ロゴ

驚異のデジタル技術:ターボプロップ機の操縦がスクーター並みにシンプルに

女優オードリー・ヘップバーンは、映画「ローマの休日」でグレゴリ-・ペックをスクーターに乗せて、ローマの石畳を疾走していましたが、彼女の乗るベスパは運転が非常に簡単で、ただ飛び乗ってスロットルを回せば、目的地に到着できました ー その所作が王女にしては少々お行儀が悪かったにしても。

イタリア人の航空宇宙技術者兼パイロットのシモーネ・カステラニは、正式なライセンスの取得が必要ではあるが、パイロットの操作を同じように簡素化しようとしています。カステラニ氏は、GEのターボプロップ機用の電子頭脳開発チームの一員で、同氏によれば、飛行機の操縦が「僕のママでもできる」くらい簡単になるということです。「すべてが自動的に実行されます。ある意味、まるでスクーターで空を飛ぶようなものです」。

電子頭脳の構想は、GEアビエーションのBusiness and General Aviation (BGA)部門を統括する、ブラッド・モティエによるものです。この技術は、正式にはエンジン・プロペラ統合コントロール装置(FADEPC)と呼ばれるもので、ジェット機では一般的ですが、商用のターボプロップ機に使用されたことはこれまでありませんでした。というのも、このカテゴリーに含まれるセスナ、ビーチクラフト、農業用飛行機などの航空機のほとんどが、数十年前の設計によるエンジンを使用しているためです。FADEPCをこれらの航空機に採用するのは、他の部分を大幅に変更しない限り、現実的ではありませんでした。「ターボプロップ機の市場は、長い間、大きな設計変更を経験していません。FADEPCをそうしたエンジンに採用することは、30年前の車に最新の燃料制御装置を搭載するようなものです」とカステラニは指摘します。

しかし、この状況は、2年前にモティエが先進型ターボプロップ(ATP)という最新エンジンの設計を技術者に依頼したことで変わりました。新エンジンには、もともと超音速ジェットエンジン用に開発されたコンポーネント、3Dプリントされた部品、さらにFADEPCが初めて採用されたのです。「ATPでは、すべてが新しくなりました。この新エンジンは一から設計したため、この技術に適したエンジンになっていると思いました」とカステラニは述べています。

上の画像:シモーネ・カステラニは、GEのターボプロップ機用の電子頭脳開発チームの一員です。彼によれば、この技術によって飛行機の操縦が「僕のママでもできる」くらい簡単になるということです。
画像著作権:ステファノ・ロスタゴ(GEレポート)一番上の画像:「すべてが自動的に実行されます」(カステラニ)。「ある意味、スクーターで空を飛ぶようなものです」 (カステラニ)。画像著作権:Shutterstock

カステラニは、この20年間、中国とチェコなどのアビオ・エアロで働いてきました。同社は、GEアビエーションが2013年に買収したイタリアの航空大手です。同氏は、現在、トリノ郊外のアビオ・エアロ本社に勤務しています。トリノは、エンジニアリング分野が盛んなイタリア北部の産業都市で、フィアット自動車の生誕地でもあります。休暇中の楽しみは操縦で、自分で開発を進めている技術によって趣味の楽しみがさらに増すことでしょう。

現在、カステラニがターボプロップ機を操縦する際には、一方のレバーでエンジン出力を制御し、もう一方のレバーでプロペラのブレードのピッチを調整します。使用するマニュアルには、高度、気温、効率性などの条件によって、エンジンとプロペラのスピードに対する適切な設定が記載されています。推力を管理するためには、エンジン出力とプロペラのスピードを個別に設定し、いかなるエンジンの制限も超えないように注意する必要があります。「私はパイロットですが、最新のターボプロップ機を操縦するには、相当努力が必要だということは言えます。実際のところ、ほとんど常に外を見ないでコックピットの計器を見つめることになります」とカステラニは述べています。

