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人工知能(AI)を備えたロボット、必要か不要か?

ロボットやAI(人工知能)に満ちた世界は、ハリウッドでは珍しいものではありません。『ターミネーター』や『ウォーリー』、『ブレードランナー』といった映画では知能を備えたロボットに、(ほとんどが反ユートピア的な)未来を運んでくる役割を与えています。実際、科学技術の世界の著名人たちが、留まることを知らないAI開発に対して警鐘を鳴らすようになりました。テスラ社のイーロン・マスク氏と理論物理学者のスティーブン・ホーキング氏は、スマート・マシンを創る過程で選択を誤れば壮絶なカタストロフィ(大破壊)が起きかねない、と予測しています。

しかし実際のロボット工学の最先端で働く人々の多くは、もっと明るい予測を示しています。前進については慎重な配慮が必要なのはもちろんだが(前出のような不吉な予測は)現在既にマシンが生み出している非常に現実的なメリットに目を向けていない、というのが彼らの意見。このテーマに関してどのような考えであろうと、スマート・マシンが今日のグローバルな時代・精神にしっかりと根を張っていることは間違いありません。

「大勢の人が、ロボット工学に対して暗いイメージを持ってしまいましたが・・・」と語るのは、GEの分散型インテリジェント・システム研究室長のジョン・リッジです。「AIが人類の後継者だというのは面白い考え方ですが、そのレベルの能力を手に入れるのは、まだまだはるか遠い先のこと。世界中がそうしたSF的未来を夢見ている一方で、私たちは今、ロボット・テクノロジーに取り組み、現実的な問題を解決しようとしています」

55年前、ロボットが初めて工場での作業を担うようになって以来、数えきれないほど多くのスマート・マシンが市販され、今もなお開発が続けられています。近年は、どのように仕事や生活をより良いものにできるかに注目が集まるようになりました。これにはGoogleの自動運転や、iRobotのルンバ掃除機など地味な家事ロボットなども含まれます。DARPAロボティクス・チャレンジ(米国防口頭研究計画局主催のコンテスト)から生み出されたロボットのいまだ描かれていない未来では、災害後の人命救助も起こり得ることです。

GEガーディアン・エア

GEガーディアン・エア(GE Guardian Air)
GEは今、写真のような飛行ロボット型検査システムを開発中。「GEガーディアン・エア」は、
GEのソフトウェアや分析学、そして急激に成長しているドローン関連技術の結集です。
(画像:GEグローバル・リサーチ)

いま、自動車産業や医療など様々な分野で、ロボット・アームなど数百万台に上る産業マシンが使われています。産業用ロボットの実力は製造現場でいかんなく発揮されており、またその技能の拡張は、(人のために働く)彼らの位置づけが確実に高まって行くことを意味します。国際ロボット連盟(IFR)によると、2014年末時点で150万台の産業用ロボットが稼働しており、その数は毎年12%ずつ増加し、2018年中には230万台に達する見込みとのこと。その大半を占めるのが、自動車生産ラインでは当たり前の光景となった、限定的な作業を正確に実行するロボット・アームです。しかしIFRや業界関係者が予測するように、今後ロボットが飛躍的発展を遂げるにはスマート化が欠かせません。

GEでも稼働するコラボレーション・ロボット、「バクスター」と「ソイヤー」はすでに重要な第一歩を踏み出しました。こうしたロボットは、自分で作業を進め、人間の行動を見て新しい仕事のやり方を学習し、どんな時に助けを求めるべきかを知る必要があります。ロボットがそうした資質をどの程度必要とするかについては、今なお熱い議論が続いているところです。

昨年末、GEがニューヨーク州ニスカユナにあるGEグローバル・リサーチ・センターで開催した「2015ロボティクス・リーダーシップ・サミット」でもこのテーマを取り上げました。会議では、リシンク・ロボティクス社の創設者であり会長兼CTOのロドニー・ブルックス氏、フォックスコン社のロボティクス責任者チア・ペンデイ氏、カーネギーメロン大学の著名な研究者で、宇宙や鉱山、自動車などで働くロボットの実用化に貢献したレッド・ウィテカー氏などが講演を行いました。

コラボレーション・ロボット「バクスター」

タイトル動画および上掲動画:重要な第一歩を踏み出したコラボレーション・ロボット「バクスター」
(GIF動画:リシンク・ロボティクス)

