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GE Digitalのソリューション・アーキテクトが語る(前編)ーー「日本とIoT」

今月GEが開催した「GE Digital Day 2016」には想像を超える参加応募があり、産業界におけるIoTへの意識の高まりを目の当たりにしました。いよいよ日本でも本格的なIoT活用が始まります。

業務効率化への意識が高い日本にとって、IoTは非常に親和性の高い技術。とはいえ、欧米に比べるとその動きが早いとは決して言えません。日本の企業や組織がIoT技術を活用する際の優位性や弱点はどういったものなのか?今回から2回にわたり、GEデジタルのソリューション・アーキテクトで、日本の文化もよく知るラジェーンドラ・マヨランの視点をご紹介します。

個別最適はIoTプロジェクトの落とし穴!?
「よく、機械の故障予測をしたい、という現場の管理部門からのご相談をお受けします。一見、課題が明確なようですが、それが本質的な問題とずれていると、往々にしてプロジェクトはうまくいかないんです」と、マヨランは言います。

ラジェーンドラ・マヨラン|GEデジタル ソリューション・アーキテクト
エンジニアとしてGEの医療診断機器の新製品開発に従事したのち、
2015年よりPREDIXをベースとしたインダストリアル・インターネット関連の事業開発を担当。
東京大学 工学系研究科卒(精密機械工学専攻)

GEデジタルに寄せられるご相談にも、トップダウンのケースと現場部門からのボトムアップ、両方があります。発端がいずれであれ、成功の鍵は、全体最適を図れる体制を作って進めること。「設備管理部門にとって機械保全は重要なミッションですよね。IoT導入で故障発生を的確に予測したいと考えるのは当然です。しかし “機械が古くてデータが取れない、そのためにセンサーを新たに取り付けるか、いや、コストがかかりすぎてROIが成立しないぞ・・・”と。意気込みはあったのに、結果、頓挫するということが起こってしまいます。企業にとって本質的な課題は、たとえば、サプライチェーン全体をいかに効率化して競争力を高めるか、といったことのはずです」とマヨラン。「仮に機械故障が発生しても部門間連携で納期に影響しない仕組みづくりや、総合して見たコストダウンに有効なポイントを見つけて取り組むことが重要です。個別最適にこだわるよりも全体最適を図るほうが、不測の事態にも耐えうる、より強い生産システムを作り上げることにつながります」

部門に特化した課題意識で進めるとうまくいかないーーその背景にはサイロ状の組織体制やシステムがあります。「開発、製造、販売、サービスなど各部門間の前後関係が見えにくい。製造部門では製品・ライン・オペレーションごと、といった具合にさらに細分化しています。かつてはそれが最適解だったのでしょうが、今は次のステージへとシフトすべき時です」とマヨランは言います。

経営者視点でアウトカム(ビジネスの成果)を
とはいえ、部門発案で全社システムを変更するにはあまりに多くのハードルが。やはり、CxOレベルのトップ・マネジメントが強い意志でプロジェクトを推進し、各部門も経営視点に立って何をすべきかを考えるトップダウン型のアプローチが必要です。目指すゴールは、あくまでもアウトカム=ビジネスの成果であるはずです。

「製造部門が“これまで2分かかった工程を30秒に短縮”というチャレンジに
血眼になって挑み、徹夜を重ねてやっと達成!でも、出来上がった商品は
倉庫で2日眠っていたりするわけです。これってナンセンスですよね」(マヨラン)

ではどうすれば、サイロ状の組織で部門間連携を実現できるのか。その鍵は、データ同士をつなぐこと、すなわちデジタル・スレッド(脈絡)を通すことにあります。各部門に蓄積されるデータを繋ぐメリットが理解されれば、部門ごとのROIではなく、事業プロセス全体をデジタル化することの価値が評価されるようになるでしょう。インダストリアル・インターネットの本質はここにあります。「PREDIXのようなクラウドベースのプラットフォームを活用すれば、プロプライエタリなシステム間の差異をプラットフォームが吸収してくれます(下図)。サイロ型組織は簡単に崩せないにしても、データ連携が図られることで、顧客に提供できるバリューは格段に優れたものになります」(マヨラン)。

データを部門間で連携させることで全体最適を実現する、デジタル・スレッド。
システムごとの差異はクラウドベースのPREDIXプラットフォームが吸収する。

日本にこそ向いている、インダストリアル・インターネット
「海外と比べて、日本にはちょっと変わったところがあります。つまり、カイゼンの度合いは極めて高いのに、IoTの進展度はそれほどでもない。あまりに『カイゼン』が進んだために、それでなんとかなってきたということなのかも知れません」とマヨランは言います。システムが未成熟な分を、現場の個々人の努力でカバーしているという実態も否めません。

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でも、これは日本のIoT活用における潜在的な可能性を示している、とマヨランは言います。「日本人は他者や全体を尊重する精神性がありますよね。だからこそ、これほどのカイゼンを実践してきた。他の多くの国で、日本人のような精神性はぜったい真似できません。IoT技術に依存しなければどうにもならないわけです。そんな日本が、システム活用を掛け合せたら?日本がIoTを賢く活用して、方法論としてのジャパン・クオリティを抽象化(データ化)してIoT技術としてに置き換えることができたら、その競争力は飛躍的に高まりますよ」。実際、マヨランは日々さまざまな企業の方と接するなかで、日本の現場の方々が経営視点や高い課題意識を持っていることを痛感しており、この基盤が、IoTの意義ある活用と成果に繋がると信じています。

産産業用IoTの事業に乗り出したGEの強みのひとつは、自らがメーカーとして幅広い分野の経験を蓄積しており、その共通項を取り出してソリューションを横展開できること。同様に日本も、ものづくり先進国としての蓄積した優れた技術や経験則をデータ化、フレームワーク化して相互活用が可能なプラットフォーム上に展開し、企業の枠組みを越えて知を共有したり、知のプロバイダーとなって世界に打って出ることも可能です。

「“ガラパゴス”などと揶揄されたこともありますが、日本には、芸術的というべきレベルの技術も数多くある。その中には、世界中のユーザーが欲しがっている機能もたくさんあります。これらを共通利用できるかたちにして、ソフトウェア・プラットフォーム上で提供したら、それは世界から求められる日本の強みにもなります」。

インダストリアル・インターネットによってビジネスの全体最適を図り、アウトカムを追求する。その先に、日本の新たなプレイエリアがあるかもしれません。

明日の投稿では、同じくマヨランの視点から「IoT活用、成功へのステップ」をご紹介します。

7月6日に東京で開催した「GE Digital Day 2016」
パネルディスカッションの採録記事をNewsPicks上で公開中