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この社会は寛容だと言えるだろうか? 20人に1人の「LGBT」、日本はいまどう考えるべきか。

「LGBT」について、皆さんは詳しくご存じでしょうか。

最近は日本のメディアでも取り上げられるようになったものの、まだまだ理解が社会に浸透していないのが実情です。

「LGBT」は、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー/トランスセクシュアル(Transgender/Transsexual)の4つ(*1)の頭文字から成る言葉。いわゆる「セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)」の人たちの総称として、世界中で使われています。人が生まれ持った身体的・精神的な性別の自認、性の捉え方はさまざま。実際には4つに色分けできるものではなく、グラデーションのように多様な性の人たちが、世の中には大勢存在しています。

日本の「LGBT」の割合は5.2%
電通総研が2012年に行った調査(*2)において、日本では約20人に1人が「自分はLGBTだ」と回答しています。企業や学校など、まとまった人数の団体には一定数の「LGBT」の人が存在しているはず。この5.2%という数値をどう捉えるか――思ったよりも高いと感じる方がほとんどではないでしょうか。先日、五輪競泳のイアン・ソープ選手がテレビ番組で涙ながらに自身が同性愛者であることを明かしたように、本来の自分についてカミングアウトできずに悩み、苦しんでいる人がいかに多いかを示しています。

GE Reports Japan編集部は、7月12日から10日間にわたって開催された「第23回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」会場で、LGBT当事者や運営スタッフの声を伺いました。

“自分は日常生活ではカミングアウトしていません。LGBT仲間とはお互い普通に話ができるし本音で語れる友達もいますしね。学生時代も周囲は僕がゲイだと気付いていなかったから、差別に苦しむこともありませんでした。でも「いま、彼女いるの?」と聞かれたりすると「ああ、そういう発言に傷つく人がいることを知らないんだな」と思うし、仮に、実は同性愛者なんだと明かして「あっ、変なこと聞いちゃってゴメン」とか謝られても嫌ですしね” 
(Nさん:20代 ゲイ)

“自分がLGBTであることを周囲に話している人は少ないですよね。それまでの関係が変わらないのなら、話すかもしれないけど。LGBTについて知らないだけで「自分とは無関係」だと思っている人が多いし、そもそも「いろんな人がいるのが普通」という教育もなされていない。たとえば「私じつは同性愛者なんだ」と話したらその後距離を置かれる、ということもあるだろうと思います” 
(Iさん:30代 ヘテロセクシュアル) 

“例えば僕らは、生涯のパートナーを得ても、都営住宅に入居する資格がないんですよね。家族向け住宅への入居は、法的な親族であることが必須条件なので。市区町村が提供する「結婚お祝金」や会社の福利厚生も、ヘテロセクシュアルの方と同じものは受けられないですよね” 
(Sさん:30代 ゲイ)

“20代後半頃から歳を重ねるごとに、周囲から「まだ結婚しないの?」と聞かれる頻度が増えてます。そういう時、本音を語れない息苦しさがありますね。自分が思っている生き方以外にもいろんな生き方があるんだ、という理解が広まればいいんですが…” 
(Mさん:40代 ゲイ)

生まれもった性質に過ぎない性的指向、性自認、身体的な性の多様性への社会認識と受容性がないことが、多くの人たちを苦しめている現実をどう考えるべきでしょうか。20人に1人の問題ではありません。LGBTの人たちの親・兄弟姉妹・友人・同僚など、周りの人々を含めれば本当に大勢の問題なのです。

「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」の運営委員会代表で、15年にわたりボランティアとして運営に携わる宮沢さんは感慨深げに 「映画祭にいらっしゃる客層もだいぶ変わりました。以前はLGBT当事者ばかりでしたが、最近では異性愛者の若い男女のカップルが、普通に手をつないで入場列に並んでいたりしますから」と言います。また、上映作品自体にも変化があったと語るのは作品選定に携わるボランティアの方。「10年くらい前は、同性愛者たちが困難に立ち向かう、といったラブストーリーが多かったんです。でも、最近はLGBTの人たちがどう生きているのか、”半径1m以内”ではなく、社会における彼らの立ち位置をテーマにする作品が増えてきましたね」。しかし「残念ながら日本の映画作品に、LGBTを扱うものは少ないのは事実」と言います。

