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触ってみよう:GE、米国最大の医療機関への3Dプリンティング導入をサポート

3年ほど前、医師ベス・リプリーが受け持っていた患者は、現実から目を背けていました。リプリーのほか数名の放射線科医が、この女性の腎臓で腫瘍が大きくなっていることを確認していましたが、女性はどうしてもそれを信じようとしませんでした。最大の理由は、治療として提案されていた腎臓の全摘出を伴う手術を恐れていたからでした。

患者も医師たちも行き詰まったこのとき、スキャンデータを基にリプリーが3Dプリンターで作成した、癌になった腎臓のモデルを、ある外科医が女性本人に見せました。モデルを見た女性は、自分の病状を即座に理解しました。それだけでなく、担当外科医もモデルのおかげで重要なひらめきが得られたのです。「外科医は腎臓を全摘出せずに腫瘍だけの摘出が可能だと気付くことができました」とリプリーは述べています。

リプリーは現在、米国最大の医療機関である退役軍人病院に、そうしたひらめきに満ちた瞬間を届ける仕事に就いています。彼女が現在率いているのは、退役軍人省(VA)イノベーションセンターによる3Dプリンティング・ネットワーク・プログラムというもので、シアトルのピュージェット湾の退役軍人病院をはじめ、サンフランシスコ、ミネアポリス、クリーブランド、ソルトレイクシティの各地で3Dプリンティング技術を展開する取り組みです。同医療機関は最近、患者治療における3Dプリンティングの活用を加速させるべく、GEヘルスケアと提携しました。

現在、3Dプリンティング(別名 アディティブ・マニュファクチャリング)によって作られた製品が、手術やその他の治療手段に対する医師のアプローチを急速に変えつつあります。国際生産技術者協会によると、医療従事者の96%が将来的にアディティブ製品の使用が増加すると予想しており、そのうち4分の1近くが、2018年の成長率が20%に達すると見込んでいます。医療従事者たちは、個々の患者のニーズの充足に向け、医師が明確なコミュニケーションをとる助けになるという意味で、こうしたアディティブ製品が優れた医療の実現に貢献するものだと認識しています。

最上部画像:瘻孔の3Dプリンティングの準備作業。上図:血管と、血管系の他の部分の3Dプリントモデル。画像提供:GEヘルスケア

このアディティブ技術がもたらした革新は、手術室以外にも及んでいます。 ウィスコンシン州ウォキショーにあるGEヘルスケアのチーフエンジニア、ジミー・ビーチャムは、GEヘルスケアの機器構成部品の70%が、将来的に何らかの形状や形態で3Dプリンティングを用いたものになると予測しています。

一方で病院では、患者が手術室に入る数週間前に外科医と放射線科医が集まり、手術の各段階について詳細な計画を立てます。手術が成功するかどうかは、放射線科医が外科医に向けて行う患者の病状説明に大きく左右されるため、この話し合いはきわめて重要です。「どれほど雄弁な人であっても、数千枚の画像を撮影し300語の報告にまとめるのは至難の業です」とリプリーは述べています。しかし言葉でうまく説明できなかったとしても、リプリーには手で触れる実体モデルを外科医に渡すという手段があります。「外科医は自分の目と指を使ってモデルから情報を読み取ることで、その情報をはるかにすばやく処理できるのです」と彼女は説明しています。

患者が医師の前に座り診断結果の説明を受ける時も、こうした医療モデルは、いわば『スター・ウォーズ』のC-3POのような万能通訳の役割を果たし、病気を視覚的に説明する助けとなります。脳腫瘍のような、生命にかかわる難しい病状に対して患者が向き合うためには、このような説明が不可欠なのです。

脳の「プリンティング」を実行する場合、まずCTスキャンによる画像撮影を行います。それから最初に放射線科医がスキャン画像の綿密なチェックを行い、プリントする生体構造を指定します。編集された画像は、ステレオリソグラフィー(STL)のような特殊なフォーマットでアップロードされ、平面画像を立体化するために表面積が計算されます。最後に医師がSTLファイルを3Dプリンターに送り、プリンターがプラスチック材料から一層ずつ脳を造形していきます。

通常、リプリーのような放射線科医が現場でアディティブ製品を自分で製造します。幅広い分野を扱う医療機関においては、この家内工業的アプローチにより、身体部位を超えた範囲に3Dプリンティングを応用する場合であっても、患者に合わせた製品を作り出すことができます。この技術を使って患者にカスタマイズした補助器具を作成することも可能です。一例として、バージニア州リッチモンドの退役軍人病院では、脳の損傷が原因でビリヤードをするのが難しくなった退役軍人のために、球を突くときにキュー・スティックの揺れを防ぐ器具を作成しています。医師たちもまた、自分で考案した革新的手法を補完するために、自由にモデルを作成することができるのです。

リプリーをはじめとする推進派は、3Dプリンティングの活用を実際の様々な医療行為に拡大していくことを望んでいます。そして、製作基準やベストプラクティスの策定を目標として、アメリカ食品医薬品局や北米放射線学会といった組織と緊密に協力しています。さらに、3Dプリンティングの専門家養成トレーニングプログラムも展開中です。放射線科医になる前は美術史を専攻していたリプリーは、3Dプリンティングの仕事に最も向いているのは、「医療と美しいデザインの両方に魅力を感じる人」だと言います。 そんな彼女自身が何よりも美しいと感じる光景、それはアディティブ医療によって、一人一人の患者にふさわしい治療が与えられることに他なりません。

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