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20代の3人にひとりが「自社はブラック企業」という時代。対話力が職場を救う!?

「女性活躍の推進」よりもっと大事なこと

皆さんの周囲で「若手とは根本的に考え方が違うから、相互理解はもはや望んじゃいかんよね」とか「アイツ、子どもが生まれてから毎日早く帰っちゃうんだよ」とか「女性の部下には、遠慮しちゃってモノが言えないんだよね」なんて声・・・聞いたことありませんか?

団塊の世代が一線を退き、企業内の風景も様変わりしている日本。
各企業が女性比率拡大に力を入れるのと同時に、女性の社会進出に伴ってかつては少なかった「イクメン」や「介護を妻と分担する男性」も増えています。また、育った時代が異なると世代間の価値観にも様々な違いが。

日本ではとかく「女性活躍の推進」ばかりがフォーカスされがちですが、そのためにも、重視すべきは性別に限らないダイバーシティ(多様性)。「個人」ひとりひとりの多様性に焦点を当てた施策を講じてこそ、平等で持続的に成長できるはずです。企業経営にとって最も重要な資産である「人」が、個人ごとに最大のパフォーマンスを発揮できる環境や風土を整えることが、企業の競争力に直結するのですから。・・・でも、島国で且つ男性社会であった「モノカルチャー」の日本にとって、機能する「ダイバーシティ」の実現はなかなか難しい、という企業が多いのも現実です。

そこで「対話こそが、実効性あるダイバーシティ実現のキーファクター」と語り、多くの企業の「現場視点のダイバーシティ・マネジメント推進」導入を支援するコンサルティング会社、FeelWorks代表の前川孝雄氏に、ダイバーシティ/コミュニケーションのあり方について、お話を伺いました。

コミュニケーション・ロスが社員間/世代間の対立を生んでいる

編集部:特に若い世代にとって「会社は働きにくい場所だ」という意見が多いそうですね。
前川(敬称略):ええ。私が『勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい』という本を出版した際には「これだから会社は大嫌い」「これが美談なら日本は腐ってる」と、若い人の反応は散々でした。ところが、管理職の世代からは共感の声を多数いただいたんです。このとき、世代間の価値観の違い、コミュニケーションの不足を実感しましたね。20代の3人にひとりが自分の会社を「ブラック企業」だと思っている。この数字はあまりにも多い。本当にブラック企業が多いのではなく、コミュニケーション・ロスによる誤解が根本にあって働きがいを感じられなくなっている環境も含まれているだろうと思います。

自分の会社を「ブラック企業」だと思う人の割合
出典:「ブラック企業に関する調査」(日本労働組合総連合会)

温かい絆を育み、組織の体質が変わるアプローチ

編集部:どうしたら、こうしたコミュニケーション・ロスの弊害をなくすことができるのでしょう。
前川:「互いに認め合うこと」が、人にやりがいや生きがいをもたらします。人間同士の繋がり、関わり合うことが、働きがいにつながるんです。これまでの上意下達ではない、新しいやり方が求められている。FeelWorksでは、これを「コミュニケーション・サイクル理論」と呼ぶ4つのステップで実現できると考えています。

FeelWorksのコミュニケーション・サイクル理論(前川氏提供)

前川:対話によってひとりひとりの違いを認め、お互いの価値観を知る。でも「聞くだけ上司」ではだめですよ(笑)。その上で、どのような考えを持って周囲と向き合うかというあり方を定め、具体的かつ現実的にやり方を変えていく。コミュニケーション循環を良くすることで、温かい絆を育み、組織の体質を変えていくアプローチです。ダイバーシティを企業にとって「機能するもの」にするには、組織としての方針を定めながらも、一律のゴール設定ではなく、ひとりひとりにカスタマイズされたゴールを重視しなくてはなりません。個人の違いを活かした上で、結果としての平等が担保されるんだと思います。かつては「給与」や「肩書き」だけが評価であったため、働き方が固定的なものになりがちで、それが長時間労働の原因にもなっていました。いまは「時間」や「はたらく場所」など、さまざまな企業としての「報い方」がある。フレックスタイムやリモートオフィスなどは、すでに多くの企業で採用されています。大切なのは選択できることであり、選択が可能であれば、働き方も多様になります。

企業集団として共通の信念をもって働く仲間であっても、それぞれ個人の人生には様々なライフイベントが巡ってくるもの。結婚や育児だけでなく、介護、あるいは、資格取得のために勉強したい、オフタイムの趣味も充実させたい・・・。GEも、日本で「SmartWork@GE」というプログラムを立ち上げ、性別に関わらず社員一人ひとりのニーズに合わせて柔軟に働ける環境づくりを進めています。たとえば日本GEの社員は誰でも、フレックスタイムはもちろん週1回からの在宅勤務、短縮勤務などを有休取得と同様の簡単な申し出で活用することができます。これは社員と上司(企業)とが、互いを理解し尊重し合う関係があってこそ成り立つもの。一人ひとりの生き方が尊重され、フレキシブルに働き方を選びながら、責任を手にして「アウトプット=成果」を示していく。本当に働きやすく仕事を通しても個々が輝ける職場と風土を、制度面からも固めていこうという狙いです。

「対話」を通じて価値観や強みを引き出すことのできる、持続可能な組織へ

編集部:対話がベースとなると、それを聞き出す上司の個人的な力に依存することになりませんか。
前川:リーダーがいなくなると立ち行かなくなるようでは、制度や組織風土として定着していない証拠です。たしかに、対話によって価値観を引き出す力は個人によって差が出がちですが、管理職層のそうした能力を重視し“育成する”ということを、企業は風土として定着させなくてはなりません。
企業の責任は、社員に共感されるミッションを確立し、ひとりひとりに裁量を与え、個々の頑張りに対してフィードバックを必ず返すこと。そして、そういう姿勢が大事だという組織風土をつくることです。その意味で、ダイバーシティは、ビジネスに直接的な影響を及ぼす経営課題そのものなのです。

前出の世代間の認識のギャップが示すように、企業のなかの景色も大きく変わりつつある今、個々の社員の力を最大限に引き出せる組織風土を築けるかどうかが、これからの企業競争力を左右します。経営用語として定着しつつある「ダイバーシティ推進」を表層的な取り組みに終わらせないためには、前川氏が語るとおり、現場を支える“上司”たちの対話力が鍵を握ります。それは企業により良い結果をもたらせるだけでなく、“上司“たち自身にとって、またそのチームメンバーにとって「働くことが楽しくなる」秘策。企業として制度的に取り組むのがベストですが、自分が率先して始めるのもよし。「対話力=上司力」、高めていきたいですね。

前川孝雄氏
株式会社FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

(株)リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」などの編集長を歴任。働く人の本音に精通した知見を活かし、日本型ダイバーシティ・コミュニケーションの専門家集団(株)FeelWorksを起業。同社では、独自のコミュニケーション・サイクル理論をもとに、立場の異なる人間同士の「絆」を作り、人と組織に「希望」をもたらすことを主眼に人材育成・組織活性化を支援。人気の「上司力研修」シリーズは大手企業を中心に100社超で導入され、育成風土を創る「社内報編集」や「ダイバーシティレポート制作」も手掛けている。現場視点のダイバーシティ・マネジメント推進、リーダーシップ開発、キャリア論に定評がある。その親しみやすい人柄にファンも多く、『はじめての上司道』『女性の部下の活かし方』『働く人のルール』『30代はアニキ力』『上司力トレーニング』など著書多数。読売新聞で「前川孝雄のはたらく心得」連載中。