ロゴ

地球の温暖化を抑えるために必要なこと

地球の気温上昇を食い止めるために必要なこととは?
世界銀行グループの気候変動担当チーフ・エコノミスト、マリアン・フェイ氏による
地球温暖化とその対策をご覧ください 。

お盆休みも過ぎ、夏はこれから終盤戦へ。でも、毎日うだるような暑さが続いていますね。連日のように記録的な暑さが報じられ、8月10日には日本全国100カ所を超える地点で気温35°を超える猛暑日に。太平洋に出没したサメも、海水温の上昇との関係がささやかれています。

今回はこの「地球温暖化」について、世界銀行グループで気候変動担当チーフ・エコノミストを務めるマリアン・フェイ氏によるGE Ideas Lab(GEアイデアズラボ)への寄稿をご紹介。同氏はこのなかで「一日も早く 思い切った策に手を付ける必要がある」と指摘しています。

以下、世界銀行グループ マリアン・フェイ氏 著(抄訳は日本GE):

いつも私が地球温暖化の問題についてスピーチをするとき 「気候変動を安定化することが可能だと思う方は?」とたずねると、大勢の方が「はい」と答えてくださいます。しかし「排出ガス・ゼロ(炭素を排出しない)経済を想像できますか?」と聞くと、手を挙げる人はごくわずかになってしまいます。二つの質問は同じことの表裏にすぎません。気候変動の安定化とは、二酸化炭素の純排出量をゼロにすることを意味しているのですから。自然界に存在する炭素吸収源が吸収できる量以上のCO2を私たちが排出し続ける限り、気候は変動し続けます。ですから問題は、経済の脱炭素に踏み切るかどうかではなく「いつ、どのように踏み切るか」なのです。

ではそのタイミングはいつなのか。
それは、私たちがどれぐらいの温暖化を受け入れられるかによって決まります。たとえば、産業革命前の時代と比較して気温上昇を2度以下に抑えるには、2100年までに脱炭素化を完了しなければなりません。その実際の方法はどうでしょう。『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』では、以下の4つの側面から、かなり具体的な計画を立てています。

1) 再生可能エネルギーによる電力の脱炭素化、および/または二酸化炭素の回収・貯留システムの活用
2) 排出量が少ない電源使用の拡大および/または排出量が少ない燃料への切り替え
3) エネルギー効率の向上と廃棄物の削減
4) 森林など天然の炭素吸収源の拡大

科学者たちは、これらのアプローチを通じて100%の脱炭素化も実現可能だと考えています。しかし私たち世界銀行グループは、最近の報告書の中で、今挙げた4つの方策すべてで十分な成果をあげるには3つの幅広い政策群が必要であると論じました。

1. 最終ゴールを描いて計画を立てる

最も実現しやすい方法、一番コストがかからない方法・・・といった具合に、実現可能性を気にして短期的で相互関連性のない目標設定を行っていては、排出量ゼロは達成できません。公害の低減など、複合的な削減効果に直結するCO2削減政策は数多くありますが、重要なのは、時間はかかっても高い効果が期待できる方策(斬新な二酸化炭素の回収・貯留システムやスマートシティ計画など)を今すぐ始めることです。

脱炭素化のコストを最小限に抑えるには、タイミングがとても重要です。IPCCは、着手を2030年まで先延ばしにすれば2030年から2050年の間にコストは平均50%増大し、50年以降は40%も膨らむと推計しています。もし2015年をピークに炭素排出量を下降させるとして、気温上昇を約2度に食い止めようとするならば、年間3.5%から4%の排出量削減が必要に。もし脱炭素化の着手が2030年にまで遅れた場合、少なくとも毎年8%まで削減率をアップさせる必要が生じます。

ちなみに経済破綻以外の理由で実現された、世界で最もスピーディな低炭素化のケースは、核エネルギー導入の高まりを受けた1980年代のフランス。それでも、5年間にわずか4.5%の削減を実現したに過ぎませんでした。

2. 適正な炭素価格制度および補完的な政策の制定

炭素価格制度の導入や化石燃料補助金の撤廃は財政政策としては非常に優れていますが、環境政策として好ましいとは言えません。なぜ、悪いもの(汚染)に課税せず、良いもの(雇用、投資)に課税をするのでしょう?

炭素価格制度は、非常に運用・管理がしやすく、また課金から逃れることは簡単ではありません。そのため、公平で効率的な課税システム導入に悩む途上国にとっては、魅力的な政策に映ります。しかし炭素価格制度だけでは十分な効果を上げることはできません。同時に、電気自動車への切り替えなど長期的な投資を誘発し、課題への取り組みを訴えるための補完的政策が必要です。ただ、仮にこうした補完的政策をとっても、人々の反応は予測しきれませんし、政治的な判断から炭素価格の引き上げそのものが難しいケースもあるでしょう。

補足的政策として、私たちもいくつかの施策を推奨しています。たとえば、下のようなものが挙げられます。

  • 規模の経済によるコスト低減と低炭素化アピールを促進するため、効果が大きいと見込まれる技術に的を絞った補助金などの公的支援
  • 低炭素技術の導入を促進するような実施基準、義務化、報奨金
  • 環境投資に対して利用可能な融資を保証する政策

これらの施策の中には、中国の中央銀行が取り組んでいる、実施案に伴う銀行や金融セクターの改革も含まれます。

3. スムースな移行

気候変動への取り組みには経済全体の大規模な変革が必要とされ、そこでは勝者と敗者が生まれます。成功するためには、大多数の人にとって魅力ある変化とすることが必要です。
目標は排出量の削減ではありません。脱炭素による発展を目指すことです。これを実現するには、貧困層にとってもメリットのある形にすることが必須です。幸いにも、炭素価格制度の導入、そして富裕層を優遇することになる化石燃料補助金の廃止は、新しい事業機会の創出、開発目的や公平性の向上に活用できるリソースの確保につながります。

つまるところ、気候への取り組みは技術的な問題でも、経済的な問題でもありません。これは政治的な課題なのです。その解決が難しくなるか、簡単になるかは今後の取り組み次第です。

世界銀行グループのマリアン・フェイ氏

マリアン・フェイ氏による寄稿の原文はこちら