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金属3Dプリンティングでガスタービンが新たな境地に

2012年、エネルギー部門に所属するアンドリュー・パスモアは、ある機器の能力を限界まで引き出したと感じていました。彼のエンジニアチームは、高出力のガスタービンをアップグレードしたばかりで、欧州の約200,000世帯に電気を供給できるほどになっていました。7年間で2度目のアップグレードでしたが、チームはなんとかして更に12メガワット(MW)の出力を向上させ、発電容量を180MWまでに引き上げました。また、機器のメンテナンス間隔を48,000時間まで延ばすことで、約5年半の間、運転を停止することなく発電できるようになりました。スイスのバーデンにいるシニアプロダクトマネージャのパスモアは、達成感に浸っていたことを覚えています。「しかし同時に、『もうここまでだ。このタービンの能力は限界に達した』と思った」と彼は述べています。

その理由は明確で、GEのエンジニア達は、電力業界で「GT13E2」として知られ業界最大級の発電量を誇っていたこのガスタービンから、更なる発電効率と記録的な信頼性の向上を既に実現していたのです。このタービンは(現在もそうですが)、同クラスでは世界一信頼できる高効率のガスタービンでした。しかし、エンジニア達にとってそれは始まりに過ぎず、「アディティブ製造(金属3Dプリンティング)技術の導入と共に、すべてが変わった」とパスモアは言います。

GEパワーのアドバンスト・マニュファクチャリング・ワークス・チームは現在スイスにおいて、タービンの性能をさらに高めるハイテク部品を金属3Dプリンティングで製造しています。使用する3Dプリンタは、レーザーで薄い金属粉体の層(この場合、ニッケル基超合金)を溶融しながら部品を作ります。プリンタは非常に高い精度で動作しており、タービン部品が目の前で少しずつ形成されていく様子をパスモアは我を忘れて見ていました。「まるで魔法にかけられたようだった」と彼は言います。

上写真:金属3Dプリントにより製造されたタービン第1段用熱シールド。GEのパスモアは、タービン部品が目の前で少しずつ形成されていく様子を我を忘れて見ており、「魔法にかけられたようだった」と述べています。画像出典:GEパワー
最上部:ベルリンのバッテンフォール発電所。画像出典:バッテンフォール

GEのエンジニア達は、3Dプリントされたばかりの部品をタービンに取り付けます。そして、ここから魔法にかかるのです。これらの部品によって、タービンの発電効率がさらに2.1%向上し、48,000時間という非常に長い使用期間も維持されます。「タービンとしては驚くべき数字だ」とパスモアは言います。

また、アップグレード状況にもよりますが、3Dプリント部品によってガスタービンの発電容量が最大21MW増加します。GEの試算によると、今回の新たなアップグレード(「MXL2 with Additively Manufactured Performance (AMP)」と呼んでいます)により、発電業者は年間2百万ドルの燃料費を削減することが可能です。また、年間に最大3百万ドルの追加収益の可能性もあると言います。

「従来型の金属鋳造で作った部品では同じ結果は得られない」とパスモアは言います。3Dプリンティングによって、従来の製造方法である鋳造では実現不可能な複雑な構造を作ることができるのです。

例えばタービンのステータの熱シールドというものがありますが、これは熱機関のケーシングを保護する文庫本サイズの金属体です。タービンの前部にある重要部品であり、使用時の最高温度は摂氏1,200度を超えます。鋳造した熱シールドは、大量の冷却空気を圧縮して供給することにより熱機関内の過酷な高温状況に耐えられる構造になっています。ただ、この空気を圧縮するために使用するエネルギーにより、タービンの発電効率が大きく低下するというデメリットがあります。

しかし3Dプリンティングを使用すれば、これまでにない先進的な内部通気路を有する熱シールドを作ることができます。そして、この冷却されたハイテク部品によって送り込む空気量が削減され、それに使われるエネルギーを節約できるのです。1台のタービン内に40枚の熱シールドが並ぶのを想像してみれば、発電効率が大きく向上することを実感できるでしょう。

拡張性と再現性も3Dプリンティングの魅力です。部品を1つずつ鋳造するのではなく、複数の部品を同時にプリント(一度に最大20個)できます。「一度に内部のシールド列全体を作っている」とパスモアは言います。

大規模な3Dプリント部品を熱機関に使用するのはこれが初めてではありません。例えば、GEのエンジニア達は世界最大のジェットエンジンであるGE9X用の流線型タービンブレードも3Dプリントで製造し、そのジェットエンジンは今年の3月に初飛行を行いました。しかし、3Dプリントした実物大の部品をガスタービンのアップグレードに直接使用したのは初めてです。

タービンは、電灯をともすための大規模発電機器という役割にとどまらず、世界中で大量のエネルギーを消費するアルミ溶解炉に動力を供給したり、寒い北欧・東欧の地で暖房用放熱器や湯沸かし器を維持する地域暖房網に熱を供給したりしています。パスモアの3Dプリント部品は、もうすぐドイツの首都の暖房ネットワークを維持するために利用されます。大手電力会社バッテンフォール社は、ベルリンのミッテ区の象徴的な地域暖房設備にあるタービンの発電容量を3Dプリント部品を利用することで21MW増大させる計画です。バッテンフォールではすでにこの3年間、3Dプリント製の試作部品をその熱機関内で稼働させています。

「これらの使用例がアディティブ製造技術の有用性を証明している。私たちは研究室の白衣を着た変わり者ではありません。これらは実用されている金属3Dプリント部品であり、大規模な産業機器のアップグレードに使用されてている」とパスモアは言います。

そして彼は一息つき、3Dプリンタが動作するのをスイスで初めて見たときのことを再び思い起こしました。「金属3Dプリンタから部品が出てくるのを見て感じました。『ああ、ついにこの時が来たか』と。」

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