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HondaJet 、夢を分かち合った企業間コラボレーション

小型ジェット機、HondaJetがついに日本へ。
HondaJetには、GEとホンダが共同開発した「HF120ターボファンエンジン」が搭載されています。
企業間コラボレーションを実現したイノベーターたちがGEとホンダの協業について語ります 。

今月ついに、ホンダが開発した小型ビジネスジェット機、HondaJetが日本に。 「いつかは空へ」――これは、故本田宗一郎氏のホンダ創業当時からの夢でした。二輪、四輪、二足歩行ロボット・・・数々の伝説を生んだ企業は、創業から50年以上を経て、ついにその夢を現実のものにしました。

HondaJetが日本初飛来を果たした4月23日、本田技研工業の伊東孝紳社長は「性能と快適性において小型ビジネスジェットに新しいスタンダードを切り拓く、ホンダの自信作」と胸を張りました。

ホンダは1986年に埼玉県和光市に基礎技術研究センターを発足。この年、同社は密かに小型航空機と航空機用エンジンの研究を始めています。関係者以外には一切公開されないまま、その後約10年間にエンジンと機体の研究を行い、要素技術を確立します。その後1997年に機体開発のプロジェクトをスタート。クルマ移動のような感覚で空を移動する時代になることを見越し、開発をリードしてきたのはホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長です。4月23日に開催された記者会見で藤野社長は日本の方々に披露できることを「感無量」と語り、「性能、燃費、快適性を同時に兼ね備えた、世界でもっとも進んだ小型ビジネスジェットです」とHondaJetを紹介しました。

2015年4月23日 記者会見レポート(撮影:日本GE)

ホンダエアクラフト社長、藤野道格氏

HondaJet設計者でホンダエアクラフトカンパニー社長、藤野道格氏
(写真提供:本田技研工業)

“ホンダがやるからには、今までになかった飛行機を“ 経営層から現場の開発者まで、ホンダのメンバーはこのマインドを共有していました。まったく新しい飛行機を創るのでなければ、ホンダが参入する意味がない。エンジンが胴体ではなく主翼上面に配置されたユニークなデザインはその証。藤野道格社長の手によるこのデザインは、高速飛行時の抵抗を抑え、かつ胴体内のエンジン支柱を不要にして広いキャビンを実現し、居住性、燃費、速度を同時に最大化することに成功しています。そして、空気抵抗を計算し尽くして導き出したノーズの形状は『ハワイの免税店で目にした高級靴ブランドのハイヒールをヒントに』した。この機体と、ホンダとGEが共同開発した、最大直径53.8センチときわめてコンパクトでありながら2,095ポンドもの推力を実現するエンジン、「HF120」との組み合わせで、HondaJetは同クラス他機と較べ、驚くほどの高い性能を実現しています。

時速778kmのHondaJet

巡航速度 同クラス他機を圧倒する時速778km(=420nm)
燃料消費 同クラス他機と比較して17%低燃費(約1,100km=約600nm飛行時)
巡航高度 同クラス他機最高41,000ftに対し43,000ft
(写真提供:本田技研工業)

HondaJetの客室(キャビン)内

同クラス他機と比較して18%ほど広いキャビン
完全なプライバシーを確保した化粧室と、クラス最大の荷物室も備えている
(写真提供:本田技研工業)

現在、本田技術研究所の航空機エンジンR&Dセンター担当執行役員を務める輪嶋善彦氏は、プロジェクトが開始して数年後にチームに加わり、以来ずっと航空機エンジン開発に携わってきた一人。「当初のメンバーは、平均でも20代後半という若手。航空機エンジン開発の事実は全く公開されていなかったこともあり、部品を買うのも難しくて、基本的にすべて内製していたくらいです」と振り返ります。「どこかの真似をするんじゃなく自分たちなりに考えて開発しよう、という方針もあり、特に最初の頃は2年に1つのペースでエンジンを作ってましたよ」と言います。同じくエンジン開発に携わってきた主任研究員の河原田 聡氏も口を揃えます。「元がオートバイ、自動車のメーカーですから。ある程度考えたらまず一度作ってみて、とにかく実際にエンジンを回してみようと。すると、設計図や机上の理論だけでは分からないことが見えてくるんです。それを改良につなげる、というサイクルを繰り返しました」

