ロゴ

空の友人:アメリカ初のジェットエンジンは発電プラントで誕生した

多くの人にとってトーマス・エジソンといえば「白熱電球の実用化に成功した発明家」でしょう。でも彼は、特許を活用して新産業や長年にわたり続く事業を生み出すのに長けた、根っからの起業家でもありました。GEは1892年にエジソンが創業したエジソン・エレクトリック・カンパニーとトムソン・ヒューストン・エレクトリック・カンパニーとが合併して誕生しましたが、現在は、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)のような医療機器、発電用ガスタービン、ジェットエンジンまであらゆるものを手掛けています。

これら製品は非常に複雑でハイテクなイメージがありますが、エジソンが研究所で照明や電気を作っていた時代にルーツを持つものが少なくありません。エジソンが取り組んだX線開発や医療画像事業は、白熱電球から派生したものでした。いまGEの主力事業のひとつとなっているアビエーション(航空関連)事業も、エジソンが始めた発電やガスタービン製造から派生して生まれたもの。ちなみに今では、逆にアビエーション部門のエンジニアが 発電用ガスタービンの開発チームにジェットエンジンのノウハウを提供することも。優れた技術があるなら、使える限り使わないともったいないですからね。

世間もこのことに注目しています。GEの7HAガスタービンを使用した中部電力の西名古屋火力発電所が最近、世界最高効率のコンバインドサイクル発電所としてギネス世界記録と認められたのです。また、航空機用のGE90エンジンは地球上で最もパワフルなジェットエンジンの称号を得ています。

GEのエンジニアにとって、新記録を作ることも仕事のうちであると言えます。金属3Dプリンティング等のアディティブ・マニュファクチャリング(付加造形)や先進複合材料等の新技術を使用して、彼らはタービンのさらなる開発に余念がありません。GEはさらに世界最大のジェットエンジンであるGE9Xを完成させ、初飛行を終えたところです(上写真)。

GEアビエーションとGEパワー(発電事業)の両事業部が互いに影響し合いながら歩んできた歴史をご覧ください。

 

金属3Dプリンティングで製造された部品を使用した最新のジェットエンジンとガスタービンの開発に至るまでの歴史はエジソンの電球から始まり、その後、電気機器の普及により電力需要は飛躍的に伸びました。最初、各社は発電機のエンジンとしてピストンエンジンを採用しましたが、すぐに、より効率の高い蒸気タービンに切り替えました。1903年、GEのエンジニアであったチャールズ・カーティスとウィリアム・エメットはロードアイランド州ニューポートの発電所用に当時として世界一パワフルな蒸気タービン発電機を製造しました(上写真)。本発電機は同規模のピストンエンジン式発電機と比べて占有スペースが1/10、コストが2/3になりました。

 

さらに同じ1903年に、GEは若いタービンエンジニア、サンフォード・モス(上写真)を迎え入れました。モスは米国コーネル大学でガスタービンの研究で博士号を取得したばかりでした。GEに入社後、彼はガスタービンに送る空気を遠心力を用いて圧縮する画期的な遠心式ガスコンプレッサの開発を担当。その遠心力とは遊園地の回転ブランコでブランコを空中に押し上げるのと同じ力です。最初の頃の実験は失敗に終わってしまい、燃料を食う割りには出力が小さかったのです。しかし、彼の特許と革命的な回転式コンプレッサの設計は優れたものであり、その応用範囲は広く、溶鉱炉の空気供給装置や空圧系統の動力源等、様々な分野への応用が可能でした。彼はライト兄弟が初飛行する前から、期せずしてジェットエンジン開発の道を切り開いていたのです。

 


第1次世界大戦さなかの1917年11月、GE社長のE. W. ライスはアメリカ航空宇宙局(NASA)の前身であるアメリカ航空諮問委員会から一つのメモを受け取りました。それはモスが開発した遠心式コンプレッサに関する問い合わせでした。第一次世界大戦は初めて航空機が使用された戦争でした。同諮問委員会はモスに対し、戦闘機リバティーのエンジン性能向上を求めました。エンジンの馬力は海抜レベルでの値が354馬力でしたが、高度を上げて空気が薄くなると出力は半減しました。モス(上の写真の右)は、彼のコンプレッサを使用すれば高密度の空気をエンジンに送ることができ、パワーロスを回復することができると確信していました。

 

ピストンエンジンのシリンダーに機械装置を使って自然吸気より多量の空気を充填することを過給といいます。モスはリバティの航空機エンジンが排出する高温排気ガスを利用してラジアル型タービンを回転させ、エンジンに送り込む空気を圧縮するターボ過給機を設計しました。そして、1918年、コロラド州パイクスピーク山において、14,000フィートの高度で飛行テストを行いました。結果、エンジンは海抜レベルと同じ352馬力を出すことに成功し、これがGEのアビエーションへの参入のきっかけとなりました。


ターボスーパーチャージャー付リバティーエンジンを載せたル・ペール複葉機が初めて飛行したのは1919年7月12日。モスは当時、「これまでにGEが製造してきたスーパーチャージャーは空気の絶対圧を2倍に加圧できるコンプレッサを使っているので18,000フィートの高度でも海抜レベルの圧力(絶対圧)を確保できる」と言っています。


モスのターボスーパーチャージャー付エンジンを載せた飛行機は高度の世界記録を何度も塗り替えました。

 


