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日本の技術を世界へ。GEのスケールを活かした技術協業

GEは世界175か国に拠点を構えて事業を行っていますが、その事業の多様性とグローバルなスケールは、技術開発のうえでも要となっています。

1900年にニューヨーク州に創設したGE中央研究所(現GEグローバルリサーチ・センター本部)はいまでは世界に合計9つの研究センターを携えています。それらが配されているのは、例えばソフトウェア開発はカリフォルニア、新興市場に合った医療技術はバンガロール、といった具合に、専門性ある人材や市場インサイトを得やすい地域。ここで生まれる要素技術や製造技術などあらゆるノウハウは、医療から航空まで、分野を超えて適用・展開されています。

しかしGEの技術開発は、自前の研究所で行われるだけではありません。早くからオープン・イノベーションに力を入れてきたGEにとって、優れた技術力をもつ企業が無数に存在する日本もまた、イノベーションの重要拠点。2004年から戦略的に取り組む「ジャパン・テクノロジー・イニシアチブ(以下、JTI)」は、日本企業と“Win-Win”の技術協業を推進するものです。これはいまGEが戦略的取り組む「GEストア」の一環でもあり、自らの事業多様性やグローバルなスケールを活かして競争力強化を図るための、重要な役割を持っています。

「GEストア」

「GEストア」
GEの各事業部門は、図の中央に位置するGEストア(貯蔵所)と言わばギブ&テイクの関係。
各事業間で積極的に協業し、それぞれが得た知と経験を共有している。

ジャパン・テクノロジー・イニシアチブ(JTI)とは

リードしているのは、GEグローバルリサーチ 日本代表の浅倉眞司です。「今から14年前、2002年にGEの上級役員候補たちがトレーニングプログラムの一環で日本を訪れた際、日本の技術力への感嘆を示しました。そして、日本企業との技術協業で双方が共に成長できる機会をもっと生めないだろうか、と。そうして2004年にこのイニシアチブが立ち上がり、私はその2代目のリーダーを務めています」

JTIの推進役は、浅倉に加え、各事業部門から参加する技術知識をもったコアメンバー約20名。コアメンバーは各事業部門の理系職で、ボランティアベースながら年間を通して活動しています。「GEグローバルリサーチ本部も、日本の工作技術や素材技術を非常に高く評価しています。私の役割は、JTIメンバーと一緒に“目利き”としてそうした日本の技術を掘り起し、GEのビジネスとマッチングさせること。そして、相互補完的に共に成長できるビジネスモデルを描くことです」 こう話す浅倉は、グローバルリサーチ・センターだけでなく、各事業部門の技術開発チームとも連携しており、国内外を飛び回っています。

<ジャパン・テクノロジー・イニシアチブ 活動の3つの柱>
1. テクノロジー・マッチング・イベントの開催(2年ごと)
2. 技術パートナーシップのオンライン常時公募
3. グローバルリサーチ・センターや各事業の開発部門からの具体的なリクエストへの対応

「当初、テクノロジー・マッチング・イベントは日本の技術者とGEの開発者が直接に会話することのできる展示会形式で実施していました。でもGEには世界に5万人の技術者がいるわけで、思いもよらないところにコラボレーションの種があるかもしれない。そこで近年は、接点を拡げるために、バーチャルイベント形式をとっています」と浅倉。たとえば2014年の回では日本全国から215件の応募があり、そのうち150件を社内オンライン展示したところ“この技術について詳しい話を聞きたい”という要望が世界中から寄せられました。そのうち10件は実際に秘密保持契約を結んで検討や協業を進めています。

マッチングイベントでの出会が果実へ

「コトが技術開発だけに、公開できるものは限られるんですけどね」としつつも、ひとつの成果が、アイオクサスジャパン(旧パワーシステム)社との事例。電力を一時貯蔵しておき必要な時に使えるようにする、同社のスーパーキャパシターに着目したのはGEヘルスケアの日本のMRI開発チームでした。起動時に相当な電力を必要とするMRIにこの技術を組み込むことで省電力化に成功。このMRIは2010年の発売後、世界で1000台以上の受注を記録しています。

複数の国を跨いだプロジェクトのコーディネーションも

浅倉のもとには、よくGEグローバルリサーチの科学者から「日本にこんな技術はないだろうか」と具体的な相談が寄せられます。

2013年のこと。GE Powerの発電用ガスタービン開発部隊は、タービンブレードの過熱を防ぐ冷却孔をあける加工技術を探していました。「ブレードは超合金に特殊コーティングを施します。小さな冷却孔を開けてからコーティングすると穴は塞がれてしまう。そこで、コーティング済みの超合金にもロスなく正確に穴を開けるためには、日本の精密な工作技術が必要なんだ、と。牧野フライス製作所との共同開発をサポートしてほしい、と依頼があったわけです」。このケースは、牧野フライス製作所のほかにスイスからマイクロレーザージェット技術を持つシノヴァ社も参画し、米国のGE Powerと3か国を跨いだプロジェクトになりました。