本田技術研究所 輪嶋善彦氏(左)と河原田聡氏(右)

本田技術研究所 輪嶋善彦氏(左)と河原田聡氏(右)
(撮影:日本GE)

1/1スケールで空力試験を行える設備

1/1スケールで空力試験を行える設備は20年以上の歴史を持つ(和光市)
(撮影:日本GE)

その結果、早くも2003年にはHondaJetのプロトタイプに自社開発エンジンを搭載したフルスケールの実証機での初飛行に成功。その翌年にはGEとホンダの折半出資による合弁会社 GEホンダ・エアロ・エンジンズを設立し、FAA(米連邦航空局)によるエンジン型式証明取得に向けた協業を始めます。小型エンジン開発はGEにとって1960年代以来でしたが、GEも小型ジェット機市場の将来性を確信していました。130以上もの航空機エンジンの型式証明を獲得してきたGEのノウハウと、二輪から汎用型まで世界最多のエンジンメーカーであるホンダの協業。異なる得意技術を持ち寄ったこの合弁会社は「ベストマリッジ」と呼ばれ、ホンダが独自に開発した「HF118 エンジン」をベースに共同で「HF120 ターボファン・エンジン」を開発しました。そして、05年米国の航空ショーで絶賛を浴びたHondaJetは、2006年に正式事業化へとこぎ着けます。

HF120ターボファン・エンジン

HF120ターボファン・エンジンはシンプルな構造ゆえにオーバーホール間隔が長い
同クラスエンジンでは最長3,500時間であるのに対し、HF120は5,000時間以上
(写真:GE Aviation 米ピーブルズの試験場にて撮影)

合弁設立を検討するために来日した、GEの航空機エンジン事業部門の専門家たちが「信じられない!」と驚愕したのが、ホンダが和光市の研究センターに構える試験設備。輪嶋氏は「基礎研究時代から特に力を入れてきたのが空力設計。 ここが航空機の肝だ、と1/1スケールのテスト設備を作って経験を重ねてきたことが、いま実際に強みとして生きているように思います」と語ります。また、自動車メーカーとして培ってきた素材技術や対衝撃強度の解析技術も生かされています。たとえば、カーボンを用いた短繊維複合材を航空機エンジンに採用したのは世界初で、エンジンの軽量化に成功しています。一方でGEも、高圧タービンや騒音を抑えるミキサーなどの得意技術をHF120エンジンに投入し、いっそうの性能向上に貢献しています。

GEアビエーションでホンダとの協業に関わるブラッド・モティエはこう語っています。 「私たちはホンダ社から多くを学びました。ホンダ独自のエンジン設計に関する考え方や方法は私たちに新鮮な視点を与えてくれました。彼らの徹底した品質へのこだわりやモノづくりの緻密さと遂行能力は、模範にすべきところが数多くあります。お互いモビリティ領域で事業をしてきた2社にとって、安全性と信頼性に対する絶対的なコミットメントは共通でした。それから、飛行機のエンジンを創る、という仕事への情熱もね。」

HF120ターボファン・エンジン

GEホンダ・エアロ・エンジンズ製 HF120ターボファン・エンジン 
(写真:GE Aviation、米マサチューセッツ州 リンのGE Aviationの工場にて撮影)

「ホンダには、まずやりたい“夢”があって、とにかくそれを実現していこう、という雰囲気があるんですよね」・・・河原田氏が口にした言葉には、深い説得力があります。GEとホンダが合弁会社設立を検討していたとき、両者がもっとも重視し話し合いに時間をかけたのは、志の持ち方や価値観を共有できるかどうかでした。――飛行機や航空機エンジンをつくる、ということは簡単なことではない。夢のあるモノを作るためには、夢を共有できることが必要だったのです。

“The Power of Dream”を掲げるホンダと、“Imagination at Work”を謳うGE。 そして「いつかは空へ」という故本田宗一郎氏が描いた夢を受け継いだホンダマンたち。 大勢のイノベーターの想いを詰め込んで生まれたHondaJetは、利用者や社会に、次なる夢をもたらしてくれるはずです。