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うつ病を磁気刺激で治療 ー 注目の新技術にGEが投資

世界的に深刻化しているうつ病。副作用のある薬剤を使うことなく、
外から脳に刺激を与えることでうつ病の治癒効果があるとしたらどうでしょう?
Neuronetics社の磁気刺激治療(TMS)がその答えになるかもしれません 。

深刻度を増す精神疾患

近年では「新型うつ」という新しいタイプのうつ病が話題になるなど、うつ病は社会の変化と密接に関連した病気とも言えます。OECDのデータによれば、精神疾患を患う人の割合が最も高いのは米国で、調査時点の過去12カ月に発症したことがある人の割合(12か月有病率)は26.4%。そのうちうつ病などの気分障害は9.6%で、米国では年間約800万人もの人がこの病気を経験していることになります。

精神疾患の有病率

日本は世界的に見ると精神疾患の有病率は低いものの(12カ月有病率8.8%)、気分障害の患者数は1996年からの12年間で約2.4倍にも増えており、状況は深刻化しています。

日本における気分障害総患者数

うつ病と闘う方々の多くは、薬やその他の一般的な治療法では効果が得られなかったり、副作用に苦しんでいます。米国の医療機器メーカーであるNeuronetics社は、うつ病の治療に異なるアプローチで取り組んできました。同社のチーフメディカルオフィサーであるマーク・デミトラック博士は「薬剤を使うことなく、外から脳に刺激を与えることができて、それで治癒効果があるとしたらどうでしょう?」と言います。

脳内に直接作用する電磁気技術

Neuronetics社の手法は、「経頭蓋磁気刺激」(TMS)と呼ばれる非侵襲技術、すなわち頭蓋骨に穴を空けるといった生体に傷をつけるような処置をともなわない技術で、小型で強力な磁石によって頭蓋骨の外側から電磁気エネルギーを脳細胞に与えるというもの。手術のように患者さんへの負担がなく、全身性の副作用がないのが特徴です。同社のNeuroStar TMS療法(磁気刺激治療)は2008年に米国FDA(食品医薬品局)に承認され、以来Neuronetics社は、この分野のリーダー企業と目されるようになりました。GEはこのほど、革新的な技術をもつ企業にベンチャー・キャピタル投資を行うGEベンチャーズを通じてNeuronetics社へ出資を行うことを決定。同治療の利用拡大に貢献するとともに、大うつ病性障害(MDD)に焦点を当てた新しい適用法などの研究を支援していきます。

TMS療法では、電磁場で生成された標的磁気パルスを左前頭前皮質に向けて送ります。そのエネルギーが脳内のニューロンを興奮させ、ドーパミンのような神経伝達物質を放出させることによって、脳内の深部を活性化。その結果、通常起こる神経伝達物質の増加に加えて血流やグルコース代謝がよくなることで、うつ症状の改善につながる、とNeuronetics社は解説しています。800名の患者さんを対象に同社が実施した臨床試験結果では、2人に1人には治療の効果が見られ、そのうち三分の一は症状が寛解したという結果が得られています。

TMS治療のイメージ

NeuroStar TMS療法のイメージ(出典:Neuronetics社)

GEベンチャーズのヘルスケア投資担当ディレクター、レスリー・ボトロフは「GEの科学者やエンジニアたちはいま注力的に脳科学に取り組んでいます。NFL(全米プロフットボールリーグ)のようなパートナーと協働して研究を行ったり、イノベーション・アイデアを募るコンテストを実施するなど、脳神経障害をもつ方々をサポートする先進的な機器開発を進めています。このNeuronetics社の非侵襲治療技術も、GEのこうした脳科学分野における一連の取り組みを補完する、意義ある存在となります」と言います。

GEベンチャーズはNeuronetics社以外にも、イスラエルのHeadSense社(頭蓋内圧モニタリング)やOrnim社(脳内血流監視)といった非侵襲型の脳関連テクノロジー企業を積極的に支援しています。

GEは、「脳の解明」を6つの注力研究分野のひとつに位置づけており、ヘルスケア事業部門だけでも、2010年から2020年までの10年間で5億ドルを神経障害関連の研究に投資する予定です。脳の働きを明らかにすることで、さまざまな病気の発生メカニズムが突き止められ、革新的な治療法が確立される。GEは、こうした未来を照らす技術の開発を強力に推し進めていきます。

未来を照らす6つの研究分野