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いま考古学者たちに人気のソフトウェアとGE製CTスキャナーとは?

2012年、ベルリンで活動する美術品保存修復家のKatrin Lück氏は、腐食の激しい鉛製の小さな巻物を、ドイツ北部ヴンストルフ市にあるGEのテクニカル・ソリューション・センターへ持ち込みました。

長さ3.6cm、直径1.5cmしかなくて、聖書の一部がマンダ語で綴られた鉛がロール状に巻かれたこの書物。Lück氏は1600年前の貴重な遺物であると確信していました。ちなみにマンダ語は古代宗教のひとつ、グノーシス派で用いられた言語で、その歴史はキリストの誕生にまで遡ります。巻物の内容を解読したかったものの、広げれば壊れてしまう可能性が。そこでLück氏は、テクノロジーの力を借りることにしました。ヴンストルフ市にあるGEテクニカル・ソリューション・センターは、医療現場で使われるCTスキャナー(コンピューター断層撮影装置)の技術を産業向けに利用するための技術開発を手がけています。ここでLück氏はGEの技術者と共に産業用CTスキャナーで巻物をバーチャル空間上に「広げ」、マンダ語で記された41行の文章を解読したのです。

長さ3.6cm、直径1.5cmしかないこの金属性の巻物には聖書の一部がマンダ語で記されていた
(写真:GEオイル&ガス・デジタル・ソリューション)

GE製の工業用CTスキャナー(非破壊検査装置)「v|tome|x」とボリュームグラフィックス社製ソフトウェアで
“バーチャルに”広げて解読された巻物。
描出されたのは「悪魔」「呪文」「魔術」などミステリアスな言葉たち。

一般的な医療用CTスキャナーは通常、低エネルギーX線を用いて体内を撮影します。CTによって臓器をさまざまな角度で画像化することで、医師たちは体内の様子を詳細な3D映像として見ることもできます。一方で、ヴンストルフで製造されている産業用CTスキャナーはさらにパワフル。GEはもともと、航空宇宙産業や自動車産業で使われる部品を検査・測定するためにこのスキャナーを開発しました。実際、GEの顧客企業は金属内部を観察したり、タービンブレードや3Dプリンター製部品、その他ハイテク部材の欠陥を検出するのに産業用CTスキャナーを役立てています。

病院で使われる人体用のCTスキャナーとは違い、産業用CTスキャナーは対象標本をより詳細に観察することができ、はるかに高解像度の3D映像として再現できます。高密度の物質や金属体に対するX線管の透過力も高まっており、GE製の産業用CT装置は、医療用CTスキャナーと比較して数百倍もの観察能力を持っています。

この高性能ゆえに、産業用CTスキャナーは現代のインディ・ジョーンズたちにも愛用されています。たとえば2011年、ドイツのある建設作業チームは、ヴィスベクの新興住宅地を興すときにもこれを活用しました。ドイツ北部に位置する小さな街、ヴィスベクは、サクソン人にキリスト教を広めた古い大修道院があることで知られています。

住宅予定地の地盤から古代墓地が出現した途端、建設現場のルーチン作業はアドベンチャーに一転しました。その遺跡からは、剣かと思われる錆びた武器の一部のようなものが出現。考古学者たちは土の塊に覆われた金属片を掘り起こし、調査・保全のため状態保存できるよう、石膏で塗り固めました。

ヴンストルフのGEの施設に運ばれた出土品をCTでスキャンすると、飾り鋲(びょう)があしらわれた約76cm長の中世の剣が現れました。この剣は裕福なサクソン人が所有していたものだろう、と見られています。

掘り起こされた土の塊に覆われた金属片は、調査・保全のためにすぐさま石膏で塗り固められ、運ばれた
(写真:GEオイル&ガス デジタル・ソリューション)

産業用CTスキャナーはさらに予想外の発見をもたらしてくれました。サクソン兵が小規模で私的な武器庫とともに埋葬されていることを示す、一揃いの武器のひとつ、短剣も見つかったのです。GEオイル&ガスのデジタル・ソリューションの広報を担当するDirk Neuberは「CTは目視できない部分を把握するうえで優れているというだけでなく、考古学的遺物をそのままの状態で記録に残すことができるんです。保全や調査をしたくても、壊れやすい布や材木のような有機質の遺物は、触れただけで粉々になってしまうこともあるんですよ」と話しています。

科学者たちは過去数十年にわたり、医療用CTスキャナーとX線機器を使ってエジプトのミイラの秘密を解き明かそうとしてきました。でも、産業用CTのテクノロジーを活用すれば、まったく新しいレベルの、はるかに詳細な発見が可能になるでしょう。

CTスキャンで復元したヴィスベクから出土した剣
(写真提供: Lower Saxony State Service for Cultural Heritage @ドイツ・ハノーバー)

バーチャル上で石膏と土を取り除いて可視化された、飾り鋲があしらわれた75cm長の剣
中世初期、裕福な上流階級のサクソン人が所有していたものとみられる

こうした産業用CTスキャナーは非破壊検査装置とも呼ばれ、ふだんは工業用途に活用されています。飛行機の安全運航や車・電車の安全走行のため、また、プラント設備の安全稼動のため…保守管理やそこにかかるコスト削減に、役立てられています。

※最上部の写真:産業用CTスキャナーの前でマンダ語で記された巻物を手にするKaren Lück氏(写真:GEオイル&ガス・デジタル・ソリューション)

CTスキャンによって予想外に発見された、小さなナイフ
サクソン兵が戦いに用いた一揃いの武器のひとつと見られる