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ゲーム開始:ARが工場作業員の生産性向上に貢献

ジミー・ビーチャムの仕事場の天井にはマイクロソフトのXboxのコンソールがぶら下がっていますが、彼はゲーマーというわけではありません。GEヘルスケアでアドバンスト・マニュファクチャリング分野のチーフエンジニアを務めるビーチャム(44)は、ウィスコンシン州ウォキショーにあるフューチャリスティック・ラボラトリーで新たなものづくりの方法を研究しています。ビーチャムと彼のチームは、XboxとそれにつながるKinectモーショントラッカーを活用して工場にAR技術(拡張現実)を導入し、作業効率の向上を目指しています。ビーチャムは次のように述べています。「私たちは部品上に作業指示を映し出し、センサーで組み立ての状況をモニターしながら、作業員に作業工程のフィードバックしています」

具体的には、Kinectおよびカメラが作業員の動きを追いかけ、組み立て指示情報が保存されているコンピューターにデータを送ります。コンピューターは、プロジェクターで作業台の上に製造手順を表示します。システムが得た視覚情報やセンサーからのフィードバックにより、作業員に次の手順を案内したり、誤った動作が検知されると通知したりします。ラボの訪問者は、特別な訓練を受けていなくてもCT(コンピューター断層撮影)で使われているコリメーター(視準器)をARの助けを借りながら組み立てることができます(以下のビデオをご参照ください)。

ビーチャムが物質世界にグラフィックやビデオを重ね合わせるARに初めて“出会った”のは10年ほど前、科学雑誌の中でのことでした。当時、その技術はまだ複雑かつ高価だったため、彼はそのアイデアをしまい込んでいました。そんな彼がARに再会したのが2年前、ニューヨーク州スケネクタディのGEグローバル・リサーチ(研究開発センター)でした。その頃、世界中の子どもたちがマイクロソフトのXboxとKinectに夢中になっていました。GEの若き研究者マッテオ・ベルッチ(現在はGEアディティブに所属)は月例の技術レビュー会議で、この技術とARへの応用をビーチャムのチームに紹介しました。ビーチャムは次のように述べています。「私たちは、それが作業を補助するとともに、センサーからの情報を収集して間違いを通知するシステムに応用できると直感しました。価格もかなり手頃になっていたので、その場で1台注文してしまうところでした」

ウォキショーのラボに現在設置されているシステムは、デトロイト郊外の産業用ARツールのメーカー、ライト・ガイド・システムズのものです。当初、このシステムは「ミスが許されないクリティカルな手順を確実に実施する」作業員を補助することに重点が置かれていました(ビーチャム)。彼のチームでは適用範囲の拡大にすでに着手しており、顔認証技術、コラボレーション・ロボット(コボット)、Predix(GEがインダストリアル・インターネット向けに開発したソフトウェアプラットフォーム)とも連携させています。

ビーチャムは次のように述べています。顔認証により、特定のワークステーションで働く作業員が必要なトレーニングを受けているかどうか、マネージャーが把握できるようになります。さらに、社員がさまざまなGEのITシステムに自動的にサインインし、業務開始や休憩後の再開を自動化することが可能になります。ビーチャムはまた、次のように述べています。「GEヘルスケアだけを見ても、システムへのログインに年間約10万時間が費やされています。このシステムは、時間とコストの節約に貢献します。」

ARシステムをリシンク・ロボティクスのバクスターやソーヤーのようなコボットに進化させることにより、ウォキショーのチームはそのシステムの対象範囲を「4D業務 ー 汚い(Dirty)、危険な(Dangerous)、難しい(Difficult)、つまらない(Dull)仕事」を含むさまざまなタスクに拡大できるとビーチャムは述べています。「たとえば、ある作業員が組み立て作業を行っているとします。コボットはその作業を途中から引き継ぎ、複雑なパターンで接着剤を塗布します。それが終わると、人間が作業に戻って、次の手順に進むのです。」

ARシステムをリシンク・ロボティクスのソーヤーのようなコボットに進化させることにより、ウォキショーのチームはそのシステムの対象範囲を「4D業務―汚い(Dirty)、危険な(Dangerous)、難しい(Difficult)、つまらない(Dull)仕事」を含むさまざまなタスクに拡大できるとビーチャムは述べている。ウォキショーにあるGEヘルスケアのオートメーション・センター・オブ・エクセレンス(中核研究拠点)を率いるグレッグ・ハインツは、作業員が自分の手でソーヤーを動かすことにより簡単にプログラムできると述べている。(写真:Rethink Robotics)

ARシステムの応用範囲はこれだけにとどまりません。ビーチャムのチームは、ARの画像情報をデータベースに蓄積し、Predix上で稼働するアプリを使って解析してインサイト(気づき)を得ることを計画しています。ビーチャムは次のように述べています。「ARの活用が進めば、より多くのデータを作業工程の中から収集できるようになります。ARシステムは作動中に画像を撮影します。これらの画像を解析すれば、工程の最適化方法が見つかるばかりでなく、他の方法では得ることのできない、生産に関する有益な情報を得ることも可能です。」

ARは、デジタル技術を活用した「ブリリアント・ファクトリー」のビジョンを実現するためにGEが適用するさまざまなツールの1つです。 GEは、3Dプリント、ビッグデータ、ロボティクス、デジタルを活用したリーン生産方式、その他の先進技術の工場への導入に備え、作業員の訓練計画を発表しています。

しかしながら、AR効果はすでに出始めています。エコノミストのマルコ・アンヌンツィアータ氏およびアップスキルのエグゼクティブ・チェアマンであるマギッド・エイブラハム氏は、雑誌ハーバード・ビジネス・レビューで次のように述べています。「(米航空宇宙機器製造メーカーボーイング社の調査では)AR技術により、ワイヤリングハーネスの組み立ての生産性が25%改善。 また最近、GEヘルスケアにおいて、倉庫作業員が新たなピッキングリストをARで受け取ることで、従来の紙ベースの作業方法に比べ、作業が46%も早く完了しました。GEを含む複数の企業における事例で、生産性が平均32%向上しています。」

これがARにより実現する世界です。ラボのARセクションに装備された顔認証システムを見るビーチャム。顔認証により、特定のワークステーションで働く作業員が必要なトレーニングを受けているかどうかをマネージャーが把握できるようになる。(写真:GE Reports)

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