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IoTの具現化を加速――GEがパートナー企業と築く、インダストリアル・インターネットの「エコ・システム」

「デジタル化は、製造業の企業にとって生産性向上のために必要不可欠なものになっています。もしデジタル変革に取り組まなければ、今後、競合と戦っていくことはできなくなるでしょう」――7月22日、東京で開催された「SoftBank World 2016」に登壇したGEのチーフ・デジタル・オフィサー兼GEデジタル CEO、ビル・ルーは、こう訴えました。今年にはいって3度目の来日となったルーは、日本においてもIoT(モノのインターネット化)やインダストリアル・インターネットに対する関心が急速に高まっているのを感じる、と話していました。昨年このイベントに登壇した際には「今、過去10年間のコンシューマー・インターネット市場よりもはるかに大きなチャンスが到来している」と語った彼は、今回、具体的に動き出した「インダストリアル・インターネット」について語りました。

ビル・ルー
GEチーフ・デジタル・オフィサー 兼 GE Digital CEO
(写真提供:ソフトバンク株式会社 ※記事最上部の写真も)

ルーは、インダストリアル領域における生産性がこの数年間低迷し続けていることを指摘します。1991年からの20年間、製造業は年率4%と堅調に成長を遂げてきたものの、2011年以降の成長率は年あたり1%と低迷したまま。これまでのアプローチでは、成長の源泉を得ることが難しいのが事実です。そんな中、ルーは「インダストリアル領域に先行して成功を遂げた、コンシューマー領域から学べることがある」と言います。

「コンシューマー領域のインターネット企業は、自らは資産を持たずして成功を収めてみせました。例えば、Uber自身は車を所有していませんし、Airbnbはホテルを持ちません。Appleも自社製のソフトウェアは多くはありません。所有することが悪いと言うつもりはありませんが、自ら資産を所有しない企業の方が時価総額が高くなっている。資産の効率性を高めることが重要で、それができる企業が最も価値のある企業となっているのです」

こうしたコンシューマー領域の成功例に学び、工場をはじめ自らの資産効率を高めていくことで、インダストリアル領域でも成功を収めることができるはず。GEはそう考え、自社を「デジタル・インダストリアル・カンパニー」と標榜してインダストリアル・インターネットを推進、過去数年、デジタル改革に取り組んできました。この間に10億ドル、今年だけでさらに10億ドルを超えるデジタル技術への投資を図っている事実がその証です。実際に、デジタル技術の活用によってHAガスタービンの開発スピードを2倍に高めたり、開発コストの大幅削減を実現したり、自社工場75カ所を「ブリリアント・ファクトリー」化し、生産力、生産サイクルのスピード向上、ダウンタイム低減といった成果を得ています。当社では2016年に5億ドル、2020年までに10億ドルに相当する生産性向上を目指しており、自らデジタル変革による生産性向上を立証してみせていこうと考えています。


製造業ならではの課題
もちろん、製造業固有の課題というものが存在します。
「製造業では、コスト削減、収益のアップ、安全性向上といったアウトカム(成果)が求められます。コンシューマー領域のように、楽しみたいとか、コミュニケーション手段として、といった理由とは異なり、テクノロジーに投資することで成果を買うわけですね。たとえば停電。コンシューマー・インターネットだったら、ウェブサイトがダウンしていても ちょっと腹を立てて終わりかもしれませんが、インダストリアル領域では、停電で機械が止まってしまえば大問題です。セキュリティも同じ。プライバシーの問題はさほど重要ではありませんが、システムが攻撃を受け、コマンドを書き換えられでもしたら一大事です。扱う機器にしても、サーモスタットの制御くらいなら簡単ですが、発電用のガスタービンともなれば、当然そのプロセスは非常に複雑になってきます」とルーが説明するとおり、インダストリアル領域ではミッション・クリティカルな要素、専門性が求められる要素が多数存在し、コンシューマー領域とは異なるスキルセットが必要になってきます。