強力なAIの開発に携わるGEの認知科学研究者、ブラッドフォード・ミラーは、同会議で上の「バクスター」など初期型のコラボレーション・ロボットが、私たちの「工場の概念」を変えるきっかけになるだろうと語りました。ただし、コラボレーション・ロボットは、いま話題になっている大変化に繋がるものではありません。「今話題になっているような、本当に大きなことは、まだまだ先の話です」とミラーは言います。「変革は“学習”という形でやってきます―子供と同じようにロボットに学習させることや人間同様のエピソード記憶が可能になり、また彼らの推論能力を、モノゴトに関する推測を行えるレベルにまで高めることができたときです。破壊的な変化、というのは人間の知識をロボットに転送するなんてことができるようになった時のことです」

ミラーは“考えるマシン”を作り出すためにロボット工学研究者たちが考えた手段のひとつである、コラボラティブ・オートメーションの提議者です。これは自律進化するハードウェアや人工知能だけでなく、電力消費量の自己コントロール、インダストリアル・インターネットを介したマシン同士または人間との通信なども含みます。
しかし、マシンにどの程度の認識能力を与えるかについては様々な意見が。ミラー個人は映画『スターウォーズ』に登場するような、自立的に動作し、経験した世界を理解し、完璧なパートナーシップで人と共に働き、考えるロボットが大勢存在する“産業の世界”を期待しています。このアイデアを現実のものとするには、ロボットたちにそれを創り出した人間が彼らの“道徳上の親“であると認知させるプログラミングが必要で、ミラーも「自分の行動の結果を理解できるロボットを導入すること」が重要である、と話しています。

拡張できるロボット認知ソフトウェアの開発

GEは、写真のような様々なロボット・システムに
拡張できるロボット認知ソフトウェアの開発に取り組んでいます。
(画像:GEグローバル・リサーチ)

一方で、共同作業ロボットには高い思考能力を与えるべきでないという方針の研究者も。プラスワン・ロボティクスの創設者でCEOのエリック・ニーブス氏は、思考能力を制限したマシンと監督する人間の組み合わせによって効率的に作業する、人間中心のロボット戦略をとっています。ニーブス氏の考え方では、ロボットは人間の能力を補足し拡大する手段でしかなく、彼のアプローチでは、ロボットに完全な形のメンタル・ステートはインストールしません。

「AIロボットが出現するのは何十年も先のことですが、もっと充実したコラボレーションは今すぐスタート可能です。今以上に賢いロボットは必要ありません。必要なのは“賢い人間とつながった”ロボットです。目指すのは人間の代役でも複製でもなく、それによって人間を方程式から排除することでもありません。必要なのは、人間の有効性を拡大するロボットなのです」

ニーブス氏は、自身の例を挙げます。テキサス州に住み、オハイオ州で働いている彼は、引っ越しや単身赴任をせず、「テレプレゼンス・ロボット」を使って仕事をしています。自宅からロボットを操り、ライブ・ビデオ・ストリーム画面に彼の顔を映し出したロボットが会議に参加し、工場内を動き回ります。ロボットに取り付けられたカメラは、その動きに合わせてオフィス内の様子をニーブス氏に伝えます。「必要なのは物理的存在としての私ではなく、問題をリアルタイムで解決するための私の専門的知識です。ロボットは遠い場所にいて私の能力を補助してくれているだけ。そこに実用に耐えるレベルの賢さは必要ありません」とニーブス氏は説明します。

もちろん、未来はこの二者択一ではありません。必要な仕事を成し遂げるために、多様な能力を持つ複数のロボットをどこに配備するか、その答えには多様な組合せが存在するでしょう。いずれにせよ、アルゴリズムやハードウェアの開発/構築に携わる人たちは、ロボットがどのように人間の仕事をスマートに支援してくれるか、生活をより良いものにしてくれるかを考えるのは楽しいと言います。

GEのソフトウェア研究担当バイスプレジデントであるコリン・パリスは言います。「ロボットの知能は向上しており、ロボット同士のつながり、ロボットと人間とのつながりはますます強固になっています。今後3~4年で、ソフトウェアがソフトウェアを書くようになり、5~8年で今ある産業のいくつもがロボットに置き変わり完全に崩壊するでしょう」

こうした流れを認め、ロボット活用について先回りして考え 素早くアクションを講じた者が大きなチャンスを得る(あるいは損失を最小化する)ことになるのは、間違いありません。