ロゴ

思いがけない出会いを生み出す、GE技術公募 スーパーキャパシター搭載のMRI誕生ストーリー

GEは世界に9カ所のR&D拠点、グローバル・リサーチ・センターを構えており、約3600人の科学者を擁しています。米国ニスカユナの本部を筆頭に、ドイツ、インド、中国、ブラジルにまたがる各拠点は、それぞれの地域特性を反映した得意な技術領域を担っています。しかし、GEの技術開発はこれらの拠点で行われるだけではありません。グローバル・リサーチ・センターは日本にもオフィスを配置しており、優れた技術を持つ日本の企業や研究機関との技術協業、すなわちオープン・イノベーションを推進しています。

1社だけの力で成し得るイノベーションには限界があります。2004年からGEが戦略的に取り組む「ジャパン・テクノロジー・イニシアチブ(以下、JTI)」は、日本企業との協業でイノベーションを加速しようというもの。優れた技術力を持つ日本企業と、事業化力とグローバルな販路を持つGEとが、相互補完的に一緒に成長できるビジネスモデルを作り上げていくことを目的にしています。

JTIでは、常設のオンライン技術公募に加え、2年に1度のペースで、特定の技術領域に特化した技術マッチング・キャンペーンを実施してきました(活動内容の詳細はこちらの記事をご覧ください)。過去4回開催した技術公募での出会いをきっかけに、実際にGEのプロダクトの一部としてグローバル市場へと普及を拡げた国産技術も少なくありません。

思いがけない出会いがイノベーションを生む
いまGE製MRI(磁気共鳴画像診断装置)のいくつかのモデルには、パワー・システム社(現アイオクサス・ジャパン)が開発した日本生まれのスーパーキャパシター(蓄電技術の一種)が搭載されています。MRIを撮影する際、どうしても一時的に大きな電力が必要になります。事業者の電力基本契約は、ピーク時の必要電力量をベースとするため、MRIを使用する病院は、電力契約の基本料金が高くなりがちでした。しかし、スーパーキャパシターは平常時に電力を貯めておき、いざ大きな電力が必要な時にそれを使うということを可能にしてくれます。ピーク時の電力使用を抑え、病院の運営コストを下げることにつながるソリューションでした。

スーパーキャパシターの模型

開発をするために、チームが使っていたスーパーキャパシターの模型
(写真:GEジャパン)

2007年当時、パワー・システム社(現アイオクサス・ジャパン)は、当時まだ珍しかった工業用のスーパーキャパシターを開発。そこで、その応用先が見つかるのではという期待とともに、同社は2007年にGEが開催した技術公募イベントへの参加を決め、見事に予選を通過しました。当時は展示会形式をとっており、GEのさまざまな部門の開発担当が国内外から会場に詰めかけました。そこで、この技術に目をつけたのは、GEヘルスケア・ジャパンの技術本部に所属する星野和哉でした。「とくにキャパシターの技術を探していたわけではなかった」と打ち明ける星野は「ただ、ひょっとしたら、画像診断装置の一部として使えるかもしれないと、僕の頭のなかでひらめいたんです。当初、僕がイメージした応用先はMRIじゃなく、CTだったんですけどね」と振り返ります。まさに両社にとって思いがけない出会いでした。

GEヘルスケア・ジャパン 星野和哉

GEヘルスケア・ジャパン 技術本部長 星野和哉
(写真:GEジャパン)

その後、パワー・システム社(現アイオクサス・ジャパン)を招いてMRIやCTなど、各製品の開発担当エンジニアへのプレゼンテーションを依頼。CT、MRIともに、スーパーキャパシターに興味を示し、社内で検討を重ねましたが、最終的にMRIで応用することが決まり、2010年の実用化まで急速に協業を進めていったと言います。

スーパーキャパシターは、現在までにSIGNA Creatorをはじめ、Optima MR360やBrivo MR355のMRIに搭載されています。同社のスーパーキャパシターが搭載されたMRIは、2010年の発売後、これまでに、世界で1500台が販売されています。

SIGNA Creator

日本生まれのスーパーキャパシターを搭載し、全世界で利用されているMRI
(写真はSIGNA Creator)

大量生産がコストダウンへ
GEのプロダクトへの採用というスケール効果は、スーパーキャパシターのコストダウンに繋がりました。実際にスーパーキャパシターを採用したMRIのエンジニアチームで、リーダーを務めていた、伊藤祐介は「これは、製造業の現場で多くの企業が直面している課題なんですが、新たな技術が開発されても、最初は生産量が少なく価格が高いので、お客さまが敬遠してしまうのも実情なんです」と話します。

「非常に斬新な技術も、GE製品への適用によって大量生産化につながれば、コストダウンも図れるはず。そうすれば、パートナー企業は次なるビジネス展開へと進めやすくなりますし、社会がさらなるイノベーションの恩恵を受けられることになります」と伊藤。JTIの活動目的のひとつでもある「日本への貢献」は、このプロジェクトに関わるメンバーのモチベーションでもあります。

チームでリーダーを務めていた伊藤祐介(右)とメンバーの森田健作(左)

当時、スーパーキャパシターをMRIに採用したチームでリーダーを務めていた
伊藤祐介(右)と、メンバーの森田健作

「日本はもともと技術立国。面白い工夫をして、面白いモノを作ることができる。オンリーワンの技術を持つ企業もたくさんある」と話すGEヘルスケア・ジャパンの技術本部長を務める星野は、「日本人は、他の民族があきらめることも地道にコツコツとやるから、そうした民族性の賜物なんでしょうね」と語ります。しかし、そうした優れた技術が、応用や実用に至らずに眠っている例も少なくありません。それでは、せっかくの叡智も開発投資も、報いを受けることができません。そんな時こそ、企業や機関の枠組みを越えた「オープン・イノベーション」に乗り出すべきとき。世界の国々は、実際に協業によるイノベーションから成果を得ています。しかし日本は、世界で最も「コラボレーションの可能性」を活かせていません。

GEグローバル・イノベーション・バロメーター

GEグローバル・イノベーション・バロメーター 2016より

星野はこう語っています。「日本人は、リスクを極端に避けたがる傾向がありますよね。悲観的な面をみて、そちらへ意識をとられてしまうことを、克服する必要ある。世界の競争はより激しくなっていますし、新興諸国もどんどん台頭してきています。これまで積み重ねてきた技術力を今後の競争に活かしていくためにも、いま日本人は、失うことを考えるのではなく“オープンにすることで得られるメリット”にもっと目を向けなければならないのではないかと思います」