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NECの画像認識サービス「GAZIRU」と「Predix」がもたらす可能性

ここ数年、産業界に変革をもたらす技術として注目されているもの、というと何が思い浮かぶでしょう?
3Dプリント技術、AI(人工知能)、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)でしょうか。「画像認識技術」もまた、IoTやAIと組み合わせることでその価値が再定義されるかもしれません。

世界を牽引する日本の画像認識技術。NECはそのフロントランナーとして技術開発を続けています。なかでも先端的なのが、画像認識サービス「GAZIRU」で活用されているNECのAI技術「物体指紋認証」。人体の指紋から個人を特定できるのと同様に、GAZIRUは「物体指紋」からひとつひとつ異なるモノの個体を割り出してくれます。

モノにも指紋?

たとえば工業製品の場合。その表面には必ず、製造工程で生じる微細な紋様があるのだとか。人間の目では認識しづらいこの紋様は製品個体ごとに異なり、たとえ同じ金型からつくられたものであっても、ヒトの「指紋」と同様、わずかな違いが生じます。これが、「物体指紋」と呼ばれるもの。

同一金型で作成された金属部品の表面を拡大した例
(写真提供:NEC|同社ウェブサイトより引用)

これまで画像認識技術といえば、顔認証は顔だけ、虹彩認証は瞳だけ、しかも専用の仕組みが必要でした。対してGAZIRUは、認識対象を選ばない汎用的なサービス。そのコンセプトは「モノを画像から識る(GAZIRU=画識る)」であり、2013年にサービスが開始されました。中でも物体指紋認証技術を活用したサービスは、2014年、NECが世界最高レベルを誇る指紋認証技術をはじめ、多岐におよぶ画像認識技術を統合して生まれました。

GAZIRUの画像認識の仕組みをご説明しましょう。まず識別のための元画像を撮影し、クラウド上の画像データベースに登録します。そして、照合・判定したい対象物をカメラで撮影してクラウド上のGAZIRUに送信すると、GAZIRUの画像認識エンジンが登録された画像との同一性があるかどうかを瞬時に判定する、という流れ。しかも、スマートフォンに所定のレンズを装着して撮影しただけでも、そのままクラウド上のソフトウェアから判定を得られるという手軽さです。

そしていまGAZIRUは、GEが提供するIoTプラットフォーム「Predix」上でも使用可能になりました(“NEC Fingerprint of Things Object Tagging“)。高度な画像認識能力と解析ソフトウェアとを組み合わせることで、製造現場などでも、作業ミス防止や品質管理、あるいはトレーサビリティなどさまざまなシーンでの応用が可能になります。

まるで「目を持ったAI」のように

2014年のリリース以来、GAZIRUの物体指紋認証技術は様々な領域で活用されてきました。GAZIRUの用途はアイデア次第。たとえばブランド時計の正規品判定が考えられます。あらかじめリューズ部分の写真を登録しておけば、同じ型のブランド時計のリューズの写真を撮ってクラウド上で照合するだけで、肉眼では本物とまったく見分けのつかない品物でも、素材がもつ微細な特徴を識別して瞬時に正規品/模造品を判定するサービスを実現できるでしょう。

対象はモノだけではありません。判定した結果を何に紐付けるかによって用途は無限です。雑誌やチラシにかざすだけで関連するWebサイトを瞬時に表示したり、飲食店のメニューから希望の料理をスマートフォンで読み取るだけで、そのままオーダーし仮想通貨で決済してしまう・・・なんてことも。マーケティングや店舗システムとの連携など、社会共通の基盤へと発展するポテンシャルも備えています。

GAZIRU×Predix、産業領域での活用法

では産業領域ではどうでしょう。たとえば、金属部品を作る金属加工工場。顧客のオーダーに合わせた金属配合で板を均し出したら、次は加工です。少しずつ配合が異なる多種多様の合金の板が並ぶ棚から、誤った金属板を取り出して加工してしまえば、また溶かして板にしなければなりません。そんな時、GAZIRUが役立ちます。加工台に金属板を載せたらすぐ、上部に据え付けたカメラで金属板の表面をパシャリと撮影。指定と異なる金属板が載せられたときにはアラートをあげてくれる、といった具合です。

GE Digitalがサンフランシスコで開催したイベントMinds+Machinesでは
肉眼では見分けのつかない金属加工品や小さなボルトの個体を瞬時に判別して驚かせた
(写真提供:NEC)

別の応用例のひとつが“トレーサビリティ“です。食品業界用語だったのは過去の話。製造業においてもトレーサビリティは重要な役割を果たしてくれます。製品や部品の画像をGAZIRUに納めてあれば、タグをつける必要もなく、サプライチェーン、バリューチェーン全体のトレーサビリティを実現できます。「リコール」は、製造業の企業を闇に陥れる恐怖です。GAZIRUなら、製造記録と紐づけられた部品や素材の画像は、出荷後・販売後に生じた不具合であっても、いつ、どこで作られたものなのかを教えてくれます。不具合の原因になった部品を特定して記録を辿れば、再検品・回収が必要な製品ロットをピンポイントで特定する、なんてことも可能に。全量リコールを回避して本当に必要な数量のみの賠償へと、コストを最小化することができます。

 

サプライチェーン全体におけるトレーサビリティ
(写真提供:NEC|同社ウェブサイトより引用)

専用デバイスやシステムは不要、導入もスピーディー

GAZIRUの普及拡大に取り組むNECビジネスクリエイション本部エキスパートの栗山敬弘氏は、「世の中には様々な認識技術が存在しますが、認識対象ごとに専用システムが必要です。GAZIRUは、平面でも立体でもOKで、認識対象を選ばない汎用性が大きな強み」と言います。しかも、スマートフォンでも撮影可能で解析ソフトウェアもクラウド・ベース。必要ならすぐにでもサービスを立ち上げることができる点も、導入企業に大きなメリットです。「表面の差異を判定するサービスはほかにもあるものの、このような物体指紋認証としては、NECが世界初。今もNEC独自の技術として進化し続けています」、と栗山氏。

左:石井吉之氏 日本電気 ビジネスクリエイション本部 本部長代理
右:栗山敬弘氏 日本電気 ビジネスクリエイション本部 エキスパート
(撮影:GEジャパン株式会社|GE Reports Japan)

GAZIRU×Predix–さらなる可能性を目指して

NECとGEは昨年、IoT分野における包括的な提携を締結しており、GAZIRUとPredixの連携もその一環です。NECビジネスクリエイション本部本部長代理の石井吉之氏はこう話します。「将来的には、企業や国境を超えて“画像辞書”データを共有する、といったことも進むかもしれません。たとえば税関での正規品判定などは、イメージしやすい応用法ですね」

グローバルな基盤をもつPredixに乗ったことで、今後、Predixを利用する世界各国の企業へ、このユニークな技術の活用機会を提供していけたらと考えています」

*最上部の動画提供:NEC