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AIの活用:電力線の安全点検を簡素化するソフトウェア

2003年、大いなる自然の力によって米国東海岸の灯りが消えました。夏の暑い日に、伸びすぎた木の枝とたるんだ電力線の間で偶然発生した短絡が原因でした。この障害はたちまちシステム全体に波及し、北米史上最大の停電を引き起こしたのです。

この停電によって、アメリカとカナダで5千万人もの人々が電気を使えない状態となり、ある試算では60億ドル以上の損害となりました。実際のところ、何か問題が起こるまでほとんどの人は送電網のことなど考えません。しかし、全員がそうだという訳ではありません。舞台裏では、専任の技術者グループが電力ネットワークの健全性を監視し、同じような停電の発生を防ぐ効率的な方法を懸命に模索しています。

これは簡単な仕事ではありません。カメラと双眼鏡を携えて険しい地形を歩きまわり、高圧送電線の近くまで草木が繁茂して危険な状態になっていないかどうかを確認するのです。

しかし、最近はそんな地上スタッフも空中からの支援を得られるようになりました。GEのグリッドソリューション事業部のフィールド・サービスの技術者たちは、デジタルセンサーとカメラを搭載したドローンを持ち込み、空中から詳細な画像を撮影して、それらを瞬時にクラウドベースのプラットフォームに送信して分析することが可能になったのです。このプラットフォームを裏で支えているのがアビタス・システムです。2017年にGEベンチャーとして設立され、ボストンに拠点を置くこの会社は、ロボット技術、人工知能(AI)、リスクベースの予測分析を活用してインダストリアル向けの検査を行っています。

手動による外観検査を画像や映像などのデータに置き換えることで、より正確な検査が可能となり、顧客はエビデンスの履歴を蓄積して予測的意思決定に活用することもできます。「このソフトウェアは、問題が発生する可能性のある場所を予測できる人工知能を備えています」とGEグリッドソリューションのライフサイクル管理サービス・マネージャーであるシャンタル・ロビリャールは言います。


上部画像:GEのグリッドソリューション事業部のフィールド・サービスの技術者たちは、デジタルセンサーとカメラを装備したアビタス・システム製のドローンを持ち込み、空中から送電網の詳細な画像を撮影して、それらを瞬時にクラウドベースのプラットフォームに送信して分析することが可能になった。画像提供:GEグリッドソリューション。最上部画像:送電網の保守では、しばしばカメラと双眼鏡を携えて険しい地形を歩いて回っている。画像提供:ゲッティイメージズ

送電系統運用者にとって注目すべきは、アビタス・システムが開発している植生侵入を検知するAI駆動型モジュールです。対象の電力線の近くにある植物の種類を検出し、その種に関する情報を使って気象パターンや季節性をもとに成長率を予測します。この装置を使用することで、その木を刈るかどうか、そしていつ刈るのかという決断を、情報に基づいて行うことで問題を未然に防ぐことができます。

植生管理に加えて、AIは鳥の巣などの異物と、絶縁体やスペーサーといった送電網の構成部品を識別することができます。このプラットフォームはさらに、腐食、割れ、熱の急上昇などの異常を見分けることもできます。

AIは時間をかけて特定の電力線に関する典型的な状況を学び、画像データで検出した異常を抽出します。例えば、ドローンで南カリフォルニアのある地域を監視する場合、AIが現地のヤシの木の成長パターンを予測し、葉が電線と接触する危険性が発生するかなり前に、システムが警告を発信します。

しかし、まだこの話には続きがあります。画像は付随する分析内容とともにGEのアセット・パフォーマンス・マネジメント(APM)ソフトウェアにアップロードされ、オイル分析やオンライン状態監視システムの測定値といった様々な追加情報を補完し、送電網装置の健全性を包括的に確認できます。GE APMは保存したデータを使って、電力系統のデジタル・ツインを構築し、高度な分析を用いて将来起こりうる事象を予測することができます。例えば、このプログラムは、装置が故障する可能性やそれがいつ起こるか、装置の使用期間、送電網全体に対する重大性などを基に、理想的な修理時期を計算することができます。これにより、GEグリッドソリューションのサービス技術者や顧客は、リスク管理や信頼性向上、コスト削減に関して顧客が設定する優先順位を基に、最適なメンテナンス計画を策定することができるのです。

このシステムはドローンだけに依存しているわけではありません。固定式の高解像度赤外線カメラに転用することにより、これまで技術者が実施してきた外観検査を行うことができます。例えば、変電所(電圧レベルが変動する送電網の物理的中心部)の内部に設置された赤外線カメラで、変圧器が加熱しやすいホットスポットを見つけることができます。カメラは常に稼働しているため、次回の保守点検まで検知されにくい突然の危険な温度上昇などを検知することができます。「これこそが未来だと信じています」とロビリャールは言います。

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