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GE Digitalのソリューション・アーキテクトが語る(後編)ーー「IoT活用、成功へのステップ」

前回は「日本とIoT」について記し、日本のIoT活用の可能性をご紹介しました。ではどうすれば、IoT関連プロジェクトを成功に導けるのか。引き続き、GEデジタルのソリューション・アーキテクト、ラジェーンドラ・マヨランの視点をご紹介します。

「WHY」から始める
IoTプロジェクトがなかなか進まない、うまくいかない、という事態があるとすれば、多くのケースでその原因は「Howにばかり注目して、その前提となるWhatやWhyの検討が十分になされていないこと」にある、とマヨランは指摘します。

ビジネス本来の目的があり(Why)、それを実現するためには何を変えなくてはならないか(What)が定義されて初めて、どんなデータを集め、分析するか(How)が決定されるーーというのがあるべき姿。各部門が部門単位で最適化を図ろうとすると、Howについての議論に終始するという結果になりがちです。しかし、ビジネスそのものをどう変革するかというWhy/Whatから出発すれば、違ったアプローチが見えてきます。たとえば、石油パイプラインの圧力を調節するバルブを製造・販売するあるメーカーは、製品(バルブ)販売から“圧力”を売るビジネス・モデルへと変革しました。顧客が求めているのは安定した圧力であり、バルブそのものではないと気づいたからです。

「単純にセンサーを取り付けてデータをとるだけではあまり付加価値になりません。メーカーが、自分たちの売ったものがちゃんと動くようにするのは当たり前、という感覚が顧客側にあるからです。インダストリアル・インターネットの要は、モノからサービスへの転換を図ること。センサーをどう取り付けるかではなく、どうしたらビジネスの価値を高められるかが先になくてはなりません。それがあれば、何のデータを集め、どう分析するかは自ずと決まってきます」。

ラジェーンドラ・マヨラン|GEデジタル ソリューション・アーキテクト
エンジニアとしてGEの医療診断機器の新製品開発に従事したのち、
2015年よりPREDIXをベースとしたインダストリアル・インターネット関連の事業開発を担当。
東京大学 工学系研究科卒(精密機械工学専攻)

「かつてソフトウェア開発は、時間と工数を積み上げてコストを見積もるやり方でした。いまでは、マイクロサービスやクラウドの活用により、ずっと低価格で、試行錯誤を繰り返しながら開発する(アジャイル開発)ことができます」。実際GEでは、米国全土の90,000カ所にものぼるパイプライン監視用のアプリケーションをわずか8カ月で構築しました。担当者はコンセプト構築段階ではたったの4人、最終段階でも15人というコンパクトさでした。このように、Howの占める割合は相対的に小さくなっており、その分のリソースをWhy/Whatに振り向けられるような環境が整い始めています。

カギを握るステップは「Pain Point Deep Dive」
「産業用IoTの戦略活用を成功させる鍵は、『経営視点に立つ』ということ以外にもいくつかあります。なかでも重要なのは、私たちが 『Pain Point Deep Dive』 と呼んでいるステップです(下図)」。

Pain Point Deep Diveでは、GEデジタルのチームは、その顧客企業が困っていること、解決したいと考えている課題(=Pain Point)を浮き彫りにするために、顧客側の担当チームの方々にさまざまな角度から質問を投げかけます。その回答の中から傾向や隠された問題を推察し、さらに深掘りをするという作業を繰り返して、本当に解決すべきテーマを発見します。「この過程で、気づかなかった課題、あるいは気づいてはいたけれど自部門だけでは解決できない・・・と”もやもや”していたことが、たとえば『部門間のデータをつなぐことで解決できるね』という発見に繋がったりするわけです。方向性が見えてくると、何とかしたいという強い意欲が生まれるものですよね。すると、そのディスカッションに参加したメンバーが、自社内でチェンジ・エージェントとなってプロジェクトを主体的にドライブするようになり、一気に進み始めます」とマヨラン。Pain Point Deep Diveは、プロジェクトの成否を握る非常に重要なステップです。さらに、この段階で見出されたテーマを顧客企業内で共有するWork Outセッションを経て、全社を巻き込んだビジネス革新プロセスへと昇華していきます。部門と部門をつなぐ1本の線。これを見つけることが、顧客企業だけでなく、同時にGEデジタルにとってもチャレンジです。

「そうは言っても、すべてを完璧にデザインしないとスタートできないわけではありません。競争のスピードが増した今、ビジネスは時間との闘いです。試行錯誤をいとわず、プロトタイプを素早くつくって、うまくいったらスケール(拡大)する。ソフトウェア業界やインターネット業界で近年注目されている“マイクロサービス”の考え方は、インダストリアル・インターネットにおいても有効です」。

産業用IoTを戦略活用するうえでのスキルセット
企業が産業用IoTを活用するための中心的な役割は、全社に対して旗を振る立場にある人、たとえばチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)のようなマネジメント・レベルが持つべきものです。こうした立場の人がアウトカムベース、つまり事業成果起点で発想し、各部門に動機付けすることが、プロジェクトの推進力になります。もうひとつ重要なのは、部門と部門をつなぐ”線”を発見し、何と何をつなぐのかを正確に描けるかどうか。それには、ITとOT(operation technology)をつなぐ専門的な知見と経験を持つ、外部のソリューション・アーキテクトの力が有効です。GEデジタルはこうした専門的なスキルセットを持つチームを各国に置き、インダストリアル・インターネットによる顧客企業のビジネス革新に貢献すべく、活動しています。

GEデジタル・チームが提供するスキルセット

  • デザイン・シンキング・ファシリテーター(エクスペリエンス設計、OTワークフローの知見)
  • データ・サイエンティスト(データ分析)
  • ソリューション・アーキテクト(課題発掘能力、ITとOTの融合したシステム構築)
  • プロダクト・マネージャー(プロジェクトのまとめ役・管理)
  • OTセキュリティ・スペシャリスト(OTに特化したセキュリティのコンサルティング)


GEが開発した産業用クラウドプラットフォーム「PREDIX」の原点は、GE自身が、自社の事業革新と競争力強化を必要としていたことでした。GEの内部を見回すと、機器を制御するためのソフトウェアやアルゴリズム、知見は無数に蓄積されていました。たとえば発電用タービンや航空機エンジンなど、回転体の制御には、互いの知見やアルゴリズムを活用することができるはず。こうしたノウハウをマイクロサービス化して共通利用することで、より素早く価値を高め、差別化を図ることができることに気付きました。それら必要な機能を集約したソフトウェア・プラットホームとしてPREDIXが誕生し、PREDIXがもつ豊富な産業別フレームワークのもとになっています。

マヨランはこう話しています。「重要なのは、ソフトウェアがオペレーションを最適化するのではないということ。まずオペレーションをどう革新するかが肝要であって、ソフトウェアはそれを助けるだけです。革新の方向性が決まれば、PREDIXが蓄え続けるアプリケーションやマクロサービス、精度を増す解析力で、各企業の革新の実践を推し進める手助けができます。正しいステップを踏めば、爽快感や達成感を共有できますよ」

7月6日に東京で開催した「GE Digital Day 2016」
パネルディスカッションの採録記事をNewsPicksで公開中