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「インダストリー4.0」ってなんだ?

ドイツで生まれた「インダストリー4.0」は、一言で表現すると、デジタルでモノを繋げること。
製造業を革新するインダストリー4.0、先進国か発展途上国かを問わず多くの国が注目しています 。

「インダストリー4.0」。
一言で表現するなら、デジタルで様々なモノ・ことを繋げた“ものづくり”。しかしそこには3Dプリンティングからロボット、新素材、生産システムに至るまで、多様かつ広範な最新テクノロジーが包含されます。

「インダストリー4.0」を推進することは、民間セクターにプラスに働くことでしょう。たとえば大規模で総合的なメーカーは、フレキシブルな製造ラインを実現することで、サプライチェーンを最適化し短縮していけるはず。さらに、製造工程がいっそうデジタル化すれば、センサーやロボット、3Dプリンター、機械同士のコミュニケーションなど、専門技術を提供する中小企業にも新たなチャンスが生まれるでしょう。

ここで優位に立つのは、「インダストリー4.0」を支える“製造エコシステム”に貢献できる企業です。サービス・プラットフォーム(PaaS)を提供する米Pivotal社のような企業や、インダストリアル・インターネットのためのネットワーク化されたインフラを提供する企業です。

先進国であるか発展途上国かに関わらず多くの国々が、まだそのコンセプトを明確に咀嚼できているわけでもない「インダストリー4.0」に注目し、アクションを起こしています。ただ、その動機には若干の違いがあるようです。

製造業の競争力を復活させたい先進国

先進国は「インダストリー4.0」を、製造業の競争力を取り戻すための術だと考えています。中でも、シェールガスに湧く米国に反してエネルギーコスト減を見込めていない西欧諸国にとって「インダストリー4.0」は特に重要な意味合いがあります。これはもちろん、日本も同じこと。6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」ではインダストリー4.0の流れに対応することが急務であるとされ、国家としての動きになりつつあるほか、企業間の垣根を越えて協力体制を築こうとする学・民のコンソーシアムが発足(例:Industrial Value Chain Initiative)するなど、ここにきて変化が起き始めています。

一方で、「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」の提唱者であり産官学の戦略プロジェクトとして2011年から総力を挙げてきたドイツや、同様のコンセプトで「Smart Manufacturing」を謳って製造業のイノベ―ションに取り組んできた米国では、こうした流れを加速するための『標準化」への取り組みが活発化しています。実際にフレキシブルに“製造“を行うことのできる、言わば ”スマートファクトリー“ を実現するためには、製造ラインがそれぞれ柔軟に連係できることが必要で、そのためにはオープン規格を用いた「標準化」が欠かせません。すでにアメリカでは、インテルやIBM、AT&T、シスコ、GEといった大規模で集約されたメーカーが連携して創設した「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」が、わずか1年のうちにその参画企業を5社から153社にまで拡大させ、「標準化」に向けた着実な前進を図っています。

本格的に“世界の中心”に躍り出たい新興国

人件費の高騰に直面している新興国では、「インダストリー4.0」が、価値連鎖(バリューチェーン)を強化するエンジンとなることが期待されています。たとえば中国は、今年5月に「中国製造2025年(Made in China 2025)」という新10カ年計画を発表しました。その中では、今後中国を“世界の製造大国”から“世界の製造強国”へと発展させるため、ロボット工学、IT、エネルギーなどの主要セクターに注力していくことを表明。2025年を目処に研究開発への投資額を製造業の収益の1.7%まで引き上げる計画です。

実現に向かう上でのポイント

「インダストリー4.0」はもはや止まることはありませんが、実現のためにやるべきことも山積です。規制面で言えば、政策決定者たちは「インダストリー4.0」の血液ともいえるデータを、サプライチェーンを通じ、国境も越えて自由かつ安全に流通させられる仕組みを確立しなくてはなりません。TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)の一環として、自由なデータ流通に関する条項をまとめることも一歩になるでしょう。しかし、それにはたとえばEU内でのデータ法規の制定が必要であり、これ自体、必要不可欠と考えられながらも大変な困難を伴います。

対して民間サイドでは、「インダストリー4.0」は資本と政策コストの両方を上回るだけの十分な利益をもたらせる、という実証が重要に。たとえば米国では、GEとベレクトリック社、コフラー・エネルギー社などが熱電併給発電における「インダストリアル・インターネット」の可能性を提示しているほかIICはスマートファクトリーとスマートグリッドの両方に関するテストプロジェクトを進めています。後者に関しては会議体も組織され、メンバー企業は導入初期の段階でのベストプラクティスを共有できるようになっています。

第4の産業革命がピークを迎えるまでには、もう少し時間がかかるでしょう。しかし、この巨大な変化の波を乗り切ろうとするなら、今スタートを切っていなければ、その全貌が見えてきたときにはもう手遅れかもしれません。