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“平常時はエコ、災害時はタフ” 非常時は250人が7日間生活できる、積水ハウスが実現した未来型工場

2011年に東北、関東地方を襲った東日本大震災からもうすぐ4年。災害の直接的な被害だけでなく、ライフラインの破壊、サプライチェーンの断絶などによる二次的な被害の大きさをも目の当たりにして、災害対策の在り方が見直されています。

あの時一番問題だったのは、水よりも何よりも電気
宮城県の内陸部に位置する人口7,300人の小さな町、色麻町(しかまちょう)は津波の影響は受けずに済んだものの、大きなダメージを被りました。災害発生直後から役場で対応にあたった色麻町の高橋克明副町長はこう振り返ります。「あの時一番問題だったのは、水よりも何よりも電気でした。電気だけはどうしようもなかった」。人々は灯りもなく、極寒のなか暖もとれない中で過ごしました。しかし、高橋副町長が強調するのは、“情報のための電気”の重要性です。

「現代社会において電気は水より大切と言ってもいい。灯りをとる、暖をとるための電気以上に、まず“情報”をやりとりするために電気が必要なんです。震災後はテレビや主要な情報通信網が断絶してしまいましたが、幸いにも色麻町には非常用発電機があった。そのおかげで、双方向の有線放送を町民の支援に役立てることができたんです。こうした広報手段がなければ、どんなに水や食料や資材などの支援物資が届いても“いつどこで誰を対象に配りますよ”というお知らせができず、困っている人に行き届かせられない事態に陥ってしまいます」

色麻町は、余りがある物資は石巻など被害の大きい沿岸部への支援に回しました。「でも、防災無線で連絡を取り合うだけでは限度があり、適切なアクションを素早く行うことは難しい状況でした」と高橋副町長。「人を助けるためにも、まず電気がないと話にならない。大きな街になればなるほど、広報媒体、それも双方向のものがなければ、住民の悲鳴が聞こえなくなってしまうんです」

色麻町で北海道・東北エリア向けの生産を行う積水ハウス社も、このとき企業の立場から顧客や住民のサポートにあたっていました。「我々はお客さまの“くらし”に関わる企業。災害時は生産はストップして、被災した状況下でのお客さまの生活をサポートすることに全力を傾けます」と今田恵二郎東北工場工場長が語るとおり、災害発生後は従業員が工場に集まり、被災エリアの顧客に非常用物資を配布するなどのサポートを行いました。

町と企業との共助による「防災」のために連携を続けてきた
色麻町の高橋副町長(左)と積水ハウス東北工場の今田工場長(右)

地域との共助を考えた、防災未来工場化
東北工場の運営を司る立場にあり、品質や生産コスト管理に全責任をもつ今田工場長。「あの震災を経験してからは、環境対応や生産コスト低減に加え、企業がお客さまや地域のために果たすべき“防災”の役割もより強く意識するようになりました」と語ります。

同社 東北復興開発事業部の徳川氏も、別の角度からアイディアを膨らませていました。自社製品の品質を体感してもらうための施設として東北工場に付設していた「住まいの夢工場」を、非常時には被災した人々が一時的に暮らすことのできるシェルターとして使うことができるのでは、と考えたのです。「もちろん、生産部門では環境目標としての電力削減を掲げている。であれば、これらをすべてつなげてしまおうと考えたんです。そして、GEの震災復興支援チームの皆さんに相談しながら計画を固めました」。

こうして生まれた“平常時はエコ、災害時はタフ”な工場実現する『防災未来工場化計画』は、250名の住民を収容して7日間生活でき、なおかつ事務所での生産活動、情報系システムを維持できる電力自給力を前提にシステム設計を行ったもの。すでに積水ハウス社が設置していた太陽光発電に加え、GEが提案した蓄電ソリューション「デュラソン・電力貯蔵システム」と、バックアップ電源として「ワーケシャガスエンジン」を設置。さらに、同社はここにプラグインハイブリッド車(PHV)を加え、これらをトータル管理する自社製ソフトウェアを用いて運用が始まっています。

低NOxで熱と電気の両方を供給可能な
GE製 ワーケシャガスエンジン(左)と
電力貯蔵システム デュラソン(右)

―モノを作る原価とおなじように、エネルギーを考えるようになった
今田工場長は「一連のシステムを取り入れたことで、契約電力は2300kwから1600kwまで低下する」と言います。一般住宅223世帯分に相当する契約電力のダウンは、地域への環境負荷も低減しています。鍵となるのは蓄電ソリューション。電力使用量の少ない時間帯に電力を蓄えて電力ニーズが高まる時間帯に電力を供給することで、ピーク時の電力使用量をもとに算定される電気の基本契約料金を抑えることにもなり、コストの面でも効果が。「ピークカットをさらに進めるために、LPGを使うにしても、そのコスト意識を為替から考えるようになりました。今までと違う発想で、モノを作る原価と同じようにエネルギーを考えるようになりましたね」と今田工場長が言う通り、エネルギー・コストの意識変革は、工場長の役割まで拡げようとしています。

平常時は、北海道や東北エリアの顧客を対象に
月間300棟分もの住宅部材を生産
工場内はGE製のLED照明を設置し、大幅な省エネを実現した

「防災」実現の鍵は、官民の連携
「防災未来工場」化にあたって、色麻町と防災協定を結び且つ一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の支援も得て、まさに官民の連携でプロジェクトを推進してきた積水ハウス社。2014年10月には、宮城県色麻町と合同で防災訓練を実施している。色麻町の高橋副町長は、「こうした企業の取り組みが全国に広がれば、これほど心強いことはないし、国民を守る大きな手段になる。対防災としても対環境としても、行政側もそうした流れをさらに促進するための動きが求められている」と言います。また、今田工場長も「ケースバイケースで連携のレベルは違うと思いますが、民間と公が組んで地方を豊かにすることが必要な時代ではないかと思います。特に我々にとっては地域がお客さま、様々な連携の中でビジネスも広がるし、町が退化しないことにもつながる。そう考えると工場の果たす役割は大きいです」と今田工場長。「我々工場が国の施策の一端を担っている、そんな感覚を持てるとよいのではないかと思いますね」

宮城県色麻町と積水ハウスが官民連携で取り組む災害に強いまちを目指した取り組みは、2015年3月に開催される「第3回国連防災世界会議」(主催:国際連合、日程:2015年3月14日(土)~3月18日(火))の関連事業として、同国際会議参加者および報道関係者に向けて実施されるスタディツアー(被災地公式視察)の視察先に決定しています。