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SF映画が現実に?ついに到来した「パワードスーツ」の時代

50年前、デトロイトで開催されたAutomotive Engineering Congress(自動車技術協議会)で発表された論文は、まるで現代のロボット技術を見通すかのような革新的なものでした。その論文を書いたのは、GEのエンジニアでロボット工学のパイオニアでもあるラルフ・モッシャー。「人間の反射制御を直接メカニズムに伝達し、人間の動作の延長のような自然な反応を実現する」という記述など、今日のパワードスーツの登場を予感させるものだったのです。

自身が開発したパワードスーツを装着したラルフ・モッシャー
この開発の目的は、航空機向け原子力推進システムの放射性部品をメンテナンスするためだった

「人間とマシンを密接な共生関係のもとに組み合わせ、一体化したシステムとして機能させる。人間にとっては過酷な環境でも、機械なら影響を受けることはない」。このコンセプトを実現するべく、モッシャーはハーディマン(Hardiman)と名付けた、1,500ポンド(約680kg)の物体を持ち上げられるパワフルなエクソスケルトン(外骨格型パワードスーツ)の開発に成功しました。しかしそれはあくまで未来のビジョンと見なされ、実用化には至りませんでした。

そして今日、GEは、過酷な環境下で動作する俊敏なロボットの開発に、再び目を向けています。GEベンチャーズは昨年、Sarcos Robotics社に投資。同社の共同創業者兼社長のフレイザー・スミス氏は、「人間を代替するのではなく、人間の能力を拡張するロボット工学分野に注力している」と言います。

上と下のGIF画像:Sarcos Robotics社のヘビ型ロボット、Guardian S
全部に配置されたセンサーにより、あらゆる種類の障害物に対応する

最上部の画像:映画『アイアンマン』を思わせる、Sarcos Robotics社のパワードスーツ、XOS 2
(GIF提供:Sarcos Robotics社)

同社が制作するロボットはいずれも、組み立てライン用ロボットのように環境や動作内容が一定のものではありません。同社会長兼CEOのベン・ウォルフ氏によると、予測不能またはきちんと体系化されていない環境でも機能するフレキシビリティを備えたロボットであるということ。モッシャーのビジョンを思わせるような話ですが、「微妙な運動制御が可能になれば、人間が重い物を持ち上げるときに腕を使うのとまったく同じ要領で、物体を操ることができるようになる」とウォルフ氏は言います。

こうしたマシンのひとつが、同社の遠隔操作式ヘビ型ロボット、Guardian S。このロボットは、石油貯蔵タンクのスチームパイプの中や原子力発電所の設備など、人間が入れない場所を這って進み、点検作業を行うことができます。全長4.25フィート(約1.3m)、重さ約10ポンド(約4.5kg)の電池駆動式のこのロボットは、タンクの垂直面をよじ登り、カメラとオーディオセンサーや赤外線センサーで状況を捉え、整備員に無線送信します。このロボットはすでに市場に投入されており、GEオイル&ガスも、このヘビ型ロボットの導入を検討しています。

Sarcos Robotics社の製品ポートフォリオには、もっと大型のマシンもあります。例えば、Guardian GTは移動プラットフォーム上に設置されたロボットで、2本のアームを備え、それぞれ500ポンド(約227kg)の物体を持ち上げることができます。さらに同社は、200ポンド(約91kg)の物体を、ユーザーが長時間、繰り返し持ち上げられるようにするパワードスーツも開発中です。

Guardian GT
2本のアームは、それぞれ500ポンド(約227kg)もの物体を持ち上げることができる
(画像提供:Sarcos Robotics社)

Sarcos Robotics社の研究に終わりはありません。同社は現在、機械学習機能を搭載したロボットも開発中。階段を認識して上るというような、最も基本的な動作をロボット自身で行えるよう、人間がロボットを教育することにチャンスを見いだしているとのこと。ロボット開発歴35年のスミス氏は、モッシャーが開発したハーディマンを知ったときからずっと、このマシンに心を奪われていると言います。「あれから物事は明らかに進化しましたが、いまでも偉大なシステムです」。そして現在、少年の心そのままに、独自のマシンの開発に日々取り組んでいます。

※Sarcos Robotics社:300件を超える特許を持つ同社は、1980年代にユタ大学のスピンオフ企業として創業。設立以来、国防高等研究計画局(DARPA)の資金援助を最も多く受けている企業のひとつであり、GE以外にもマイクロソフト社、シュルンベルジェ社、キャタピラー社などが同社に投資している。