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日本企業のイノベーションを巡る大きな矛盾とは?(前編)

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日本GEは、世界各国の経営者を対象にイノベーション戦略の動向を調査している『GEグローバル・イノベーション・バロメーター』より、日本にフォーカスを当てた分析結果を発表しました。4回目となる今回の調査は、世界26か国、3,209人のイノベーション戦略に直接的に関わる企業経営者層を対象に、電話インタビューで生の声を集めたもの。ここでは、昨年に続き本調査結果を解説していただいた一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授の見解を交え、その調査結果のポイントをご紹介します。前回と比較してイノベーション創出に対する肯定的な見方の高まりが見られたものの「日本企業は、イノベーションを巡る大きな矛盾を抱えていることが伺える」と米倉教授は言います。

組織による計画的プロセスか、個人の創造的活動か?

調査で浮かび上がった日本と世界の際立った違いのひとつは『イノベーションを成功させるためのプロセス』への考え方。下図のように、日本のエグゼクティブ達は『イノベーションは“クリエイティブな個人から自発的に生まれてくる』と考えていることが分かります。

「しかし一方で、イノベーションを成功裏に達成するために何が必要か?―という問いに対する日本の回答は『創造的で才能ある人材を集めること』や『創造的な行動と破壊的プロセスを奨励すること』という点でグローバル平均を15ポイントも下回っている。このように明確な戦略や方針がないばかりか矛盾が多い環境下では、イノベーションのための予算確保や知識活用は難しいはず」という米倉教授、調査解説ではこのほかにも多くの矛盾を指摘します。

日本のもうひとつの特異な点は『イノベーション担当部門は“リサーチセンター”のような特別専門組織にすべき』という考え方。『常設のビジネスラインの中に置くべき』と考える世界の傾向とは対照的な結果に(下図)。

米倉教授はこれについて「最大の理由は、日本の経営層は、イノベーションを、日常業務を通じて行なう改善・改良、あるいは新たなマーケティング・ブランディング活動、広範な企業提携などとは別物と考えていることだろう。何か新しい技術革新や、これまでになかったビジネスモデルの登場だけがイノベーションであると認識している可能性がある」と指摘します。「したがって、イノベーションは計画できるようなものでもないし、組織の安定にはなじまないものとなる。同じく、創造的な人材を社内に雇用することよりも、特別な組織を創り上げて、隔離した場所で限られた特異な人たちによって行うべきだと考えているのです」

日本の経済を牽引してきたのは、まぎれもなくイノベーション

米倉教授が強調するのは、これまで日本が生んできたイノベーションの実績と、それが経済成長を牽引してきた事実。最近発表された『戦後日本のイノベーション100選(公益社団法人発明協会)』を例に挙げ「マンガやアニメ、生産方式に至るまで、イノベーションとは本来非常に幅の広い概念。技術面もあれば、組織革新、マーケティング、ブランディングの要素もある。さらに、破壊的なものもあれば、日々の継続的な改善・改良から累積的に出現するものもある。たとえば、JALを再生させた稲森式アメーバ経営も立派なイノベーション手法なのです」と言います。

「イノベーションはシステマティックに起こすこともできる、ということを忘れてはならない。イノベーションは科学できないという考え方が、現在起こっている世界の重要な変化に対する無関心を引き起こしているならば、これは問題です」――米倉教授の言う“世界の重要な変化 “が意味するのは、ビッグデータやインダストリアル・インターネット/インターネット・オブ・シングス(IoT)が巻き起こす、歴史的転換点とも言うべき世界規模の変革。『歴史的転換点ともいうべき、新たな産業革命のただ中にいる』と認識していた日本の回答者がわずか32%、と非常に低かったことについて教授は「イノベーション戦略に関わる経営者がこの認識というのは、由々しき状況」と警鐘を鳴らします。

こうした中で、いかにイノベーションの実をあげて行くことができるのか。

後編では、米倉教授に加え、日本を代表する研究者のひとりである遠藤謙氏を迎え、マネジメント視点/現場を推進する研究者視点のそれぞれの立場から、その方向性を探ります。

->GEグローバル・イノベーション・バロメーター2014 レポート全編はこちら
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