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隣人と電力取引:地域のエネルギー市場でブロックチェーンを活用する新たな研究

想像してみてください。良く晴れた暑い日、近所にある人気のコーヒーショップに人が押し寄せ、店内のエアコンがフル稼働しています。そのすぐ隣の家では、家主が2週間の休暇をとって外出しているため、屋根に設置されたソーラーパネルから集められた電力は使用されない状態になっています。

現在のエネルギーインフラでは、施設が互いに分離されています。しかし将来的には、ブロックチェーンと呼ばれる技術により、分刻みで自動的に電力が取引される可能性があります。

ブロックチェーンは、明確な定義が難しい専門用語です。ブロックチェーンとは、分散された台帳を通じてデータ交換を行う新しい手法であり、その台帳は自律性と透明性を確保しながら取引を発生順に記録します。もっとも分かりやすい例が、ビットコインやイーサなどの仮想通貨での利用でしょう。

電力源が地理的に分散されることの多い再生可能エネルギー分野において、膨大な数の取引を追跡できるブロックチェーンの能力は、劇的な効果を生み出す可能性があります。このようなシステムは、太陽光や風力発電の事業者に効率性と利益の向上を、エンドユーザーにはコストの削減をもたらす可能性があります。混雑したコーヒーショップなどのピーク時間でも同様です。

「基本的にオープンソースであるため、誰でも無料でダウンロード・使用でき、そしてオンラインでの取引を管理する新しいツールを開発することができます」と、ドン・タプスコットとアレックス・タプスコットは著書「ブロックチェーン・レボリューション」で述べています。「つまり、無数の新たな用途や、(マーケットや産業界を)変革するような、未だ実現に至っていない性能を開発できる可能性があるのです」

そのような将来性があっても、金融分野以外でブロックチェーンを活用しようとする企業はほとんどありません。その中で現在、実社会での利用を考えているのが、発電所や送電網向けの装置およびソフトウェアをつくっているGEの事業部門、GEパワーです。GEパワーは、ドイツ・エネルギー・エージェンシー(dena)と提携し、ブロックチェーンによるエネルギー産業の効率化について研究しています。

この研究は、電力需要の4分の1以上を再生可能エネルギー源でまかなっているドイツで行われています。主に家屋に設置されるソーラーパネルは、全体のおよそ6%を占めます。

「違いは、電子世界においてはお金の場所がほとんど無意味だということです」と、発電の場所が価格を根本的に変動させる可能性がある点と比較して、GEパワーの最高デジタル責任者であるスティーブ・マーティンは述べている。実質的に、電力事業者はある市場で顧客の余剰エネルギーを購入し、別の市場でこれを高い値段で売り、顧客は利益を得ることができる。

過去20年間、ドイツ政府が再生可能エネルギーを積極的に推し進めたことにより、高度に分散した電力システムが構築されました。ドイツ全土と沿岸部に風力発電施設が散らばり、多くの屋根にソーラーパネルが設置されています。2016年にdenaが実施した調査では、ドイツのエネルギー会社幹部の80%がブロックチェーンによるエネルギー市場の大変革を予想していますが、それも当然のことでしょう。

この技術はまた、エネルギーシステムの変遷と共に発生してきたいくつかの問題を解決できる可能性があります。再生可能エネルギー、特に太陽光発電への政府助成金は減少し、電力の卸売価格は下落しています。しかし家庭のエネルギーコストは依然上昇しています。グリッド事業者は、送配電線や、断続する風や太陽からの電力レベルを安定させるその他の技術に、より多くの投資をしなければなりません。

問題の一部に、ソーラーパネルを設置しているドイツ人が余剰エネルギーをグリッド事業者に売却した場合、固定料で受け取るということがあります。これにより全体のコストが上がります。しかしもし、彼らが需要に応じた、つまり市場ベースの料金を受け取れるとすればどうでしょう。

denaによる新たな調査がこのシナリオを精査しています。いわゆるピアツーピアのエネルギー取引は、余った太陽光や風力エネルギーを売却する個人が増加しているため、この業界でブロックチェーンが拡大するための最も大きな機会の1つだと、GEパワーの最高デジタル責任者であるスティーブ・マーティンは述べています。

「日中、風力と太陽光で利用可能なエネルギーの40%以上を得ることができる市場が存在するのです」とマーティンは述べています。

従来、電気は一方向に3段階で消費者のもとへ供給されてきました。発電所から都市につながる高圧電線を通じた送電、近隣の変電所から一般家庭や事業者への配電、そして最終的な消費です。

「変電所は非常に高電圧の送電線を引き込み、これを多くの終点へ配電するよう設計されています」とマーティンは述べています。「終点からエネルギーを取り込み、集約して高圧送電線へ戻すためではありません」

しかし変圧器などのハードウェアは、ブロックチェーン技術で増強できる可能性があります。Apple TVやグーグルのクロームキャストといった新しいデジタル・ストリーミング装置が、いかにして従来のテレビ受信機を仮想コンピュータに変貌させたかを考えてみてください。15年間もテレビの裏面に存在し続けていたポートにプラグを差すだけで実現したのです。ブロックチェーンベースのソフトウェアが地域の需給ニーズを特定し、地域の発電量とマッチさせることができれば同じようなことが変電所でも起こりえます、とマーティンは付け加えます。

別の例を挙げましょう。国営の発電事業者が、事業者や家庭の敷地に設置された蓄電池を借りて、これらの家庭のソーラーパネルで発電された電気を蓄電し、需要が高まり妥当な価格になったらその電気を市場へ売るのです。これは、銀行が顧客の預金を貸出やその他の投資に利用することと似ています。

「違いは、電子世界においてはお金の場所がほとんど無意味だということです」と、発電の場所が価格を根本的に変動させる可能性がある点と比較してマーティンは述べています。電力事業者は実質的にある市場で顧客の余剰エネルギーを購入し、別の市場でこれを高い値段で売り、顧客は利益を得ることができます。

では、ミリ秒単位の取引で成立する金融市場ですでに利用されているのに、従来のソフトウェアはなぜ今これらを実現できないのでしょうか。これはエネルギー市場が天候や物理的なインフラに依存しており、より複雑だからです。また、金融市場の多くの場面でタイムラグが依然発生しており、投資家が取引の完了を確認するタイミングに影響を与えています、とマーティンは述べています。

資産管理や電力のピアツーピア取引の新たな市場を構築するには、リアルタイムで取引を実行・照合する必要があります。

「ブロックチェーンは、ほぼリアルタイムに動いており、私たちが即座に取引を実行・照合することを恒常的に行うことを前提にしています」とマーティンは述べています。

ドイツのdenaによる新たなブロックチェーン研究では、大学、テクノロジー企業、グリッド事業者、電気事業者が参画して様々なユースケースを模索することを計画しています。彼らは、技術・経済面での実現性と、ブロックチェーン技術の応用を成功させるために撤廃すべき規制上の障壁について検討します。denaは来年春に結果を公表する予定です。

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