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荒れる海で船を留まらせる技術、ダイナミック・ポジショニング

決して流されてはいけないドリルシップ(掘削船)を留まらせるには高度な技術力を要します。
そこでGEは、船に現在地を教えて定位置を維持する機能をもつ「ダイナミック・ポジショニング(DP)」システムを提供しています。
詳しいDPシステムの機能をご覧ください 。

じつは船にとっては難しい「ただ同じ場所にいること」
ただ同じ場所にじっとしていること・・・陸上なら、それほど難しいことではありませんよね。ところが海の上となると、そう簡単ではありません。強い波、潮の流れ、はたまた強風にあおられて、放っておくと船はどんどん流されていきます。

「錨(いかり)を使えば良いのでは?」とお思いになるかもしれませんが、大海では錨さえ流されてしまいます。なかでも、決して流されるわけにはいかないのが、石油やガスを掘る掘削船。でも、多くの掘削船は海岸から100マイル(約160km)も離れた場所で強風に耐えつつ、波の荒い外洋の特定地点に数か月もとどまって操業しなければなりません。

「掘削船の位置がずれて油井から離れてしまうと、元に戻すのに非常にコストがかかりますし、極めて危険でもあります」こう説明するのは、GEパワーコンバージョンの海洋事業部門のポール・イングリッシュ。彼が率いるこの事業部門の使命は、石油やガスの掘削を行うエネルギー関連企業が、自社の掘削船を、たとえ海が荒れても半径4.5メートルの範囲内に維持できるようにするための航行システムと電気系統を開発することです。

掘削船の複数のスラスターとプロペラ

掘削船は、1か所に留まり続けるために複数のスラスター(制御装置)やプロペラを使用します。
それらは垂直と水平の両方向の軸で回転します。
写真:CellsDeDells提供

掘削船は、ひとたびポジションがずれてしまうとスラスターやプロペラをフル稼働させて船体を元の位置に戻します。それを掘削期間中ずっと、頻繁に行う必要がありました。そこで、GEは、掘削船に現在地を教えて定位置を維持する機能をもつ「ダイナミック・ポジショニング(DP)」と呼ぶソフトウェアを提供しています。これはGPSなどのナビゲーションシステム、超音波ビーコン、レーダーなどを駆使してナビゲーションデータに基づいて位置検知・位置制御・推進システム制御を一括して行うものです。このDPシステムは、船の頭脳となってこれらのデータを処理し、船体に配置された多数のスラスターやプロペラに指示を出し、潮の流れや波の大きさ、風の影響を考慮して船を定位置に維持します。

DPシステムにもっと自由を
最適なDPシステムの設計には特殊な知識や技術が求められます。このため、英国の施設に集結した専門技能をもつエンジニアが専用のコンピュータとソフトウェアを駆使して、船体制御をおこなうスラスターやプロペラの適切な出力量を計算し、掘削船設計に際しての仕様策定をサポートしていました。そうしたエンジニアのひとり、ジョナサン・チャイルズは今から約2年半前、ポールにあるチャレンジングな提案をします。それは 『世界中のお客さまが自らノートパソコンで、DPシステムの設計をおこなうため、船体制御のシミュレーションができるようにソフトウェアを改良する』というものでした。

そうして幾多の専門技能が求められていた計算を劇的に簡便化し、約2年をかけて完成したのが「ベッセル・パフォーマンス・アナライザー(VesPA)」。ジョナサンが開発したこのソフトウェア・プログラムのおかげで、これまでは1度に16時間もかかっていた船位調整計算が、わずか1時間で、しかもノートパソコンひとつで行えることに。GE製の電機設計モデルだけでなく、他社製のスラスターや推進装置のデータも結び付けて、その船位調整にかかる運用コストまで予測する機能を備えています。

Vessel Performance Analyzer (VesPA)

このシステムにより、GEのエンジニアも複数の装置の比較や電気的構成の情報をリアルタイムで提供し、お客さまにより迅速にDPシステム設計に必要な仕様の選択肢を提示できるようになりました。「たとえばお客さまが北海上で、潮流3ノット・風速30ノットの条件で操業しようとする場合、私たちは1時間以内に適切な推進力と電圧の組み合わせをご提案できます」と、ジョナサンは言います。

お客さまの声を聞きながら、進化するソフトウェアとして
大ベストセラーになった『リーン・スタートアップ』の著者、エリック・リース氏の言葉を借りれば、VesPAは「実用最小限」の製品です。同氏の監修のもと、大企業でありながらもスタートアップ企業に負けない勢いでイノベーションを生みだせる体質になるべく導き出したGE独自の手法「FastWorks」のとおり、まずは最小限の機能でお客さまへ提供し、お客さまからのフィードバックを得て最適化していく、という考えに基づいています。ジョナサンはすでに「骨格に肉付けする」段階に進んでおり、発生電圧、スイッチボード、特定の推進装置を提案する機能の開発に取り組んでいます。