しかし、このチームのFADEPCを使えば、まるでスクーターのスロットルを回すかのように、同じことがレバー1つで実行できます。巧妙な機能だが、これを上手く実現するのは簡単なことではありません。システムは、まずエンジン内部の温度、タービンのスピード、トルク、圧力などのパラメータを監視するセンサーからデータを取り込みます。そのデータを周囲の温度、高度、航空機のスピードに関する外部情報と組み合わせます。さらに、高度なアルゴリズムを使用してデータを分析し、エンジンが最適に動作できるスイートスポットを見つけ出します。「オートマ車を運転するより簡単です。スロットルを押し込めば、コントローラーがエンジンとプロペラにベストな選択を示してくれます」(カステラニ)。 GEのターボプロップ機事業のジェネラル・マネージャーを務めるポール・コルクリーは、FADEPCについて次のように述べています。「FADEPCによって飛行機の操縦がレバーを押すのと同じくらい簡単になり、パイロットにも好評です。常にエンジンを監視したり、調整したりする代わりに、飛行機を操縦し、窓の外を眺め、経験を積む時間が増えるからです」。

GEのテスト技術者であるスティーブ・エリクソンらのチームは、2017年12月、プラハで初めてATPエンジンを始動させました。「世界に類のないエンジンです」(エリクソン氏)。画像著作権: Tomas Kellner(GEレポート)。

このエンジンに刺激を受けたのは、カステラニのようなパイロットだけでなく、Textron Aviationのような航空機メーカーも同様で、同社の新型セスナ「デナリ」はATPを搭載した最初の航空機になる予定です。というのも、この技術により同クラスのエンジンに比べて、ATPの燃料燃焼が20パーセントも低減し、エンジンの出力は10パーセント増加するからです。「簡単なことのように思われるが、実は革新的なことなのです」。こう語るのは、このシステムのコード開発を支援した、カステラニ同様航空エンジニアのクリスチャン・ライです。

FADEPCチームは、トリノからイタリア南部の都市バーリにまで広がります。バーリでは、アビオ・エアロが地元の大学と提携して、デジタルラボとアディティブ・マニュファクチャリング(3Dプリント)のラボをオープンしました。この取り組みの結果、出願された特許は10を超えます。

ライとカステラニの上司にあたるスーザン・チャクロフは、システム開発チームの結成を2年前に開始しました。このシステムには、ハードウェアだけでなくソフトウェア(プロペラのピッチ、燃料バルブの位置などの物理的な変数を制御するアルゴリズム)が必要なため、航空宇宙、電子工学、機械工学の経験を持つ技術者が求められました。「しかし、何より必要なのは、仕事への情熱を持った人間です。本当に開発に取り組みたいと考えている人を必要としていました」とチャクロフは述べています。

カステラニやライら、この条件に合致した20数名が直ちに開発に取りかかりました。窓の外の雪を頂いたアルプスに沈む夕日をオフィスから眺める日々を何日も重ねたのです。「ゼロからの出発は容易ではありません」(チャクロフ)。

チームが最初に注文したのは、フランスの航空宇宙企業サフランが開発した、システムを動作させるためのOSのみを搭載した電子機器でした。次に、ATPエンジンを制御するソフトウェアの開発に着手しました。チームが採用した航空宇宙技術者用のモデルベースのプログラミング言語によって、プログラムをC、C+、Pythonなど必要とする「他のどんな言語にでも」変換できました(ライ)。「設計者は、特定の言語を学ぶ必要はありませんでした」。

次に、エンジンを制御するコードとアプリケーションをその電子機器にアップロードしました。プログラムを新しいコンピューターにロードするようなものです。「この装置にはオペレーティングシステムが搭載されています。そこで、エンジンとブレードのピッチを制御するアプリケーションの開発を進めていました」(チャクロフ)。 「2重冗長」設計のため、問題を検知した場合、即座に自動的に再構成できます。「問題が発生すれば、パイロットはダッシュボードでそれを確認できるでしょうが、ダッシュボードを見なければ、問題に気付かないはずです」(ライ)。

完成品は、エンジンに取り付けられ、重さは5キロ余りで、大型のノートパソコンのような外観です。GEは、ターボプロップ機部門が本部を構えるプラハで12月に初めて、エンジン全体のテストを成功させました。

カステラニは、現場で動作を確認し、こう述べました。「まさに芸術品です」。

バーリのアビオ・エアロラボでFADECPCシステムのテストをしているクリスチャン・ライ(左)。画像著作権:Yari Bovalino(GEレポート)。

メール配信メール配信