ガス大手ベーカー・ヒューズとの統合計画を進めています。両社の事業は補完関係になり、その2020年までの事業統合効果は、昨年10月に統合を発表した際に掲げた16億ドルをはるかに上回るものと見込んでいます。

世界最大のジェットエンジンを転用したガスタービン LM9000
(写真:GEオイル&ガス)

最近の買収や統合はGEのグローバル市場における実績を拡げています。GEのグローバルにおける発電能力は、アルストムとの統合によって1,500GWに達し、いまGEの発電用機器は世界の電力の30%を生んでいます。また、統合によってアルストムの事業ポートフォリオが加わったことで、タービンだけでなくボイラーや発電機、その他関連設備の製造も手がけるようになったGEは、ガスタービン事業を超えた「パワーアイランド」事業を展開できるようになりました。

デジタル技術がエネルギー・ビジネスを変革する
そして、GEのエネルギー事業に最も急速な変化をもたらしているのが、IoT技術です。GEパワーは現時点で約92,000台の設備資産をデジタルネットワークを介してGEの産業用ソフトウェア・プラットフォーム「Predix」に繋いでいますが、その設備のすべてがGE製というわけではありません。米国のエクセロン社、パキスタンのHubco社などは、すでにPredixベースのアプリやその他のソフトウェアを活用して資産活用を最適化しています。日本でも東京電力フュエル&パワー社が、富津火力発電所における運用効率向上にむけたPredixの活用に乗り出しています。GEはPredixによってガスと蒸気を用いた発電システムの性能とサービスを向上させれば、今後10年あまりのうちにHubco社単独だけでも2億4000万ドルの価値を創出できるようになると試算しています。

GEパワーのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)ガネッシュ・ベルは、デジタル・テクノロジーは「(顧客企業が)引くことのできる最大のレバー」だと言い、2016年はデジタル技術がもたらした電力産業の一大転換点だったと言います。GEは、設備がGE製であるかどうかに関わらずあらゆる環境で動作するソフトウェアの開発に励み続けています。

とはいえ、一方では課題も山積しています。発電施設のダウンタイムの70%はデータ分析によって予測することができますが、実際に大半の発電事業者が収集しているデータは、発電施設で1日あたりに生み出される2テラバイトのデータ量のわずか2%にすぎません。世界経済フォーラムのホワイトペーパーによれば、デジタル・システムを採用することによって、電力産業は1兆3,000億ドルの価値を生み出す可能性があるとのこと。大きな効果を得るためには、多くのデータを活用することが必要です。ベルが率いるGEパワーのデジタル部門は大幅な受注増を予想しており、昨年5億ドルだった受注金額が2017年は9億ドルに達すると見込んでいます。

デジタル技術は、GEがより優れたハードウェアを作り出すうえでも役立ちます。例えば、最新世代のHクラス・ガスタービンは、温度、圧力、振動、その他の特性を測定するために6,000個ものセンサーを搭載しており、センサーによって得られたデータを活用して性能にさらに磨きをかけています。Hクラス・ガスタービンを採用したフランスのブシャン発電所の発電効率は62%を達成し、昨年ギネス世界記録にも認定されましたが、開発チームはすでに64%の効率を実現するマシンのテストを開始しています。「物理的には何も変わっていませんが、効率化は何百万ドルもの価値を生み出します」とは、GEパワーのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)ジョン・ラマスの言。世界中の電力会社がこの動きに注目しており、中国においても哈爾浜電気集団公司(ハルビン電気)がGEと契約を締結。来年後半には中国初のHクラス・ガスタービンが導入される予定となっています。

Hクラス・ガスタービンが稼働するフランス・ブシャンにある世界最高効率のコンバインドサイクル発電所
(写真:GE Reports)

GEリニューアブルエナジーにも同様のシナリオが当てはまるでしょう。アルストムとの事業統合効果により、急成長を遂げている洋上風力発電と水力発電の市場で、同事業部門は着実に地歩を固めています。GEパワー同様、GEリニューアブルエナジーでも米国内に設置されている全13,000 基のGE製風力タービンがPredixにつながっており、1カ所の管理センターからすべての設備を遠隔監視することができるなど、デジタル化が効率的な運用を可能にしています。

スイスアルプスの小さな街、リンタールを見下ろす場所に設置された水力発電施設。
原子力発電所並みの莫大な電力を作り出すことができる
(動画:GE Reports)

いま、世界では新たな発電能力の50%は再生可能エネルギーが占めるようになると見られています。GEがタービンブレードメーカーのLMウィンドパワー社の買収を計画したり、サウジアラビアやロシアなどの新市場に進出しているのはそのためです。

デジタル技術の波は、歴史あるエネルギー産業のビジネスのあり方をも大きく変えようとしています。成功のシナリオは、今まさに書き換えられようとしているのです。