「この映画祭のように、LGBTを知ったり、LGBTの人と触れあえる機会が
もっと増えるといいですね。実際に接点をもつことが、いちばんよく分かると思います」
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 運営委員会代表 宮沢さん

金融関連企業から成る“東京LGBTインターバンクフォーラム”のルイスさんの目には、日本のLGBTを取り巻く変化はまだこれから、と映っています。「この10年で日本はすごく変わりました。でも、周りの国々はもっと大きく変わりました。それは先進国に限った話ではなく、発展途上国も日本以上に変わりました。日本はこのままでいいのか?と思いますね」と言います。「日本ではLGBTやセクシュアル・ダイバーシティ(性の多様性)についてきちんとした教育が施されていませんが、国際社会の中の常識として知っているべきものです。知らないことが恥ずかしい、という意味ではありません。人間として、大切なことではないかと思うのです。幸せになりたいという願望は皆同じ。そのために、本当の意味での“バリアフリー“な国際社会を作らなければいけないのではないでしょうか」

「第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」会場のひとつとなった
青山スパイラルホールの入り口には映画祭期間中
「LGBT」の多様性を象徴した6色のレインボーのフラッグが

前出のルイスさんは「教育を変える必要もあるでしょう。でも、教育の前に家庭内での教育が大切だし、さらにその前に自分で自分を教育し、きちんと知ることが大事。自分から動き出さないと世界は変わりませんから」と言います。 

企業が果たすべき役割も大きいでしょう。GEは175か国以上で事業を行っており、約30万人の社員が世界中で働いています。そんなGEを支えているのは多様な人材であり、その多様性を強みとしています。人種、肌の色、宗教、障害の有無、学歴、性別、年齢に関わらず、すべての社員が尊重され互いの「違い」を活かし合えなければ、人材の総合力を発揮することはできません。それは、性的指向や性自認についても同じ。GEには、「GLBTA」というグローバルな社員コミュニティがあり、LGBTの社員と、LGBTを理解しその権利を守ろうとする社員たちが活動しています。上の映画祭の協賛も活動の一環です。

ある米国系グローバル企業に勤める男性は「世界には同性愛者が処罰される国もありますが、多くの国ではLGBTに関する理解が急速に進んでいます。この10年ほどの間に、私の勤める会社ではハズバンド(夫)とかワイフ(妻)という言葉を聞くこともなくなりましたよ」と言います。

私たちは、なにかと人に「ラベル」をつけようとしすぎているのかもしれません。性のあり方に限らず、いろんな人がいることが当たり前。ラベルをつけるのではなく人として「個」を尊重し合えれば、社会はもっとフェアで健全に、企業はもっと生産性と競争力を高められるように、なるはずです。 

LGBTというラベルも本来は必要ないはず。でもまずは「LGBT」について知ることで、自分の周りから少しずつ社会を変えていけるのではないかと、GEは考えます。

*1 LGBTを端的に説明するとすれば以下のとおり。
レズビアン:女性に惹かれる女性
ゲイ:男性に惹かれる男性
バイセクシュアル:男性・女性の両方に惹かれる人
トランスジェンダー:自己の生物学的性別に違和感を持つ人やジェンダーの在りかたに違和感を持つ人
なお、海外ではLGBTQQ(クイア、クエスチョナー)などの呼称が用いられるなど、様々なセクシュアリティが存在する。

*2 電通総研「LGBT調査2012」より。全国の20-59歳の男女69,789人を対象にスクリーニングし、790人(LGBT490人/一般層300人)を対象に本調査が行われたもの。