1937年、ドイツのヒトラーが勢力を拡大していた時、GEはアメリカ陸軍航空隊からボーイングB-17爆撃機、コンソリデーテッドB-24爆撃機、P-38戦闘機、リパブリックP-47サンダーボルト等、多数の軍航空機用のターボスーパーチャージャーを大量に受注しました。これがきっかけでGEはマサチューセッツ州リンにスーパーチャージャー専門の事業部を作りました。1939年、モスはターボプロップエンジンの開発を提案し、後にアメリカ航空業界の殿堂入りを果たしました。

 

 


GEのアビエーション事業はこの時から始まりました。1941年、米国政府はGEに対し、英国で最初のジェットエンジンの一つとしてフランク・ホイットル卿(功績によりナイト爵に叙せられた)が開発したジェットエンジンの製造を要請しました。「Hush Hush Boys」と呼ばれていた当時のGEのエンジニアグループはそのエンジンの一部の部品を新たに設計し、残りの部品は既存の設計を見直し、エンジンテストを実施して最高機密のプロトタイプエンジン「I-A」を完成させました。1942年10月1日、米国初のジェット機ベルXP-59Aがカリフォルニア州レイクムーロックで短時間の初飛行を行いました。米国のジェット機時代の幕開けです。初期のジェットエンジンである「J33」と「J35」は需要が高すぎてGEだけでは生産が間に合わず、軍はジェネラルモータースとアリソンエンジニアリングに製造を外注したほどです。

 


GEは思い切って、ジェットエンジンの研究により多く投資することを決定します。ラジアル型(=遠心型)タービンを利用して空気を圧縮する仕組みをもつ初期のエンジン「J33」「J35」は、モスが開発したターボ過給機の設計に似ていました。しかし、GEのエンジニアたちは軸方向に空気を押し出す軸流型タービンを用いたエンジンの開発に取り組みました。ちなみに、現在のジェットエンジンはすべて軸流型設計です。こうして出来上がったのが「J47」エンジンで、F86セイバーなどのジェット戦闘機から巨大なコンベアB-36戦略爆撃機まで、あらゆるものの動力源となりました。1964年の東京オリンピックの開会式で、大空にオリンピックマークを描いて見せた航空自衛隊の曲芸飛行チーム「ブルー・インパルス」が乗っていたのも、GE製「J47」エンジンを搭載したF-86機でした。生産数35,000基にも上った「J47」エンジンは、史上最多生産台数を誇るジェットエンジンとなりました

 

「J47」エンジンはジェット機以外にもいくつかの用途に応用されました。速度記録を達成したジェット自動車「スピリット・オブ・アメリカ号」には1基、今なお世界最速記録を守るジェット機関車には2基搭載されています。1948年、GEはドイツ出身の戦争難民で航空機のパイオニアだったゲルハルド・ニューマンを迎えました。彼はすぐにジェットエンジンの改良に着手し、変静翼という革新的なイノベーションを考案。これによってパイロットがタービン内の圧力を変更できるようになり、恒常的な“超音速”の飛行が可能になりました。ニューマンの可変静翼を搭載した最初のジェットエンジン「J79」(下画像)のテストを開始したGEのチームは、(音速を超える速さゆえに通過音がいつもと違うので)出力が大きすぎて誤作動が起きたと思ったとか!その後1960年代には、GE製ジェットエンジン搭載のXB-70ヴァルキリーは、音速の3倍にあたるマッハ3を超える飛行に成功するまでになりました。

 


この性能向上を見たGEのエンジニアたちは「可変静翼やその他の設計上のイノベーションが、発電所の効率も高める可能性がある」ということに気付きます。 航空機エンジンを地上用途に転用するのは難しいことではありませんでした。1959年には、「T58」ヘリコプターエンジンを出力1,000馬力のタービンに転用し、地上や船舶での発電に利用できるようにしました。「J79」エンジンを利用した類似装置の出力は15,000馬力に。1950年代にGEアビエーションが拠点を移したシンシナティでは、地域の公益事業体が「J79」エンジン10基を環状に配置し、巨大な動力源として利用しました。(写真:GEアビエーション)

 

GEは、こうした航空機由来の転用タービンを「エアロデリバティブ(航空機派生型)」と呼んでいます。エアロデリバティブはまず、海軍の76,000トンのスプルーアンス級駆逐艦の動力として主に利用されました。いま世界最速を誇る客船「フランシスコ号」にも搭載されています。旅客定員は1,000人、積載車両台数は150台で、最高速度は時速58ノット(約107km)です。

 

いま世界では数千におよぶ「エアロデリバティブ」が活躍しています。例えば、アルジェリアの経済成長に伴う電力不足の解消にも貢献しています。(写真提供:GEパワー)

 


ニューマンの可変静翼(上)は、GEの最新型の発電用ガスタービン「9HAハリエット」にも採用されています。世界最大かつ最もパワフルで効率性の高いこのガスタービンが2基あれば、小規模な原子力発電所と同等の電力を作ることができます写真提供:GEパワー)

 

GEのHA級ガスタービンは最新ジェットエンジンの内部にも既に採用されているセラミックマトリックス複合材料製の部品を使用しています。本材料製のコンポーネントはジェットエンジンとガスタービンの高効率化に貢献しています。スーパーセラミックスは先端技術による超合金さえも軟化する2,400°Fの高温に耐えることができます。(写真提供:GEアビエーション)

メール配信メール配信