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アフリカから押し寄せるイノベーションの波

“新しいものはいつもアフリカからやってくる”と話したアリストテレスの言葉どおり、
アフリカから新しい波が押し寄せ始めています 。

“新しいものはいつもアフリカからやってくる” ― アリストテレス

世界四大文明の一つとしてピラミッド建築に代表されるような高度文明を築いていた古代エジプト。アリストテレスは、そんなエジプトから洪水のように押し寄せる新たな発想に驚嘆を禁じ得ず、こんな言葉を残しました。

そして今ふたたび、新しい波がアフリカから押し寄せ始めています。アフリカの起業家たちは、自らのアイディアに情報技術(IT)の発達を応用し、世界の競争に挑もうとしているのです。その現状をアフリカ経済変革センターのK.Y.アモアコ氏が、GEが運営する「IDEAS LAB」への寄稿で紹介してくれました。

たとえば、携帯電話が良い例です。ケニアのサファリコム社は、携帯によるモバイル送金サービス「エムペサ(M-PESA)」(PESAはスワヒリ語でお金を意味する)によって、銀行口座を持たない何百万人もの人々が正規の金融システムを利用できる環境を作り出しました。その結果、これまでの送金システムを根本から覆しただけでなく、ケニア最大の銀行であるエクイティ銀行が近距離無線通信技術(NFC)搭載のスマートフォン30万台以上をケニアの小売業者に無料配布するといった波及効果まで生まれ始めています。

また、スタートアップのアフリカの企業が直面する資金調達の問題に対しては、Kickstarterをはじめとしたクラウドファンディングが活躍。健康分野などの特定エリアに特化したStartSomeGoodのようなクラウドファンディングシステムも生まれてきています。

世界中の大企業も注目するアフリカの課題解決イノベーション
世界銀行が把握しているだけでも、アフリカのイノベーション・ハブは90カ所に及び、今なお次々と誕生しています。「アフリカのシリコンバレー」と呼ばれるケニアでは、国内43郡に1カ所ずつイノベーション・ハブを構築する計画が進められていますし、ボツワナでは政府自身がイノベーション・ハブを支援しています。

こうした状況には、世界中からも関心が寄せられています。例えば、Nokia Greenhouse NairobiやinfoDev社のmLabsといった情報通信技術(ICT)企業のビジネスインキュベーター(新規事業支援施設)がスタートアップのアフリカの企業をサポートしているほか、ウガンダやカーボベルデで開催される国際的なイノベーション会議には、世界中から「エンジェル」投資家やイノベーターが集結します。そして、アフリカの大手携帯電話会社MTNグループや、同地域でサービスを提供するインドの通信大手バーティ・エアテル社はじめ、グーグル社やIBM社、GE社、オラクル社といった世界的企業なども、アフリカの若いイノベーターの指導・育成を支援するようになっています。

こうした環境の中で生まれているイノベーションの代表的な例がモバイルアプリ、それも日常的課題を解決するためのアプリです。例えば、最も効率的なミルクの生産方法について情報を提供する「iCow」や、マダガスカルの農業従事者に情報を提供する「Rural eMarket」といった農業関連のアプリ、アフリカで深刻な問題となっている偽造医薬品の発見・警告をしてくれる「PREVENT」、ルワンダで展開される、国内のあらゆるヒト免疫不全ウイルス(HIV)プログラムに関する重要情報を提供するアプリ「TRACnet」といった健康関連のアプリが次々と生み出されています。

また、教育をアフリカの遠隔地にまで普及させるためにもテクノロジーが活かされています。インタラクティブな教育プラットフォーム「eLimu」は、ケニアの小学校のカリキュラムをデジタル・コンテンツとして完備。現地で開発された文化関連のビデオやアニメーション、歌、音楽、ゲーム、クイズと組み合わせて、学習成果や評価結果の改善を実現しています。

もちろん、アプリだけではありません。アフリカで唯一のバイオフォトニクス(生体医用光学)研究医であるPatience Mthunzi博士は、レーザーを使用した疾患診断ツールを開発。トーゴ人のVictor Agbegnenou博士が開発した多義的な無線通信システムは、医療研究所とアフリカ全土をつなぐ通信手段として試験中です。また、トーゴでは、Sam Kodo氏が低価格のパソコンやスマートフォンを開発し、若い「リサイクラー」のグループは3Dプリンターの製造にトライしています。そして、ナイジェリアでは、iROKOtv社が電話やパソコンを通じて視聴者に直接映像を配信することによって、著作権侵害行為を阻止するナイジェリア映画(ノリウッド「Nollywood」)の製作会社の支援など、新しいアイディアが今、アフリカで次々と産声を上げています。

「1996年、国連アフリカ経済委員会(UNECA)がアフリカ諸国の閣僚と協働で、地域に根ざした包括的なICT開発の枠組みとしてアフリカ情報社会イニシアチブ(AISI)を発足させた時には、今のような状況になるとは想像もつきませんでした」とアモアコ氏は言います。「しかし、AISIがアフリカのICT革命を牽引する原動力として広く知られると、アフリカの若者たちは先進諸国との数十年分の技術的格差を一足飛びで縮め、アフリカ政府の非効率性やインフラ不足を飛躍的に改善し、魅力的な進歩を遂げているのです」

イノベーションが生まれる場所が拡がっています。国境や大陸を超えた投資や連携も、ますます加速していくでしょう。こうした世界の動きにも目が離せませんね。

最上部写真:「eLimu」を利用して学習する様子(写真提供:positive6.com社のNathan Heidt氏)