これらの課題解決のため、GEはこの1年間、プラットフォーム(Platform as a Service)としての「PREDIX」を立ち上げると共に、積極的なパートナー戦略を進めてきました。「ビッグデータの恩恵を受けるために必要な、機器のオートメーション、クラウドプラットフォーム、アナリティクスといった重要なパーツは別々に存在していました。IoTとしてあるべきシステムを作るためには、それらすべてを繋げる“インダストリアルOS”を作る必要がありました。それがPREDIXなのです」とルー。今年初めにオープン・プラットフォームとして公開したことで、現在「PREDIX」には約1万2000人の開発者が登録しており、年内には2万人に達する見込みです。彼らが必要なソリューションをアプリ開発することで、より大きな成果を生成できるようになります。日本国内では、昨年発表したLIXILトータルサービス社の事例もその一つ。同社は、PREDIX上で稼動するジョブ・スケジューリングアプリを使うことで施工業者の手配時間を従来の1/3へと短縮し、コスト削減を目指しています。そのほか施工業務遅延の削減、顧客満足度の向上といった成果も見込んでいます。海外でも、米ピッツニーボウズ社、瑞シンドラー・エレベーター社、伯ラスガス社など、インダストリアル領域でのデジタル化を、PREDIXが次々と実現しています。


課題解決のためのパートナーシップの重要性
この流れをさらに加速するため、GEはパートナー構築も推し進めています。7月11日に発表したマイクロソフト社とのパートナーシップもその一例。ルーは「GEのPREDIXとマイクロソフトのAzureとを連携することで、これまで『office365』をはじめビジネス・インテリジェンスに投資してきたものもPREDIX上のアプリでアクセスできるようになるほか、『Cortana』のような機能を産業用途で活用するなど、非常に強力な機能を提供できるようになります」と説明します。「マイクロソフトとGEとのパートナーシップは、これまで誰も成し得なかった形でOT(オペレーショナル・テクノロジー)とIT(インフォメーション・テクノロジー)の連携を実現する、重要な意味を持つものです」

前述のLIXILトータルサービス社の事例も、GE Digitalの最初の戦略的パートナーであるソフトバンクとの協業で実現したもの。ソフトバンクはいち早く『PREDIX』の可能性を見いだし、その拡販を手掛けるだけでなく自社内での『PREDIX』の展開にも取り組んでいます。それは、日本全土に数十万局ある基地局で発生する故障への対応時間を短縮し、保全コスト削減に繋げるために『PREDIX』を導入しようというもの。まずはGEとのワークアウトを通じて業務プロセスを最適化し、対応業者の手配などにかかるコスト削減への道筋を立てました。さらに、本当に対処が必要なもの(1%)以外のデータは捨ててしまっていた従来のプロセスを見直し、全データを蓄積して故障予測につなげる可能性を検討。現在の24時間体制の保全対応から計画的な予兆保全を昼間に図れるよう変更することで、大幅なコスト削減や作業品質の向上につなげられると見込んでいます。この延長線上ではさらなるプロセス最適化も行えるはずで、このプロジェクトをリードするソフトバンクのモバイルネットワークの技術副統括を担当する常務執行役員、佃英幸氏も、本格導入を前に「保全コスト削減にはさまざまな策を講じてきましたが限界が見えはじめていました。しかし、PREDIXでITとOTを融合させることで、さらなる削減が視野に入ってきた」と自信を深めています。

佃英幸氏
ソフトバンク株式会社 常務執行役員 技術副統括
モバイルネットワーク担当
(写真提供:ソフトバンク株式会社)

今、ソフトバンクをはじめとするGE Digitalのパートナー企業は世界で30社を超え、彼らを通じて275社以上の顧客事例が生まれています。それぞれのパートナー企業が持つ専門性を活かすことで「インダストリアル・インターネット」はさらにパワーを増し、飛躍的な効果をもたらすエコ・システムを築き始めています。