タービンブレードの冷却孔加工

GE Powerと日本の「牧野フライス製作所」、スイスの「シノヴァ」、3社協業で実現した
タービンブレードの冷却孔加工(写真:GE Power)

シノヴァ社のマイクロレーザージェットは、水流にレーザーを通し、反射を利用してエネルギーを一点に集めて穴を開ける技術。特殊な装置を動かして正確にモノを作るために、牧野フライス製作所が誇る工作機械の設計・製造技術が必要でした。さらにGEは、その工作機を緻密に制御するソフトウェア技術を持ち込みました。文化も言語も仕事のやり方も違う3カ国を跨いだチームの仕事。技術的なハードルを理解したうえで円滑に進めるコーディネーションも、浅倉の重要な仕事のひとつです。

日本の技術が、航空業界の常識を覆す

もうひとつの代表的な成果が、次世代航空機エンジンに採用するCMC(セラミック・マトリックス複合材)完成を遂げた、日本カーボンとの協業。航空機用のCMC開発は世界中で研究されてきたものの、強度が求められるエンジンにセラミック素材を使うことは無理とまで言われました。実現の決め手になったのは、日本カーボン社が開発した炭化ケイ素連続繊維「ハイニカロン」。部品を大幅軽量化するだけでなく、高温環境下でも膨張・変形しないセラミック材は、航空機エンジンの設計を変えることも可能にします。

「LEAP」用のCMC製シュラウド

左:「LEAP」用のCMC製シュラウド(写真:CFMインターナショナル)
右:民間航空機として初となる、GE9Xに採用予定のCMC製回転ブレード(写真:アダム・セナトリ/GE Reports)

日本カーボンが開発した炭化ケイ素連続繊維「ニカロン」

日本カーボンが開発した炭化ケイ素連続繊維「ニカロン」(撮影:日本GE株式会社)

『Be a Disruptor-破壊者たれ』

GEのグローバルな研究開発組織であるグローバルリサーチの一員として、浅倉は、未来の技術をどう育てて行くかを考えています。「いま、我々グローバルリサーチの信条は“Be a Disruptor”。破壊者たれ、と。たとえば航空機エンジンメーカーとしてCMC採用を決めたGEは、技術的アドバンテージがあります。しかし胡坐をかいてはいられない。航空機エンジンも、将来は内燃系からハイブリッド、電気モーターへと変わっていくはずです。未来に向けた破壊的な技術の種が、日本に眠っているんですよ。そういった素晴らしい技術を、世界の舞台に連れ出してスポットライトを浴びせたい。日本の技術とグローバルな市場、この仲立ちはGEだから出来る仕事だし、やっぱり日本人としてのナショナリズムが自分の大きな原動力になっていますね」

GEグローバルリサーチ 日本代表 浅倉眞司

「この仕事は、常に新しいものを学ぶ面白さがあります」
GEグローバルリサーチ 日本代表 浅倉眞司

日本に求められる、テクノロジーと知的財産の戦略的マネジメント

そんな浅倉が、歯痒く感じていることがあります。それは、競争環境におけるポジショニングや技術的価値のアセスメントが正しく行われていない事例が少なくないこと。特に中小規模の企業において、技術者の方々が戦うすべなく闘っている、と感じることがあると言います。「たいした技術じゃないんですけど」と提示される技術が本当はスゴイ技術であったり、その逆に「うちの技術は、他のどこにもありませんよ」と胸を張る方によく聞いてみると「少なくとも私の知る限りは・・・」というように、客観評価や調査が出来ていないケースです。

「価値、可能性や勝算を含めて自社のテクノロジーが何たるかを正しく把握できていなければ、得られるはずの機会をロスしたり、無駄な開発投資を招いてしまう。たいへん残念なことです。バリュー・プロポジションを明確にして戦略的に動けば、成功を得られる技術が数多くあります。技術を科学的に裏付けられたものにするために、中小企業と大学の連携がもっと必要です。そのうえで、各種機構や財団がネットワークを活かして国内外にプロモートする。日本は、このシステマティックな仕組み作りを急がなければなりません」

いまJTIのメンバーは、今年開催するテクノロジー・マッチング・イベントの準備を進めています。IoTソリューションの提供に力を入れるGEにとって、世界の頂点ともいえる日本のセンサー技術には大きな魅力が。また、素材加工技術にも注目しており、対象技術の絞り込みを急いでいます。GEにはグローバルな事業スケールと「事業化に持ち込む力」という強みがあります。このイニシアチブを通して、日本の優れた技術力とグローバル市場との橋渡しを加速し、イノベーションを加速するとともに、日本の技術開発の発展に寄与したいと願っています。